編集長が語る!講義の見どころ
嘘の本質と効用とは?(特集&中島隆博先生×納富信留先生)【テンミニッツTV】
2022/02/25
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
ロシアがウクライナに侵攻しました。ニュースやSNSなどを見ておりますと、不確かな情報も含め、さまざまな言説が飛び交う「情報戦」の様相を呈しています。
このようなとき、あふれる情報に安易に踊らされぬためにも、自分のなかにしっかりした歴史観や哲学観などの「教養」を持っておくことが、ますます必要不可欠でしょう。
テンミニッツTVとしても、使命を果たせるよう頑張りたく存じます。引き続きまして、ご愛顧賜りますよう、お願い申しあげます。
さて本日は、「嘘は何のためにあるのか」を考える特集です。
「嘘は良くない」……もちろん、そのとおりです。しかしもう一面で「嘘も方便」という言葉や、「優しい嘘」などという言葉もあります。また、小説や映画などでも「フィクション=嘘」だからこそ、その世界観にどっぷりと浸れるということもあるでしょう。
哲学的に考えても、「嘘は許されるのか」というのは、実はなかなか難しい話でもあります。
■本日開始の特集:嘘は何のためにあるのか~嘘の本質と効用
嘘は絶対悪なのか。それとも必要悪なのか。私たちは互いに「嘘をつかない」という前提のもとで会話をしますが、嘘が鍵を握ることもあります。いったい嘘は何のためにあるのか。この機会に嘘の本質と効用について考えてみてはいかがでしょうか。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=156&referer=push_mm_feat
中島隆博/納富信留:カントと『論語』の対立を超えたところで正しさを議論する
中島隆博/納富信留:ポピュリズム化する社会で「正しさ」をどう考えるべきか
上野誠:『サピエンス全史』で提起した「虚構を信ずる能力」の問題
津崎良典/五十嵐沙千子:優越感と劣等感のなか自分を更新していくのが教養
行徳哲男:安住安楽こそ悪の根源‥平和と向き合うため若者と旅した処
鄭雄一:道徳の共通原理を示す命令は「二面性」を持っている!
■講座のみどころ:東西の哲学から考える「真の正しさ」とは?(中島隆博先生×納富信留先生)
本日ご紹介するのは、テンミニッツTV講演会の場で、中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所教授)と納富信留先生(東京大学大学院人文社会系研究科教授)に、東洋哲学と西洋哲学から見た「真の正しさ」は何かについてご対談いただいた講義です。
「正しさ」や「嘘」について考えるうえで、非常に示唆に富む講義であり、メディアやSNSで様々な情報があふれるなか、自分の見識を養うためにも必見の内容です。
◆中島隆博×納富信留:哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(全11話)
(6)正しさの基準
カントと『論語』の対立を超えたところで正しさを議論する
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3247&referer=push_mm_rcm1
(7)ポピュリズムと言葉の問題
ポピュリズム化する社会で「正しさ」をどう考えるべきか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3262&referer=push_mm_rcm3
まず、講義第6話の後段で、「嘘」について考えるうえでとても興味深い2つの逸話を、中島先生がご紹介くださいます。
1つは、父親がヒツジを盗んだことを密告して逮捕させた息子を「正直者」だといった人に対して、孔子が「それは逆で、子は父のために隠すべきだ」と語った話。
もう1つは、それとは逆にイマニュエル・カントが、「誰かに追われている友人が逃れてきて、追っ手が『お前はあいつを匿っただろう』と問うてきた場合でも、嘘をついてはいけない」と指摘した話です。
果たして、どう考えればいいのでしょうか……。
一方、納富先生は、続く第7話で、このカントの話を別の角度から言及され、そして「嘘のパラドックス」についてご解説くださいます。
両先生はこの講座の全体を通して、とても興味深い指摘をされています。古代西洋においても、また古代中国においても、「正しい」という形容詞は「行為」に関わるものではなく、「人」に関わるものだったというのです。
つまり、現代人は、「これをやったら正しい」「これをやったら正しくない」というように、ある行為を評価するものとして「正しい」という言葉を使いますが、古代の西洋でも東洋でも、「人」が正しいか正しくないかを判断したということです。
納富先生は、古代ギリシャでは、「正しいことをやる人が正しい人」ではなく、「正しい人がやることが正しいこと」だと考えられていたと指摘されます。
また中島先生は、古代中国でも「正しさ」が人に関わるものだった例として、中国古典に出てくる「君子」という言葉を挙げられます。どうやったら「正しい人=君子」になれるかが最大の問題だったのです。
「正しさ」を「行為」につけるか「人」につけるかで、考え方は大きく変わります。たとえば緊急事態においては、政治家でもビジネスマンでも、ブラフ(はったり)をかけてでも、自分たちに有利に事を運ばなければならないかもしれません。そのようなことと,「正しさ」について、どう考えればいいのでしょうか。
そのようなことも含めて考える場合、たしかに、「正しさ」を行為に結びつけると、ややもすれば人を糾弾してつるし上げるような雰囲気になってしまうかもしれません。
一方、古代ギリシャや古代中国の知恵のように「正しさ」を人に結びつけると、「正しさ」の伸びしろや、より良い方向に進んでいくような「正しさ」、あるいは「許し」についても考えることができるように思えてきます。
このご対談講座は2019年に行なわれたテンミニッツTV講演会を収録したものです。講演会ならではの話の流れもありますし、また、後半には質疑応答の部分もあります。時間が許せば、ぜひ全編を通してご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:嘘は何のためにあるのか~嘘の本質と効用
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=156&referer=push_mm_feat
◆中島隆博×納富信留:哲学から考える日本の課題(6)&(7)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3247&referer=push_mm_rcm2
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3262&referer=push_mm_rcm4
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「縄文文様」についての問題です。ではレッツビギン。
縄文文様でもう一つの特徴として、渦巻き文様というのがあります。この渦巻きというものは何なのかというと、水を表しているのと、それからもう一つは( )を表しているわけですね
さて( )にはどんな言葉が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3617&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて本日は伊藤元重先生(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)の新シリーズ講義<ビジネス・エコノミクス>を紹介いたします。
◆伊藤元重:ビジネス・エコノミクス (全5話)
(1)差別価格から学ぶダイナミックプライシング
差別価格の実例でダイナミックプライシングの真髄がわかる
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4365&referer=push_mm_edt
この講義は伊藤先生の近著『マネジメント・テキスト ビジネス・エコノミクス 第2版』(伊藤元重著、日本経済新聞出版)を参考に、具体例を挙げながら、経済学、特にミクロ経済学について全5話で解説していくというものです。
ビジネスの世界で起きているいろいろな現象を読むのに役立つ話ばかりで、非常に興味深い講義です。現在第2話まで配信中で、このあと毎週木曜日配信予定です。ぜひ続けてご視聴ください。
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テンミニッツ・アカデミー編集部