日本銀行の新しい政策枠組み
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
最大の変更は金融政策目標が「量から金利へ」移行したこと
日本銀行の新しい政策枠組み(1)二つの変更ポイント
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
2016年9月21日、日銀金融政策決定会合を経て金融政策のフレームワーク変更が発表された。東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏は、これを「追加緩和ではないが、考え方の大きな変更」と呼んでいる。ここに至る背景や枠組み変更がもたらすもの、今後の金融政策について、植田氏に解説していただく。(全2話中第1話)
時間:11分29秒
収録日:2016年9月27日
追加日:2016年10月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●操作目標を量から金利へ、コミットメントは強まる方向


 今日は、日本銀行が先週(2016年9月21日)発表した興味深い措置について解説していきます。

 資料のサブタイトルにも「追加緩和ではないが、考え方の大きな変更」としたように、今回の措置は、追加緩和とは解釈しにくいものの、非常に大幅な考え方の変更だと言われています。

 表面上の変更ポイントは、これまでの金融政策目標が量を目標にした運営だったのを大幅に変え、金利を目標としています。この場合の目標は、われわれの言葉では「操作目標」と言います。最終目標の「インフレ目標」とは違い、当面金融政策が働き掛ける目標という意味で使います。これまでは、ベースマネー増加や国債買い入れ額が操作目標でした。今回の操作目標は、金利は金利でも、短期金利と長期金利の両方を、単純にいえばコントロールしたい。そのような政策に移動したということです。

 短期金利は厳密には日銀当座預金のごく一部ですが、とりあえずこれまで通りのマイナス0.1パーセントに据え置きます。そして、新しい点として、10年国債の利回りを約0パーセントに維持するように、いろいろなオペレーションを行う、あるいはオペ上の工夫を行うと発表しています。

 ここでははっきりとは言っていませんが、金利をコントロールする動きに伴って、実質的に量の目標にはあまり重きが置かれなくなるということかと思われます。おそらく当面は、無理に量を減らすことはしないものの、何らかの理由で量の増分が減るということが起こっても、日銀はあまり気にしないということだと思います。

 今回のもう一つのポイントは、金融政策のコミットメントを若干強めたことです。これまでは「インフレ率が2パーセントになるまで」という表現だったところを、「安定的に2パーセントを超えるまで」金融緩和を続けるとし、具体的な内容として「マネタリーベースが増えていく状態を続ける」と約束しています。これまでの約束では、マネタリーベースが年間80兆円で拡大すると言っていましたが、今度は単に増えていくということだけを約束しています。


●金利とマネーの量が描く相関関係を整理する


 では、以前「マイナス金利」をご説明した時に用いたのと同じ図で、全体の動きをもう一度図式的に整理しておきましょう。

 タテ軸には金融政策でいう「金利」の次元をとり、横に「量」...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(6)『閉された言語空間』の問題意識
江藤淳と喧嘩…加藤典洋『テクストから遠く離れて』の意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(9)大きな使命感を持って
「野球人気の回復に貢献したい」――大谷翔平の強い使命感
桑原晃弥
新しいアンチエイジングへの挑戦(6)ビタミンとお米とアンチエイジング
日本人に必要な栄養素は?幹細胞治療をどう考える?
堀江重郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉