バッハで学ぶクラシックの本質
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オペラの始まりとバッハが「マタイ受難曲」を書いた背景
バッハで学ぶクラシックの本質(8)オペラ、和声、対位法
樋口隆一(明治学院大学名誉教授/音楽学者/指揮者)
宗教改革に伴って教会音楽が大きく変化する中、新たな音楽のジャンルとしてのオペラが脚光を浴び始めていた。教会とは関係がなく、世俗権力の栄光を讃えるために用いられたオペラの文化に、バッハも作曲上の影響を受けていた。しかし、こうした動きは教会などに責められることになる。それでも、バッハが生み出した音楽理論は、20世紀に至るまで多くの名作曲家に対して多大な影響を与え続けてきた。(全9話中第8話)
時間:9分12秒
収録日:2019年9月19日
追加日:2019年12月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●宗教とは関係のないオペラという新たなジャンルの登場


 バッハの音楽には、これまでにお話ししたような宗教音楽もありますが、それだけではありません。もちろん教会音楽は綿々として続いていますが、17~18世紀には、ヨーロッパ全体で見ると、新しいジャンルが起こっていました。楽器の音楽である「器楽」が非常に盛んになっていたのです。器楽は新しいわけではなくて昔からありますが、マイナーな音楽でした。特にイタリアを中心に素晴らしいヴァイオリンができ、名人も出てきて、そして、その楽器を使った素晴らしい曲を書くヴィヴァルディのような人が出てきました。そうした新しい動きがあったのです。

 そして、オペラが始まります。これは最大のイベント音楽ですね。とにかくお金があることを誇示するための音楽で、宗教音楽とは完全に別の世界なのです。フィレンツェのメディチ家が、娘の結婚式の時にオペラを上演しました。これが非常に良かったので、ヨーロッパ中の王侯貴族が真似をして、流行していったのです。

 例えば、ウィーンは今でもオペラの素晴らしい街です。ウィーン国立歌劇場はもちろん、オペレッタもありますし、すごい規模なのです。私たちも楽しむことができます。なぜオペラの中心地となったかというと、ウィーンは神聖ローマ帝国の首都だったのです。神聖ローマ帝国は、ドイツ語を話す人だけではなく、スペインなども包含していて、ほぼ全てのヨーロッパの国を精神的に統一した帝国です。これをつなぎ止めるためには、今みたいにインターネットもないので、素晴らしいというイメージしかありませんでした。ウィーンに行けば素晴らしいオペラが観られるという文化をつくることが、重要だったのです。文化は力、本当に政治的な力だったのですね。

 こうした背景があるので、ものすごい贅沢をします。例えば、レオポルド1世は結婚した時に、結婚式のお祝いに歌劇場を一つ造り、非常に贅沢なオペラを上演しました。そして、何日か後に全て取り壊してしまったのです。そうした無駄なことをしても平気なほど、お金を持っていて、国力が強いということを示すために、そうしたことをしたのです。その意味で、全く純粋ではないのです。

 ですので、オペラが高いのはしょうがありません。高いからけしからんといわれることもありますが、とにかく贅沢な芸術なのです。つまり、人間にもやはり贅沢が...

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