●過去20年間の日米の株価トレンド
どのようにアメリカの経済、金融政策が動いていくか自体難しいのですが、それについてお話してみたいと思います。
こちらは日米の過去20年間くらいの株価のグラフになっています。赤がアメリカ、青が日本になっています。明らかにアメリカの株価は、なんとなくトレンドとして上がっている傾向の中で上下。日本ははっきりしない、上下のトレンドがない中で、上がったり下がったりですが、明らかにアメリカが下がるときは、日本もはっきり下がっています。ですので、アメリカが今後下がると、日本はどうなるのかということが、非常に懸念されるのです。
●米国株価推移と現在の株高要因
そこで、今度アメリカだけについて詳しくお話してみたいと思います。
これは、先ほどと同じアメリカの株価、S&P500種指数という株価インデックスですが、過去20年間で、今がピークかどうか分かりませんが、ピークのようなものが3つあることが分かります。過去2つがここです。過去2つはここから暴落して、半分くらいになっています。現在は過去2つのピークを少し超えて、史上最高値のところにあって、いろいろ下がるのではないかと言われつつも、値を保っているという状況です。
なぜこんなに最近のアメリカの株価が強いのかということに関しては、いろいろな説があって分かりにくいわけですが、一つはリーマンショック以降の金融危機も一段落してきた。それから実体経済で、例えばシェールガスや、あるいはIT関連の分野で3次元プリンタ、Squareという決済機能など新しいIT関連の動きがありますが、そういうものが非常に強いので、それらを反映して株価も強い、という説が一つ有力かと思います。
ただ、もう一つ有力な説は、金融政策の影響を強く見るという説かと思います。過去を見ていただいても、ご記憶の方もいると思いますが、ここでいわゆるLTCM危機というのがあって、金融緩和を1回強化して、株価はそれで上がって、緩和の間にITバブルが生成して、緩和をやめたらそれが崩壊してなかなか大変なことになりました。それに合わせて2000年代の半ばにかけて、かなり強い金融緩和政策をやったわけですが、これが住宅価格バブルを引き起こして、緩和をやめたらそれが破裂して大変なことになった。その後に、前代未聞の非常に強力な非伝統的金融緩和政策というものを、2009年くらいからもう5年強続けていますけれども、その影響があって株価はこれほど強いのではないかという説がもう一つかと思います。
したがって、こちらの説をとった場合には、今、テーパリングという話がありますが、量的緩和が終わっていく。そして、金利も上がり始めるという中では、これはまた元に戻ってしまうリスクを感じざるを得ないということだと思います。
●米国経済 3パターンのシナリオ
したがって、その中でアメリカ経済は金融政策との関係で三つくらいの可能性があって、引き締めるのだけれども、実体経済は非常にしっかりしているので、まあうまくいくというケースです。
それから、2番目に、先ほど申し上げたように、引き締めてみたら、これまでの非伝統的金融緩和政策の影響で上がっていた株価、その他が崩れてしまって、おそらくその場合、アメリカだけではなくて、世界的にかなり強い金融不安のようなことが再燃するというケース。
3番目に、もう一つはっきりしないで、実体経済もそれほど強くならない、金融引き締めもかなり中途半端なものに終わる、というようなケースが考えられると思います。
●米国経済との対応関係に見る日本経済のシナリオ
以上、アメリカ経済の今後の可能性ですが、それを受けて日本を考えてみますと、一番いいケースはアメリカは経済が強くて、引き締めを順調にやることができて、しかも経済の強さが基本にあるので、マーケットその他はあまり崩れない。そうしますと日本は、日本銀行が自分の非伝統的な金融緩和政策をアメリカよりは遅れてやめていくというように運営することによって、おそらくもう一段の円安、場合によれば株高が出現する可能性があって、経済もうまくいくという可能性が、そのケースは非常に考えられるということだと思います。
2番目のアメリカがだめなケースでは、これは、おそらく日本がいろいろな面でかなり頑張っても、相当苦しいということだと思います。...