編集長が語る!講義の見どころ
「自動運転」が大きく変える近未来の社会(加藤真平先生)【テンミニッツTV】

2021/05/18

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
最近、大きな話題になっている「自動運転」。すでに、自動運転的な技術が「運転アシスト機能」として装備されている車も、珍しくなくなってきています。実際にそのような車に乗っている方にお話しをうかがうと、「いまの機能だけでも、かなり便利」とのこと。どんどんと技術が革新されていることを実感させられます。

この「自動運転」の技術が、さらに進んでいくと、社会のあり方も大きく変える可能性がある。では、どんな社会が実現するのか?

本日は、そのようなことを、動画や写真をふんだんに用いて、とてもわかりやすくご紹介いただいた、加藤真平先生(東京大学大学院情報理工学系研究科准教授)の講義を紹介します。

しかも、本講義のポイントは「自動運転」の技術についてだけではありません。昨今、「大学発ベンチャー」が盛んになっており、多くの大学生の「夢」も「ベンチャー創業」に変わってきています。その点、実は加藤先生は、名古屋大学准教授でいらっしゃった2015年に、自動運転技術を核として「ティアフォー」という大学発ベンチャー企業を創業していらっしゃるのです。

はたして「自動運転」の現在地とは? そして、「大学発ベンチャー」の勘所とは? 多くの刺激と知見が得られる講義です。

◆加藤真平:「自動運転の民主化」が生み出す近未来の社会(全5話)
(1)自動運転の民主化と大学発べンチャー
ディープテックのシンボルとして自動運転の民主化を目指す
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3951&referer=push_mm_rcm1

まず加藤先生は、上記の講義の見出しにもなっているように、ご自身が立ち上げたベンチャー企業「ティアフォー」の大切なコンセプトとして「自動運転の民主化」というビジョンを示します。これは1社で開発を行なうのではなく、自分たちのテクノロジーを世界に向けて開放し、誰でも用いることができるテクノロジーという位置付けにすること。これによって、さまざまな個人や組織の知恵を集めることができ、1社ではできなかった開発を世界全体で行なっていくことができるようになります。

加藤先生は、「大学から生まれた小さなスタートアップが、年数を経る中で世界連合軍を引き連れるわけです」とおっしゃいます。そんなことをしたら優位性が失われるのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、加藤先生によれば、これこそが「シリコンバレーや昨今の中国の、非常に大規模な開発やビジネスを進めるテック企業に対抗する」ための妙手なのです。確かに、最近の日本は、アメリカや中国の企業に対して、開発の規模(予算、人員)やスピードにおいて圧倒的に劣ることも多くなっています。このような遊撃戦的な手法で挑むことは、大いに可能性のあることといえるでしょう。

また第1話で加藤先生は、実際にベンチャー企業を立ち上げたご経験も踏まえ、「大学発ベンチャー」の仕組みと進め方についても、お話しくださっています。ここは、大学発ベンチャーが注目される今、大いに学ぶべきところです。ぜひ講義本編をご覧ください。

さらに加藤先生は、動画も交えつつ、自動運転の技術についてご解説いただきます。加藤先生が個人的に重視していた自動運転は、郊外や過疎地などで「来てほしいと思ったときに来てくれる」タクシーやバスに近い自動運転だといいます。つまり、人手不足もあって移動に困っている地域で、人々の足となるような技術です。

このような夢を実現するためには、低価格化を実現しなければなりません。その点、ベンチャー企業が注目を集めるのは、「いかにして品質が高いものを低コストで開発するか」というノウハウにも長けている点だといいます。ここも重要な視点でしょう。

ところで、加藤先生がさらりとおっしゃる、こんな言葉が少し引っかかりました。

《日本には道路交通法があり、免許を持った人が車の運転の安全を担保する義務があります。日本では、道路交通法自体を改正するのは非常に難しいので、基準緩和が進められています。つまり、免許を持っている運転手は必ずしも車の中にいなくても良いというものです。ただし、遠隔地でも良いので、運転手はいなければならないというのが、現段階での日本の基準緩和の考え方となっています。したがって、遠隔地でも良いので運転手がいて、万が一のときにはその車の操作を行うことができるという状況でなければなりません》

このような基準があるために、開発も工場の敷地内での運搬や、公園内での移動などといった部分で進められるといいます。しかし、それで良いのでしょうか。世界での競争を考えた場合、これでは大いに後れを取ることになるのではないか。医薬の承認はじめ、昨今の日本の「諸分野での遅れ」も想起しつつ、まことに心配になるご指摘です。

そのような問題意識も含みつつ、本講義は、動画のおかげで最新技術もわかりやすく理解できる、とても興味深い内容です。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)
◆加藤真平:「自動運転の民主化」が生み出す近未来の社会(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3951&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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「似ても似つかぬことを真似する。これが愚行である」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3929&referer=push_mm_hitokoto

IT業界で次々に発動される飛び道具トラップのメカニズム
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 教授)

こうした飛び道具っぽく見えるもの、そのコピー&ペイスト現象を「文脈剥離」と呼んでいます。例えば分かりやすい例を挙げると、私はよく知りませんけれども、大流行した『鬼滅の刃』の中に出てくる有名なフレーズで、「一番弱い人間が一番可能性を持ってるんだよ」というものがあるそうです。この一文だけ取り出して、別の文脈に持ち込んでも仕方がないのです。
(中略)
サミュエル・ジョンソン(1709年~1784年、イングランドの文学者)が非常に良いことをいっています。「似ても似つかぬことを真似する。これが愚行である」と。文脈剥離のコピペとは、まさにこれだと思います。


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今週の人気講義
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『日本書紀』ではなぜ出雲神話がカットされているのか
鎌田東二(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3948&referer=push_mm_rank

「社会の分断」と戦うためには教養を武器にすることが必要
橋爪大三郎(社会学者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4003&referer=push_mm_rank

織田信長が高く評価した秀吉の二つの才覚
小和田哲男(静岡大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3956&referer=push_mm_rank

地温勾配とソリダス――中央海嶺ができる仕組みに迫る
沖野郷子(東京大学大気海洋研究所教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4009&referer=push_mm_rank

「不便益」として認定するための3つの条件
川上浩司(京都先端科学大学教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3971&referer=push_mm_rank


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編集後記
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編集部の加藤です。皆さん、今回のメルマガ、いかがだったでしょうか。

さて先月お伝えしましたが、特集が月間更新から毎週更新に変わって1か月が経ちました。改めましてここまでのランナップをお伝えいたします。

<特集:4/16開始>春に「人間力」を高める
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=110&referer=push_mm_edt

<特集:4/23開始>「気候サミット」!知っておくべき科学知識
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=111&referer=push_mm_edt

<特集:4/30開始>人生を豊かにする「教養」の本質と可能性
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=112&referer=push_mm_edt

<特集:5/7開始>こだわりのクラシック
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=113&referer=push_mm_edt

<特集:5/14開始>
三英傑(信長、秀吉、家康)ちょっと深掘り
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=114&referer=push_mm_edt

どれもみな興味深い特集ではないかと思いますが、なかでも特に4/30開始の「教養」特集は非常に多くの方にご視聴いただいております。
なぜ教養が重要なのか、そもそも「教養」とは何かという点について、皆さまの関心の高さがうかがえます。
今週の人気講義にも入っております橋爪大三郎先生のシリーズ講義も特集講義の一つですが、橋爪先生は3話目でこう話しています。

「教養とは分断と正反対の考え方です。教養とはまんべんなく、いろいろな人びとが考えたことを、バランス良く自分の養分にして、世の中の現実として受け取りましょうという考え方だからです。つまり、分断と戦うためには、教養を武器にすることが必要なのだと思います」

詳しくはぜひ講義を見て頂ければと思いますが、教養の意味、価値が分かるお話ではないかと思います。

ということで、これからも皆さまの多様な学びの一助となる特集をどんどんと配信していきますので、ご期待ください。