公的年金運用の基本姿勢を考える~GPIFの基本ポートフォリオの見直し~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
GPIFのポートフォリオの見直しのポイント
公的年金運用の基本姿勢を考える~GPIFの基本ポートフォリオの見直し~
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
巨額資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ見直し作業に注目が集まっている。より高い運用成績を求める声もある中、そのあるべき姿と現状について解説する。「植田和男の金融経済シリーズ」第2回。
時間:13分03秒
収録日:2014年5月1日
追加日:2014年5月8日
≪全文≫

●GPIFの運用姿勢に注目が集まっている理由


 今日は、最近非常に話題になっているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による公的年金積立金運用について、いくつか基本的なポイントをお話ししたいと思います。
 
この積立金は非常に大きな額にのぼり、百数十兆円の残高があります。現在はおおまかに4種類の資産に分けて運用していて、日本の国債や国債に近いものが約60パーセント、国内株式12パーセント、外国債券11パーセント、外国株式12パーセント、キャッシュ5パーセントという基本線で運用を行うことになっています。これを「基本ポートフォリオ」と呼び、5年に1回見直すルールがあります。2015年の3~4月がその5年目にあたるため、現在は新しいポートフォリオ決定に向けた作業が進行中で、非常に話題を呼んでいます。
 
さらに、より足元の状況を申し上げれば、昨年5月以降、国内株式のパフォーマンスはあまりよくありません。その中で、GPIFが株式への運用割合をもう少し高めれば、国内株式全体が好調になり、日本経済のパフォーマンスを向上させるのではないか。アベノミクス全体の成功にもつながり、年金運用のパフォーマンスもより上がるのではないかという思惑が、政府を中心に出ております。そのようなこともあり、運用姿勢への注目が集まっているのだと思います。


●国債中心と株式中心のリターン・リスクを比べてみる


 繰り返しになりますが、現状は日本の債券(国債)を中心とした運用となっています。これを、もう少しリスクを高める方向に動かせばどうかというのが大きな論点ですので、リスクを高めることがよいことなのかどうかから考えてみたいと思います。

 国債と株のリターン・リスクを比べるために、日本を含む先進国の過去データを参照してみると、平均的には、株のほうがリターン・リスクともに高いことがわかります。つまり、大きなリターンが得られる可能性はあるものの、場合によっては、何パーセントかの確率で運用に失敗し、積立金がゼロになる可能性もあります。そうなると、将来の年金受給者への年金支払いが強制的にカットされるという事態も念頭に置いておかなければなりません。

 また、一つ注意していただきたいのは、株のリターンのほうが高いのはあくまで世界平均であり、日本の過去20年は例外に当たっていたという点です。この期...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治