●金利引き下げによる影響。銀行から一般家計まで
今後の日銀による金融政策のポイントは、金利をコントロールしつつ政策を続けていくことにあるわけですが、当然、次に疑問になってくるのは、金利を引き下げる余地はどのぐらいあるのかということです。
ここでは一部ですが、ポイントを指摘したいと思います。一つは短期のマイナス金利です。これをどんどん深掘りしていくという方向性に関しては、特に金融仲介機関、つまり銀行の収益に与える影響が思ったより大きいために、そう簡単ではないことが分かっています。
さらに、もう少し長期のところを見ていくと、金利低下のときはいつでもそうですが、今回は普段にもまして、年金や保険等の投資家が苦しい。あるいはそれを察知して、こうした投資家の生み出す収益を受益する立場の一般家計のマインドにもマイナスが出ているのではないか、ということが言われたりしています。
●政策金利と貸出預金金利の関係をユーロ圏と日本で比較する
そういう中、「ユーロ圏と日本におけるNIRPへの貸出預金金利の反応」という資料を見ていきましょう(NIRP:Negative Interest Rate Policy=マイナス金利政策)。
まず、政策金利であるIOER(超過準備預金金利)は、ユーロ圏では40ベーシスポイント(0.4ポイント)、日本では20ベーシスポイント下がっています。
それに対応する貸出金利の下げ幅を見ると、ユーロ圏は88と非常に大きく下がっているが、日本ではマイナス18で、20も下がらない数字です。もちろん最初に政策金利がどれだけ下がったかという幅の違いはありますが、そもそも日本は、長期間の金融緩和継続のために金利全体が非常に低いところにあります。金融カーブ(イールドカーブ)の左端にある政策金利が少々下がっても、貸出金利はなかなか下がれない状態だということになっているのです。
貸出金利が十分に下がらなければ、実体経済への波及効果はやや小さいわけですが、にもかかわらず金融機関の収益への影響はなかなか厳しいと見られています。赤丸で囲んだ74という数字では、新規貸出をしたときの利鞘(りざや)を表しています。ユーロ圏と比較するとかなり低いことが分かります。さらに、もっと古い数字も含めた平均をとると100になりますが、これに対する経費率は(右端の赤丸で囲んだ)87ベーシスポイントくらいかかると言われています。
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