編集長が語る!講義の見どころ
日本仏教が驚くほどよくわかる(特集&頼住光子先生)【テンミニッツTV】

2022/03/04

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

日本人の人生観とはどのようなものだったのか。これまで、日本人はいかなる思想や哲学を培ってきたのか。そのことを考えるうえで、欠かすことができないのが、日本仏教に対する理解でしょう。

加えて、日本の古寺名刹(めいさつ)を訪れたり、仏像や仏画などの仏教美術を鑑賞したりする際にも、日本仏教も名僧が何を語ったのかを知っておくと、愉しみにより深みが増してきます。

皆さまご案内のように、現在、テンミニッツTVでは、頼住光子先生(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授)による「【入門】日本仏教の名僧・名著」講座の配信が進んでいます。これまで「総論、聖徳太子、最澄、空海、源信、法然、明恵」と進んできましたが、いよいよ親鸞(しんらん)編の配信がスタートしました。

■本日開始の特集:日本仏教が驚くほどよくわかる

名僧の生涯を概観し、さらに彼ら自身が書いた文章を熟読玩味(じゅくどくがんみ)していく、頼住先生の講座シリーズ。何しろ仏教の用語は漢字からして難しいですから、とっつきにくく感じてしまうかもしれません。

しかし、テンミニッツTVの良いところは、画面で文章を見ながら先生のお話を聞けるところ。そして、いくらでも巻き戻したり、繰り返したりして聞けることです。

頼住先生は、とてもわかりやすく「本当に大切なこと」をお伝えくださいますので、最初は「素読」よろしく、原文はさらりと聞き流したとしても、「名僧のこころ」が間違いなく伝わってくること、うけあいです。

日本仏教関連の名作講座とともに、ぜひご視聴ください。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=158&referer=push_mm_feat

・頼住光子:親鸞が「非僧非俗」と名乗った真意と妻・恵信尼の影響

・頼住光子:法然を批判した明恵が大切にした「あるべきようは」とは?

・頼住光子:「観想念仏」から「口称念仏」へ、法然の革命性に迫る

・頼住光子:末法直前に法華一乗思想と浄土信仰を両立した源信の教え

・頼住光子:空海と最澄の関係に大きな影響を与えた「密教」の位置づけ

・頼住光子:天台宗の開祖・最澄が残した最大の成果は「大乗戒」の確立

・頼住光子:聖徳太子が仏教を国づくりに取り入れた目的とは

・頼住光子:「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる

・橋爪大三郎:10分でわかる「日本の宗教」

・大野玄妙:仏国土は水平的世界だが「浄土に登る」―日本的仏教観


■講座のみどころ:親鸞(しんらん)は何を説いたのか(頼住光子先生)

本日、ピックアップする講座は、親鸞について頼住光子先生がお話しくださったものです。

よく知られているように、親鸞(1173年~1263年)は浄土真宗の宗祖とされます。浄土真宗といえば「南無阿弥陀仏」の念仏ですが、親鸞は、その念仏について、哲学的な思索を深めました。まさに大乗仏教の核心に迫る議論が展開されます。

◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編
(1)親鸞と法然の違い
親鸞が「非僧非俗」と名乗った真意と妻・恵信尼の影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4378&referer=push_mm_rcm1

まず頼住先生は、同じ浄土教の考えでも、源信→法然→親鸞とどのように変わっていったかを教えてくださいます。

源信は「観相念仏(念仏といっても「南無阿弥陀仏」と唱えるだけではなく、仏様の姿を思い浮かべるような修行も伴うもの)」を中心としていて、そこからさらに法然は「専修念仏(南無阿弥陀仏と唱えるだけでいい)」へと教えを突きつめましたが、親鸞はその法然の教えを理論化していきます。

法然は、実践的に教えていくことを重んじてあまり自分自身で文章を遺しませんでしたが、親鸞は『教行信証(顕浄土真実教行証文類)』など多くの書を著していったのです。

この3人の比較は、頼住先生の源信編、法然編も参照できますので、さらに理解を深めることができるでしょう。

また親鸞の場合、僧侶でありながら恵信尼という女性と結婚をしたことを指摘されることも多いですが、その背景や意味についても頼住先生は教えてくださいます。親鸞が置かれた「非僧非俗」という地位によるものということですが、これについては講義本編をご覧ください。

この「親鸞編」の白眉は、何といっても、親鸞の考え方をとてもわかりやすく解説くださった第2話以降でしょう。頼住先生は、『唯信鈔文意』や『歎異抄』『自然法爾章』などを引きながら、教えてくださいます。

まず、頼住先生のご説明で印象深いのは、親鸞が「阿弥陀仏は無限の光(アミターバ)である」「阿弥陀仏は無限の命(アミユータス)である」といっているというご指摘でしょう。

仏様は、「方便」として色々な姿で現われるが、真実の阿弥陀仏の姿は形も色もなく、光なのだといいます。世界全体が命や光に満たされていて、それが一つのかたちを取るときに阿弥陀仏になったり、念仏を唱える自分になったりする、というのです。

また、大乗仏教で重要な「空-縁起」の考え方についても、とてもわかりやすくご説明くださいます。

「空」というと、字面から「空っぽ」「何もない」と誤解されることもあるが、そうではない。「関係の中で存在している」ということで、それ自体として存在しているのではないということ。つまり、絶対的な自分というものがあるのではなく、他者との関係の中で常に移り変わっていく相対的な存在が自分であるということです。

このあたりは、大乗仏教の根幹的な部分になりますので、ぜひ講座本編をご覧ください。

親鸞は、そのような大乗仏教の根幹の中に、念仏の教えを置き直して、体系化したのだと、頼住先生はおっしゃいます。親鸞についても、仏教についても、グッと理解が深まる講座です。


(※アドレス再掲)
◆特集:日本仏教が驚くほどよくわかる
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=158&referer=push_mm_feat

◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4378&referer=push_mm_rcm2

※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体(件名、本文いずれも)


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「ポリティア」についての問題です。ではレッツビギン。

(   )は『ポリティア』という本で、2段階の教育論を書いています。そこで議論されている教育は、まず幼い時期は、言われたことを真似することで、自分がまさにそうできるような人間になるというものです。それがある段階に達したところからは、哲学的な対話を始めなくてはなりません。

さて(   )には誰が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3224&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、今週火曜日に紹介した緊急特集「ウクライナ侵略の背景を読み解く」ですが、非常に多くの皆さまにご視聴いただいております。皆さまの関心の高さを感じるとともに、改めてこの問題の重大さに気づかされた次第です。

そこで本日はその特集のなかから以下のシリーズ講義を紹介いたします。

山内昌之:ウクライナの宗教と民族の歴史(全4話)
(1)四大宗派併存の歴史と背景
複雑なウクライナの宗教と民族との関係
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=196&referer=push_mm_edt

山内先生いわく「ウクライナ問題を理解する上でも、実はかなり歴史的に複雑なウクライナの宗教と民族との関係を理解する必要がある」ということで、この機会にぜひシリーズを通してご視聴ください。