編集長が語る!講義の見どころ
古典の読みどころがわかる(特集&古事記・日本書紀講義)【テンミニッツTV】

2021/07/02

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
古典についての知識はぜひとも身につけておきたいものですし、できれば一読してみたいもの。しかし、有名な古典を手に取ったとき、予備知識なく読み進めるのか、それとも「読みどころ」を知ったうえでページを開くのかで、「面白さ」はまったく違ってきます。さらに、得られる「教養」にも雲泥の差が出るものです。

今回は、古典の「読みどころ」を徹底解説いただいた講義を集めた特集と、そのなかからお奨め講義として、鎌田東二先生の「古事記・日本書紀」講義を紹介いたします。

■本日開始の特集:「読みどころ」がわかる!日本と世界の古典文学

ぜひ知っておきたい古典作品について、当時の時代背景や著者の思惑などもふまえつつ、各作品を徹底解説いただいた講義を集めました。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=120&referer=push_mm_feat

鎌田東二:世界神話の中での日本神話の特徴は「人間の格づけ」にある
兵藤裕己:『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
渡部泰明:日本の古典の代表『百人一首』の3つの謎
渡邉義浩:三国志の舞台、三国時代はどんな時代だったのか?
武田将明:なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
納富信留:2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由

■講義のみどころ:『古事記』『日本書紀』の理解を世界神話などとの比較から深める(鎌田東二先生)

ある国の精神文化や、人々の考え方のベースを考えるとき、神話について知ることは、とても有用です。その点、私たちは日本神話について、その類いまれなる特徴をどれほど知っているでしょうか。また、世界の神話と比べての違いをどれほど理解しているでしょうか。

本日は、それらの点について知見を得るのに、まことに有用な講義を紹介します。鎌田東二先生(京都大学名誉教授/上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授)に、世界神話と日本神話の比較、まったく異なる『日本書紀』と『古事記』の違いから見えてくる日本の特質、「古事記神話」の読み解き、さらに『先代旧事本紀』『古語拾遺』までご言及いただいた、とてもエキサイティングな講義です。

◆鎌田東二:世界神話の中の古事記・日本書紀(全9話)
(1)人間の位置づけ
世界神話の中での日本神話の特徴は「人間の格づけ」にある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3943&referer=push_mm_rcm1

まず第1話で鎌田先生は、世界神話と日本神話の「人間の格づけ」の違いについて解説されます。たとえばメソポタミア神話では、人間は「下級神の労働の役割を担う奴隷」のような非常に低い位置づけの存在とされているといいます。一方、ユダヤ神話の『旧約聖書』では、人間は神の被造物ではあるけれども、一神教の神が造ったものであり、しかも、他の被造物の中でも特に神のイメージに近い存在として位置づけられています。

一方、日本神話では、神と人間の位置は、非常に曖昧です。神々がたくさん生成していく中で、やがて人間も生まれていく。鎌田先生は《どこからが神で、どこからが人間なのかが不明確》《人類皆兄弟、人類皆神様といった考え方》《世界神話の中で日本神話が1、2を争うほどに、神と人間との間に親近感がある》とおっしゃいます。そして、その日本神話の根底には「むすひ(産霊)」という生命力エネルギーがあります。このあたりの位置づけの違いは、世界と比べてもとても特徴的な点といえるでしょう。

さらに鎌田先生は、『古事記』と『日本書紀』の違いについてお話しくださいます。鎌田先生いわく、『古事記』は「オペラ」のようで、神々の面白いストーリーが、ハリウッド映画でも観るかようなスペクタクルで描かれる。一方、『日本書紀』は国家としての公式の歴史書でデータベース的ではあるのだけれども、非常に曖昧で、記述が混沌としている。神話にしても、「一書に曰く」というかたちで、数多くの「神話」が併記されていきます。それぞれで、最初に出てくる神様の名前さえ違う。

『日本書紀』はつまり、様々な豪族(氏族)が伝えてきた神話をうまく取り込んだ「談合」であり「忖度文化」だ、と鎌田先生は喝破されます。それゆえ、論理的な整合性を求めすぎる人が読むと、混乱につぐ混乱に見舞われるだろうが、そこに独特の面白みがある。日本の心を探るためには『古事記』こそが最重要だと説いたのは本居宣長だが、その本居見解が「常識」だということは疑わなければならない。そう鎌田先生はおっしゃいます。

そう説いたうえで、鎌田先生は『古事記』と『日本書紀』の違いや、具体的な神話の内容について、とてもわかりやすくご解説くださいます。鎌田先生の「語り部」的なお話しを聞くだけで、日本神話のポイントをしっかり押さえられるといって過言ではありません。日本神話についてあまりよくご存じない方は、まさに必見の内容でしょう。

また、日本神話について知見を持っている人にとっても、アマテラスとスサノオの対比や、日本神話におけるスサノオの意義などの話は、とても興味深いものです。

『古事記』ではスサノオやオオクニヌシの物語が、息もつかせぬ面白さで展開する。一方、『日本書紀』になると非常にドライになって、スサノオについても「分断的」「対抗軸的」に描かれ、しかも面白い話が、大きくカットされている。それは、面白い話を盛り込むことでバランスが崩れることを避けたのではないか。一方、面白い話を盛り込んだ『古事記』は、藤原氏によってサポートされてきたのではないか……。さらに、鎌田先生の講義は『古事記』偽書説や、『先代旧事本紀』『古語拾遺』まで及びます。それらがどのような話かは、ぜひ講義をご覧ください。

日本神話の特質を、様々な比較をとおして、とてもわかりやすく浮き彫りにしてくださる講義です。まさに日本人必見の講義といえましょう。

(※アドレス再掲)
◆特集:「読みどころ」がわかる!日本と世界の古典文学
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=120&referer=push_mm_feat

◆鎌田東二:世界神話の中の古事記・日本書紀(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3943&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、「ワクチン」についての問題です。ではレッツビギン。

ワクチンの歴史を遡ってみると、「    」に対する種痘が初めてのワクチンといわれています。

さて「    」には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4044&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて昨日から7月に入りました。今回は今年上半期(1月~6月)のなかでよく視聴された講義を3つご紹介いたします。

渋沢栄一が近代日本に与えた二つの大きな影響
童門冬二(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3868&referer=push_mm_edt

マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3811&referer=push_mm_edt

日本経済が行き詰まりの状態を続けている二つの大きな理由
西山圭太(東京大学未来ビジョン研究センター客員教授/前・経済産業省商務情報政策局長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3825&referer=push_mm_edt

いずれもシリーズ講義の1話目になりますが、シリーズを通しても全体的に視聴数の多い講義です。
初めて視聴するという方はもちろん、一度視聴された方もぜひもう一度ご視聴いただき、新たな学びにつなげていただければ幸いでございます。

ちなみに、橋爪先生は4月から配信が始まったシリーズ講義<今こそ問うべき「人間にとっての教養」>も大変よく視聴されています。

『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4001&referer=push_mm_edt

こちらもぜひシリーズを通してご視聴ください。