バッハで学ぶクラシックの本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
神に助けを求め、感謝を捧げながら作曲した天才・バッハ
バッハで学ぶクラシックの本質(4)バッハの作曲への姿勢
樋口隆一(明治学院大学名誉教授/音楽学者/指揮者)
西洋クラシック音楽の源流は、宇宙までを巻き込んだ壮大な調和の世界の中に存在した。バッハはそうした流れを汲み、天才的な作曲家であったにもかかわらず、常に作曲に際して神に助力を乞い、そして作曲後は神に感謝していた。こうした伝統的な価値観は、啓蒙主義の出現とともに衰退し、現代ではほとんど見られなくなっている。バッハの自筆譜などを用いながら、バッハの作曲の背景にある価値観に関して丁寧に解説する。(全9話中第4話)
時間:10分18秒
収録日:2019年9月19日
追加日:2019年11月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●宇宙の調和としての音楽という考え方は啓蒙主義の出現とともに衰退


 前回お話したように、天空に一つの調和としての宇宙の音楽があって、そしてまたその上には哲学があります。そして哲学は、実は神様のことを知るための学問だということです。

 こうした考え方は、古代にはキリスト教がなかったから発展したのです。ですので、キリスト教の世界になるとまた考え方が変わって、キリスト教の神様が一番上にあるという理解になりますが、構造自体は変わりません。実際の音楽は、こうした神秘的な調和を実際に体験するためにあるという考え方です。古代ギリシア・ローマ、そして中世ヨーロッパを通じて、キリスト教が発展していきますが、キリスト教の教会音楽の根底に、こうした考え方が存在し、そのもとに素晴らしい音楽が作られてきたという事実は、案外知られていないことだと思います。

 こうした音楽家は音楽によって神様に、そしてもちろん社会に奉仕しているという世界観は、バッハが生きた18世紀頃までは基本的に変わりません。学校でもこうした考え方を教わっていました。

 しかし、バッハが生きていた1730年頃から、徐々に啓蒙主義が普及してきて世知辛くなってきました。啓蒙主義には良いことも多くあります。しかし、例えば先に述べたような考え方を「迷信だ」と言って軽蔑しました。迷信かもしれませんが、ものの考え方としては美しかったのです。

 そして、もちろん自然科学もこうした考え方と関係がありました。例えば先ほどの星座の話は、天動説に基づいています。キリスト教は聖書に書かれている通り、天動説を取っていました。しかし、ガリレオ・ガリレイが「それでも地球は回っている」といい、地動説を主張しました。こうした変化をコペルニクス的転回といいます。人間の考え方がガラリと変わって、これまでの考え方を全部懐疑して、考え直そうということです。そのこと自体は良いことです。しかし、そうした考え方が例えば神の否定につながる。神様など信じたってしょうがない、ということになる。それで私たちの生活が終わるかというと、そうではありません。

 日本人は案外、宗教的な人間だと思います。宮参りやお寺詣で、お盆などに見られるように、日本人は生活の中で1年中、超自然的なものに対する畏敬の念を持ち続けています。徐々に世界は宗教から離れつつあるというのが難しいところ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(5)キリスト教と反ユダヤ思想
ユダヤ人迫害を生んだ「権力者・ユダヤ人・民衆」の三者関係
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
組織心理学~「チームの温度差」を埋める(1)温度差の正体とあいさつの影響力
職場のメンタルに影響する「あいさつ」、その効用とは?
山浦一保
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
編集部ラジオ2026(10)ユダヤ人特集~鶴見太郎先生
【10min解説】鶴見太郎先生《教養としてのユダヤ人の歴史》
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(2)宗教文学発生説と「依代」
なぜ大晦日におせち料理を食べてはいけないか?神様の来訪
上野誠