クラシックで学ぶ世界史
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ドビュッシーやチャイコフスキーがつくった「国のイメージ」
クラシックで学ぶ世界史(11)ドビュッシーと「フランス的」
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
ワーグナーに大きく影響を受けつつ、ドイツから覇権を奪うために新たな表現を目指したのがフランスのドビュッシーである。彼が提示したとりとめのない浮遊感は、印象派の曖昧な表現と合わせて近代の「フランス的なるもの」の概念を形成していった。(全13話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:11分43秒
収録日:2019年8月26日
追加日:2019年12月21日
≪全文≫

●敗戦後、「打倒ドイツ」に燃えたフランス作曲界


―― 前回はマーラーのウィーン的な世界観と、ナショナリズムを力強く訴える国民楽派についてでした。国民楽派には独特の高揚感や力強さがあり、長らく愛されるような曲を生んでいます。どことない郷愁感もあればエキゾチックなところもあり、クラシックの多様化の中の一つとして、現在でも人気を保っているのでしょう。

 さらにもう一方では、ワーグナーに大きく影響を受けながら、まったく違う道を歩み出す人たちがいました。それがドビュッシーのような、音楽の教科書的にいうと「印象派」と呼ばれる人たちです。この世界にいくと、もともとの西洋音楽の流れから自由になります。すなわち「自由七科」のように世界の秩序を描くような表現から、和声的にもとりとめがないかたちになり、構造的にはソナタ形式(序奏→提示→展開→再現→結尾。二つの主題が提示部と再現部に現れる)みたいなものからも逃れて、非常にまったりとしたものになっていく。

 同じ時期に、オペラなどでは『蝶々夫人』なんかがそうですけれども、エキゾティシズムというか、ヨーロッパ文化にはないものをどんどん入れていく動きが起こります。ヨーロッパ文明が陰りを見せるというか、少し変質したりしていくのに対応したような動きのようにも見えます。このあたりについては、どのように考えたらよろしいでしょうか。

片山 そうですね。まずドビュッシーに関していえば、彼の音楽というのは、今言っていただいたようにワーグナーの影響を強く受けています。これは、フランスが普仏戦争に負けたことによって、ドビュッシーに限らずフランスの作曲界に「やはり次にドイツとやるときには勝たなくてはいけない」「文化的にもワーグナーに負けないものを示さなくてはいけない」という思いがあったからです。

 そのためには、やっぱり「敵に学べ」ということになり、みんなワーグナーにいかれてしまうというか、フランスの作曲家たちは、もうダンディだろうがシャブリエだろうが、もちろんドビュッシーだろうが、みんなワグネリアンになります。そこで、バイロイトに行っては一生懸命ワーグナーのオペラを見て、研究しました。ワーグナーのようなオペラを自分たちもつくらないといけない。物真似ではなく、何か変えたかたちで、ワーグナーをフランス化できないか、と考えるのです。


●地中海的な「軽...


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