●多くの国々が金融緩和政策を実施
それでは、今日は、今年(2015年)に入って金融政策関係で話題になった事象の中から、最も注目を集めた話の一つとして、ヨーロッパ中央銀行(ECB)の量的緩和策とその周辺の話題について、お話ししてみたいと思います。特に、周辺の話題としては、マイナス金利の話が面白いと思いますので、そちらについても少しお話ししてみたいと思います。
その前に、今年に入ってから各国の中央銀行による金融緩和政策の実施状況を簡単な表にしてみました。1月の初めから、インド、スイス。スイスは若干微妙なケースですが、金利を下げていますので、一応金融緩和政策とします。続いて、デンマーク、トルコ、カナダ、ECB、それから、シンガポール、ノルウェー、ロシア、オーストラリア、中国、そして、3月に入ってスウェーデンと、大変多くの国々で金融緩和政策が実施されています。特に赤字になっているところは、後でお話ししますが、マイナス金利が実施されているところです。
この背景ですけれども、まず昨年(2014年)の暮れ、日本銀行が大幅な金融緩和を決めたことでかなり円安に動いたことが挙げられます。その後、これではヨーロッパは大変だろうということで、ECBが近いうちにいわゆる量的緩和政策(QE)を実施するという予想がマーケットに広がり、ユーロ安を引き起こし始めました。ECB自体は、1月22日に量的緩和政策を決定し、実行は3月に入ってからということになったわけですが、これもあって、やはりユーロは安くなったのです。
円とユーロが安くなったのではたまらないということで、先ほど表で見ました他の中央銀行が次々に金融緩和政策を打ち出し、自国通貨があまり高くならないように、できれば多少弱くなるように政策を進めています。あるいは、各国間で、ある種の通貨切り下げ競争のような事態に入ってきているという面があるかと思います。
第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけて通貨切り下げ競争が勃発したことで、各国間の対立は一段と厳しいものになったという経験があります。それゆえ、今回の事態も、あまり好ましいことではないと、皆が思っているわけです。端的に言えば、ゼロサムゲームであるということかと思います。
ただ、今回の金融緩和競争、特に、その中での通貨切り下げ競争を見てみますと、単純にゼロサムゲーム...