渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
三十年戦争から半世紀でバッハの典雅な音楽が生まれた意味
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(5)バッハと「受難の典礼」
渡部玄一(チェロ奏者)
ルター派の音楽家として最大の名前はバッハである。ルター派は、人間の五官の歓びに厳しい目を向けたが、なぜか耳=音楽だけは重視した。その伝統に則り、バッハは「自分の音楽が優れれば優れるほど、神様の栄光を表すものだ」と考えて、作曲に励んだ。そのようなバッハの音楽が、あの残虐だった三十年戦争からわずか半世紀ほどで生み出されていることに、とても深い意味がある。渡部昇一がバッハの典雅な音楽に目覚めたのは、ドイツ留学中にバッハの「マタイ受難曲」を聴いたことがきっかけだった。だが、その数日後、ベルギーの修道院で「受難の典礼」を体験する。その2つの体験は、大きな気づきを渡部昇一に与えた。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分17秒
収録日:2021年8月6日
追加日:2021年11月20日
≪全文≫

●バッハの典雅で調和のとれた音楽の「切実な意味」


渡部 ひるがえってバッハは極めて重要な作曲家です。ルター派というエヴァンゲリッシェ(プロテスタント)は、これも父の本に書いてありますが、なぜか人間の五官という快楽の源泉を非常に憎みながらも、耳だけは重視しています。だからルター派は、音楽、とりわけ讃美歌を重要視しているのです。

 バッハは、まさにザクセン公がルターを匿っていた城が郊外にあるアイゼナハというところで生まれています。この町の町楽師として、ルター派の教会音楽の重要なポストによくつくのが、バッハ一族だったわけですから、それこそガチガチのルター派の作曲家です。

 バッハは本当に敬虔なクリスチャンで、自分が作品を書くのは神の栄光を示すためであるとして、彼個人が神様と向き合っています。また、教会関係のいろいろな役職にも就いています。

 音楽でいえば、ルター派の一番巨大な名前のひとつだとは思います。しかもルター派の勃興に直接関係があり、その中で音楽を支えていた一族の末裔というか最大の名前です。その人がクラシック音楽上で極めて重要な転換点に立つ、頂点の一人であるというのが面白いと思います。

―― 以前、玄一先生にお聞きしたことですが、バッハが生まれたのが1685年で、前回お話のあった三十年戦争が終わって(編注:1648年)、30年ほどたった頃です。

渡部 わずかに三十数年後なのですね。国土が荒廃し、赤ん坊を食べるためにやり取りするような地獄の境涯から、わずか半世紀ぐらいでバッハのような音楽が出てきたという意味合いをよくよく感じると、やはりバッハの典雅で調和のとれた音楽の切実な意味が、より分かるのではないかと思います。

 しかも、その美を極めた彼は、自分の個性や主張を表現しようとしたわけではありません。純粋に音楽的な音の美しさ、音楽のつくりを極めようとしました。そして、それが優れれば優れるほど、神様の栄光を表すものだと考えました。何も宗教を押し付けることではなく、自分の仕事の中でそういうことを達成しようとしたのです。

 彼の音楽は端正で、比較的に明るいものが多く、言い方によっては「健康」ともいえる。健康で調和のとれた世界をつくり出す音楽を多数生んだのは、その時代バッハだけではなく、イタリアのヴィヴァルディもそうでした。もともとイタリアでできたものをバッハが取...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史