GDP速報値から読み解くアベノミクスの評価と今後の展望
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
年率0.2%強・・・日本経済は3年間ほぼ成長なし
GDP速報値から読み解くアベノミクスの評価と今後の展望
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
「この4月以降は実質賃金の上昇が期待できる」と、東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏は語る。その根拠はどこにあるのか。GDPなどの数値からアベノミクスの過去を評価し、未来を展望する。
時間:11分00秒
収録日:2015年2月17日
追加日:2015年2月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本経済は3年間ほとんど成長していない


 今週の初めに、昨年(2014年)第4四半期のGDP統計が新しく発表されましたので、そのデータを少し詳しく見ながら、アベノミクスのこれまでの評価と今後の展望を述べたいと思います。

 最初に、この図(図1/実質成長率 前期比年率)が実質GDPの四半期データを過去3年ほど記したものです。それぞれの数字は、前四半期に対する成長率を年率で示しています。アベノミクスは2012年10‐12月期から始まり、2013年10‐12期を除いて順調に成長していたわけですが、消費税が上がった後で急速に落ち込み、2四半期マイナスが続き、2014年10‐12期は一応プラスに戻って、消費税増税反動の低迷を脱したかと言われているところです。

 これを違った観点から見たものがこの図(図2/実質GDP:2012Q1からの累積変化率)になります。同じように実質GDPの図ですが、対前期比の変化率ではなくて、2012年の第1四半期から、累積でどれほどGDPが増えたかを四半期ごとに書いています。例えば、2012年第4四半期は、2012年第1四半期に比べてGDPが下がっていることを意味しています。そのように見ると、2013年第1四半期から元の水準に戻って、2014年第1四半期には3年前に比べてかなりGDPが増えていたことが分かります。しかしその後、一度増えたものが急速に縮み、2014年第3四半期はほとんどゼロになっています。つまり、ここで3年前と同水準に戻ったのです。

 次の第4四半期は少し伸びましたが、明らかに1パーセントに達していません。つまり、3年間でGDPは0.6~0.7パーセントくらいしか伸びていないのです。年率に換算すると、3で割って0.2パーセント強です。上下はありましたが、平均的に見れば、日本経済はこの3年間ほとんど成長していないことになります。


●公共投資がGDPを引っ張ってきた


 この図(図3/各需要項目の実質GDPに対する寄与度:2012Q1からの累積値)は少し細かくて恐縮ですが、図2を需要項目別に分けたものです。青が家計の需要で、消費と住宅投資を足したものになります。赤が企業の設備投資。緑は政府の需要で、政府の消費と公共投資を足したものです。紫が海外の需要で、日本の輸出額から輸入額を引いた数字になっています。

 それぞれ詳し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
プロジェクトマネジメントの基本(10)大脳生理学によるモチベーション理論
論理的?計画的?社交的?冒険的?利き脳による4タイプ
大塚有希子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
これから必要な人材と人材教育とは?(2)AI時代に必要とされる能力
AI時代に必要なのは「問いを立てる能力」…いかに育成するか
柳川範之
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子