金融政策正常化の難しさ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
欧米で高まっている金融政策正常化とその難しさについて、共立女子大学国際学部教授の植田和男氏が解説。第2話では、正常化の背景と今後の可能性を論じ、量的緩和の出口に向かうであろう日本への影響を考える。(全2話中第2話)
時間:10分02秒
収録日:2017年7月19日
追加日:2017年8月13日
≪全文≫

●金融正常化の背景-3つのポイント


 今回の金融政策正常化とそれに伴う困難という現象の背景にどういうことがあるかという点で大事なのは、いくつかの可能性が考えられることです。

 一番大きいポイントの1つは、インフレ率がなかなか上がってこないということです。その原因として、いわゆる長期停滞論的な可能性が挙げられます。長期的には経済的にあまり儲からないところに来ているため、長期的な利潤率、利子率もあまり高くならないし、インフレ率もあまり上がらず、FEDもあまり引き締めはできないであろうという話になります。

 また違う可能性としては、そこそこ金利は上がってきているし、これからも多少は上がるでしょうから、それから国債を買う、あるいは買った国債をだんだん減らしていくというような動きが起こってくるので、実は本当は長期金利はもっと上がってしかるべきであるのに、マーケットが長い期間の金融緩和に流され過ぎていて、少し間違った反応をしているのではないかという仮説が挙げられます。この仮説にも若干の説得力があるように見えます。


●正常化の背景-リーマンショックの二の舞を避ける


 では、なぜここでFEDがこれ以上引き締めるのかということを考えたいと思います。経済はいいのですが、インフレ率はどうでしょうか。データをご覧ください。こちらのグラフはアメリカの消費者物価指数上昇率です。2016年は原油の上昇もあり数値が上がったのですが、足元はまた少し下がってきています。つまり、強い強い金融緩和に比べると、インフレ率の動きは非常に鈍いものであるというのが世界中で起こっていることです。

 ですから、あまり焦って引き締めをする必要はないのではないかという考え方もあり得るのですが、マーケットがいい気になりすぎていて、場合によってはどこかで何らかのきっかけでも大きく考え方を変えて暴落してしまうということになると、リーマンショックのようなことになってしまうのです。それは避けたいわけで、避けるために多少早めに引き締めや正常化をしておくという考え方もあり得ます。そのような考え方を、金融政策に関する「BIS(国際決済銀行)ビュー」と言ったりします。このあたりも今後、欧米の起こるかもしれない正常化の一つの背景ではないかという見方もあります。


●長期停滞論を裏付ける実物投資と金融資産売買の割合


 こちらは、IMF...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
AI時代と人間の再定義(6)道徳の起源から考えるAIと感情の問題
道徳の起源は理性か感情か?…AI時代に必要な思考の身体性
中島隆博
プロジェクトマネジメントの基本(10)大脳生理学によるモチベーション理論
論理的?計画的?社交的?冒険的?利き脳による4タイプ
大塚有希子