編集長が語る!講義の見どころ
ウクライナ侵略の背景を読み解く(特集&島田晴雄先生)【テンミニッツTV】
2022/03/01
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
2月24日にロシアがウクライナに侵攻。ウクライナは強力な抵抗を示し、各国もSWIFTからの排除をはじめ、ロシアに対して次々と制裁を科しています。
いまなお情報が錯綜しており、現地の実情が正確につかみきれません。状況はまさに情報戦の様相も呈しており、どの言説を信じていいかも不確かです。そのような情報戦のウラを見破るためにも、今回のロシアによるウクライナ侵略の歴史的背景やその思惑を理解しておくことは必要不可欠でしょう。
いつもは金曜日に「特集」をお報せしていますが、今回は緊急特集として火曜日に「ウクライナ侵略特集」を紹介いたします。
■緊急特集:ウクライナ侵略の背景を読み解く
はたしてプーチンはいったい何を考えているのか? 諸外国の思惑とは? ウクライナの歴史や宗教の背景は? 様相を変えた最新の軍事戦術の脅威とは? ウクライナ侵略の背景を多面的に読み解きます。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=157&referer=push_mm_feat
島田晴雄:プーチンの安全保障と外交戦略の特徴
島田晴雄:ロシアの経済と国際戦略、日本との関係を整理する
山内昌之:複雑なウクライナの宗教と民族との関係
中西輝政:プーチンが模索しているロシア外交の「息継ぎ戦略」とは
曽根泰教:永続権力が狙い?…ロシア大統領選挙は2024年が重要
小野寺五典:知らないうちに侵略される「ハイブリッド戦争」の恐怖
■講座のみどころ:知られざるロシアの内実とは?(島田晴雄先生)
本日、特集からピックアップする講座は、島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授)がプーチンとロシアの歴史と戦略についてお話しくださったものです。
この講座は、2018年に島田先生がロシアを訪問されて、実際に見聞してこられたことをベースとしていますので、とてもわかりやすく、ビビッドな内容です。少し前の講義ですから、もちろん現下の緊迫状況とは雰囲気が異なることは否めませんが、ロシアの歴史的背景や状況、そしてプーチンの思惑を理解するのに非常に有益です。
◆島田晴雄:知られざるロシアの情と理(全6話)
(1)日本との歴史的関係
ロシアの経済と国際戦略、日本との関係を整理する
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2350&referer=push_mm_rcm1
◆島田晴雄:知られざるロシアの情と理(全6話)
(4)プーチン政権の外交戦略
プーチンの安全保障と外交戦略の特徴
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2378&referer=push_mm_rcm3
第1話で島田先生は、日本とロシアの歴史的交流をご紹介くださいます。ソ連時代に、国際共産主義運動(コミンテルン)を展開して、日本にも影響を与えるとともに、中国などの共産主義国家を誕生させ、冷戦構造が生まれたこと。その一方で、日本人はロシア文化を愛したことなどです。
第2話では、ソ連が崩壊した理由と、プーチン統治の特徴をお話しくださいます。プーチンの統治の特徴は興味深いものです。
1つ目は、地方の実力者の影響力の活用。地方の県知事の影響力を活用して権力を維持しているといいます。
2つ目は、エネルギー産業の扱い。ロシア経済を支えるのはエネルギーだけですが、エネルギー価格の上昇によって国民の支持を取りつけるとともに、エネルギー産業の利権を側近に渡すことによって、権力の座を固めているのです。
3つ目は、巧みな国民大衆へのアピールです。プーチンがいかにロシア国民の支持を集めているかが、よく伝わってきます。
このご分析は、プーチンの政治がいかなるものかを考えるうえで、まさに基盤とすべきものであるように思います。
第3話では、2018年にはじまったプーチン政権第4期の政策的課題をお話しくださいます。打開の難しいロシア経済の前途が理解できます。
そして、今般のウクライナ紛争を考えるために必見なのは、プーチンの安全保障と外交戦略を解説くださった第4話です。プーチンの論理が見えてきますので、時間がない方は、第4話だけをご覧になっても良いかもしれません。
島田先生はフィナンシャルタイムズの論説を引用されます。
《ロシアに行くと不思議の国の鏡に入ったようだ。前後左右が逆に見える。大小が逆になる。つまり、西側の論理と全く逆の論理がロシアの中では当然のことのように信じられている》
つまり、われわれはプーチンを強権的で、敵対者の暗殺や、隣国への侵略も辞さない人物だと見ていますが、プーチンは逆に西側を政治的にも思想的にも脅威だと考えているというのです。どのような論理かは、ぜひ講座第4話をご覧ください。
さらに、島田先生が語る「チェチェンの移動大使とのエピソード」は戦慄すべきものがあります。チェチェン共和国に対してロシアが攻撃をしかけていた1990年代末から2000年代初頭にかけて、チェチェンの移動大使(実は軍人たち)が各国にロシアの脅威を訴え、チェチェンへの支持を訴えていた。しかし、10年後に聞いてみたら、「あの(移動大使の)方々は、全員殺されました」といわれた、というのですが……。
また、ジョージア(グルジア)やウクライナの「カラー革命」と、それに対するロシアの認識と戦略についてもご言及いただいています。
ジョージアで「バラ革命」(当時のシュワルナゼ大統領が失脚して、改革派のサアカシュヴィリが大統領になった事件)が起きたのが2003年。ウクライナで「オレンジ革命」(親西側派のユシチェンコ氏と親ロシア派のヤヌコーヴィチ氏が争い、ユシチェンコ氏が大統領になった事件)が起きたのが2004年です。
その後、プーチンのロシアはグルジアにも侵攻していますし(2008年)、ウクライナに属していたクリミアも併合します(2014年)。そして今般のウクライナ紛争につながるわけですが、このロシアの動きが「いかに問題か」を、パリ不戦条約との関連でお話しいただいています。ここは日本人としても、しっかりと押さえておくべきところでしょう。
続く第5話では、中東戦略と、欧米の選挙への介入の実態を、第6話では日本の北方領土問題の歴史的背景と、日本の採るべき道についてお話しいただいています。
ロシアの現状や思惑について、重要な知見を得ることができる講座です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:ウクライナ侵略の背景を読み解く
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=157&referer=push_mm_feat
◆島田晴雄:知られざるロシアの情と理(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2350&referer=push_mm_rcm2
◆島田晴雄:知られざるロシアの情と理(4)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2378&referer=push_mm_rcm4
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☆今週のひと言メッセージ
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《理性に感性を従属させるから、人間の目から輝きが消えていく》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=472&referer=push_mm_hitokoto
安住安楽こそ悪の根源‥平和と向き合うため若者と旅した処
行徳哲男(日本BE研究所 所長)
われわれ現代人は、知性や理性に眩惑されがちです。皆、論理や科学、合理性に惑わされているのですね。「理性的」とか「知性派」という言葉は耳障りがいいので、惑わされるのです。
しかし、理性というのはしょせん「作為」です。理性は「技術」でしかありません。つまり、理性というのは、ある意味で「嘘をつける」ということです。そして、感性は嘘がつけません。
ところが、われわれ現代人は「理性だ、知性だ」と、そちらだけを磨き過ぎることで価値を逆転してしまっているのです。理性に感性を従属させるから、人間の目から輝きが消えていく。気力が失われていくのです。
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今週の人気講義
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デカルトはなぜ「学ぶ人は一人にしては駄目」と言ったのか
津崎良典(筑波大学人文社会系准教授)
五十嵐沙千子(筑波大学人文社会科学研究科准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3999&referer=push_mm_rank
ステークホルダー資本主義、今と昔で何が違うのか
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4342&referer=push_mm_rank
源実朝の悲劇で誕生した尼将軍と東国武士による幕府政権
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4323&referer=push_mm_rank
10分でわかる「中国共産党と人権問題」
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4296&referer=push_mm_rank
「人生を幸福にする発想法」で考えると「人間は猪八戒だ」
出口治明(立命館アジア太平洋大学<APU>学長/学校法人立命館副総長・理事)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3525&referer=push_mm_rank
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
今回の特集でも取り上げましたロシアによるウクライナ侵攻問題、このあと、どうなっていくのでしょうか。
テンミニッツTVでは以前から何度も取り上げてきたウクライナ問題ですが、こういった状況になると改めてこの問題の重大性、深刻さを痛感する今日この頃です。
今後も状況を見ながらこの問題について考えていくため、新たな講義が用意できましたら、お伝えしたいと思います。
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