バッハで学ぶクラシックの本質
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19世紀のドイツで起こった“バッハのルネサンス”
バッハで学ぶクラシックの本質(5)バッハのルネサンス
芸術と文化
樋口隆一(明治学院大学名誉教授/音楽学者/指揮者)
自分という小さな存在のためではなく、普遍的な宇宙を表現するために作曲をするというバッハの精神は、彼の死後100年たった19世紀に、幾人もの偉大な作曲家たちに受け継がれていった。こうしたクラシック音楽は、何かとわずらわしい現代社会でも、私たちの精神を解放してくれる素晴らしいものだと、樋口隆一氏は力説する。そうした素晴らしいクラシック音楽の伝統がどのように発展してきたのか、キリスト教との関係性と合わせて解説する。(全9話中第5話)
時間:8分06秒
収録日:2019年9月19日
追加日:2019年11月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●バッハの精神は19世紀の偉大な作曲家たちに受け継がれていく


 バッハの死からおよそ1世紀後に、19世紀のドイツでそれまでほとんど忘れられていたバッハが再評価されます。その理由は、ドイツ自体がナポレオンに散々にやっつけられて敗北し、自虐的になっていたためです。

 そうした状況で、ドイツ人であることに誇りを持たなければならないという主張が出てきます。その鍵となるのが、芸術、そしてドイツの音楽です。その筆頭として、100年ほど前にバッハという人がいたのです。バッハはドイツ人でありながら、「こんなに素晴らしい」といわれるようになりました。

 このようにして、“バッハのルネサンス”が起こるのです。例えば、メンデルスゾーン、シューマン、リスト、あるいはショパンといった、作曲家がいます。リストはハンガリーから来ましたし、ショパンはポーランド出身の人ですが、実は当時の文化圏として、音楽は特にドイツ・オーストリア文化圏にあったのです。

 これらの人々がバッハの音楽を一つの守り神、導きの星にしました。より良い音楽を書きたい。ただ、自分のための音楽ではなくて、歴史に残るような、より普遍的な意味を持った音楽を書きたい、とこれらの大天才たちでも思ったのです。

 その時に学んだのがバッハです。よく、バッハの技法を学んだと思っている方がいます。もちろん、バッハは最高の作曲の技法を持っていたので、それを学んだというのは正しいのですが、しかし、上に挙げた作曲家たちは、それを学んだだけではありません。

 バッハの精神、より普遍的な音楽の美しさを表現したいと思い、それぞれの方法でそれを表現しました。メンデルスゾーン、シューマン、リスト、そしてショパンもそれを成し遂げた、ということが非常に重要なのです。ある意味で、超越的な宇宙感覚のようなもの、その中に入っていくと、本当に星空の向こうに行ってしまうような感覚を得られる音楽を作り上げたのです。

 ベートーヴェンも神様への思いを「交響曲第9番」の中で書いています。ベートーヴェンの時代は神様の存在を信じられない時代でした。しかし、「あの星空の向こうに、必ずやあの方がおいでになります」と書いています。やはりベートーヴェンも神様を信じたかったのでしょう。

 そして、その音楽は非常に素晴らしいのです。これでベートーヴェンは歴史に残りましたね。でも、ベ...

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