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BREXIT(ブレグジット)で一体何が起こるのか?

イギリスEU離脱のグローバル経済への影響

植田和男
第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授
概要・テキスト
2016年6月23日の国民投票を前に、いま世界中から注目を集めているイギリスのEU離脱問題「BREXIT(Britain's EXIT from EU)」。もし本当にEUから離脱することになれば、一体何が起こるのか。イギリスやヨーロッパへの影響や、グローバル経済における意味やリスクなどについて、東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏が徹底解説!
≪全文≫

●イギリスのEU撤退「BREXIT」は何をもたらすか


 今日は、最近非常に話題になっている「BREXIT(ブレグジット)」というテーマについて、やや一般的なお話をしてみたいと思います。

 そもそも「BREXIT」とは、「Britain's EXIT from EU」つまり「イギリスがEUから撤退する」という意味を表す造語です。

 イギリスでは、これに関する国民投票が、6月23日に行われる予定で、この結果「離脱する」という意思決定が国民から下されれば、その後行政的な手続きがかかるため実際に離脱するのは2年ほど先になるようですが、イギリスがEUから脱退することになると言われています。

 本日は、そういうことが起こった場合のイギリス国内とヨーロッパにおける影響、さらにより広くグローバルにはどういう意味を持つのか。その両面について少しずつお話ししてみたいと思います。


●賭け率から分かる「BREMAIN」の推移


 影響についてお話しする前に、このデータをご覧ください。こちらは、イギリスがEUから離脱するかどうかについて、イギリスにおける賭けの結果を表したデータです。上に行くほど離脱の可能性が低いのは、表題に「BREMAIN」とあるように、イギリス(ブリテン:B)がEUにとどまる(リメイン:REMAIN)可能性を確率で示したものだからです。

 イギリスのウェブサイト上ではいま、どちらが起こるかに対する賭けが行われています。このグラフは、それを日々集計してつくり出したものです。賭けから読み取れる確率をご覧いただきますと、今年5月中旬ぐらいまではだいたい一定で、かなり高いところ、つまり「EUから離脱しないだろう」という倍率で推移していました。その後、いったん「もう大丈夫だ」という見方が強まり、「離脱しない」可能性が高まったという結果が出ています。

 ところが、6月に入ると急速に離脱の可能性が高まり、イギリスがEUに残存する可能性は低くなってきたことを、賭けの数字は告げています。今週(6月第3週)の半ばごろには最低のところに落ち込む結果が出ています。それでも50パーセントは上回っていますので、この賭けに参加している人たちはどちらかというとEUにとどまることを望んでいる人が多いという、そのような賭けだと言われています。

 グラフの最後の部分(6月16日から17日)には、いったん上がる動きが示されています。ご存じのようにイギリスのEU残存派である下院...
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