編集長が語る!講義の見どころ
「危機の意思決定」に何が大切か(テンミニッツTVメルマガ)

2020/05/20

皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

いよいよ「緊急事態宣言」の解除が始まりました。ようやく解除になったという感慨もありますが、一方で、これから本当に大丈夫なのかという懸念もあります。感染を防がなくてはいけないが、同時に経済も死なすわけにはいかない。難しい局面ですが、テンミニッツTVで多くの先生方が指摘されているように「正しい知識で、正しく恐れ、正しく行動する」ことを胸にがんばってまいりましょう。

それにつけても、今回のウイルス禍への政府や行政の対応はどう評価されるべきでしょうか。国によって対応の是非に大きな差が出ました。また、日本国内だけを見ても政治リーダーの資質の差が大いに現れている――そういう見方も広がっています。

危機において、いかに意思決定し、対処できるか。まさにその姿に、リーダーや組織体制の「地金」は残酷なほどに露出します。しかも危機においては、誤った判断は許されるものではありません。その対応の是非によって、社会の人びとの「生き死に」さえ左右されてしまうからです。

その点、今回の日本政府の対応は正しいものだったといえるでしょうか。もし、問題があったとすれば、その原因はどこにあるのでしょうか。

そのことについて具体的に考究いただいた曽根泰教先生の講義をご紹介します。

◆曽根泰教:対コロナ、危機の意思決定を考える(全5話)
(1)シナリオの必要性
新型コロナ問題を考える上で重要な「危機のシナリオ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3378&referer=push_mm_rcm1

曽根先生はこの講義のなかで、危機に備えて、あらかじめ「シナリオ」を作っておくことの重要性を説かれます。

「危機に対処する意思決定は、瞬間的なアドリブ芸では無理だ」と曽根先生は強調されます。とりわけ今回の新型コロナウイルス問題は、未知のことが非常に多かったため、エビデンスを条件に政策決定を行うことはできませんでした。そのため日本政府の対応では、「瞬間的なアドリブ芸」の問題点が大きく露呈してしまったともいえます。

しかし、この問題に備えることができなかったわけではありません。ジョンズ・ホプキンス大学などは2018年に、今回のような性質のウイルスが蔓延する危険性について警告を発していました。また、SARSやMERS、新型インフルエンザなどの感染症の厳しい経験からも、「シナリオ」は十分に描けたはずだったのです。

さらにいえば、「マスク2枚配布」や「10万円支給」のような「国民全体を相手にしたオペレーション」では、ますます「事前のシナリオ」が必要でした。しかし日本は、「マニュアル」は作っていても「シナリオ」を作れていなかった。そう曽根先生は指摘されます。

ではいかに「シナリオ」を作ればいいのか。そしてそれをいかに練り上げ、いかに備えていけばいいのか。そのことについて、曽根先生が様々なヒントを教えてくださいます。

危機対応の「シナリオ」が必要なのは国や地方自治体ばかりではありません。企業も、家庭も、個々人も、「シナリオ」を作っておく必要があります。今後、危機に少しでも正しく対処していくために重要な講義です。ぜひご視聴ください。

(※アドレス再掲)
◆曽根泰教:対コロナ、危機の意思決定を考える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3378&referer=push_mm_rcm2

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3063&referer=push_mm_rank

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3331&referer=push_mm_rank

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3383&referer=push_mm_rank

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レッツトライ! 10秒クイズ
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「東洋思想(哲学・思想)」ジャンルのクイズです。
北条政子が愛読し、徳川家康が座右の書として扱ったのは、唐の太宗の言行録である『〇〇〇〇』。〇〇〇〇に入る中国の古典は何?
答えは下の講義でご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1467&referer=push_mm_quiz

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編集後記
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編集部の加藤です。
現在、「世界の新型コロナ対応を俯瞰する」のシリーズ講義を配信中の小原雅博先生の新刊『コロナの衝撃 感染爆発で世界はどうなる? 』が発売となります。
ここでは新刊の冒頭(「はじめに」)から一部抜粋してご紹介いたします。

「本書では、感染症危機に揺さぶられる政治や経済や外交の動きを中心に取り上げた。その中で、筆者が重視したのは、感染症が私たちに突き付けているいくつかの本質的疑問である。それは、国家や社会と個人の関係、望ましいガバナンス、安全と自由やプライバシーの関係、政治・安全保障と経済の関係などであり、政治家やメディアが必ずしも十分に取り上げてこなかったテーマである。
感染症は、イデオロギーもルールもなく、国境を超え、民族を超えて人類を襲う。そんな感染症の怖さに直面している私たちは、この危機に潜む本質的な問題に向き合い、議論し、その答えを求めることによって、国家や社会をより望ましい形に変えていかなくてはいけない。」

小原先生がおっしゃるように、新型コロナウイルスという感染症が「イデオロギーもルールもなく、国境を超え、民族を超えて人類を襲う」ことを私たちは現実に体験しています。この実体験をどう受け止め、今後にどう生かしていけばいいか。本書の終章は「私たちは何をすべきか?」というページなのですが、まさに本書がその道しるべとしての一冊になるのではないでしょうか。小原先生の講義と合わせて読むと、より理解が深まると思います。

<ご紹介した小原雅博先生の新刊はこちら>
『コロナの衝撃 感染爆発で世界はどうなる? 』(小原雅博著、ディスカヴァー携書)
https://10mtv.jp/r/?ywdKGj

<小原雅博先生の最新講義はこちら>
メルケル首相がコロナ禍で訴えた「一致団結」のメッセージ
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(3)政治のメッセージ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3373&referer=push_mm_edt