編集長が語る!講義の見どころ
芸術の秋、クラシック音楽で世界史を学ぶ/片山杜秀先生【テンミニッツTV】

2022/10/11

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

10月に入って、急に肌寒い日が続きました。まだまだ気温は寒暖いったりきたりですが、気づけば急速に冬に突入してしまいそうです。

近年、春と秋がやけに短く感じますが、それでもせっかくの秋には、存分に秋を満喫したいもの。本日は、「芸術の秋」にふさわしいクラシック講座を紹介いたします。

今回紹介するのは、片山杜秀先生(慶應義塾大学教授)にクラシック音楽と西洋史の流れをみごとにご解説いただいた講義です。

この片山先生の講義は、「音楽にこそ、時代は色濃く反映する」という視点から、ヨーロッパ史の流れの中にクラシック音楽を位置づけていく、とても興味深いものです。

片山杜秀先生は、近代日本の思想と文化がご専門で、テンミニッツTVでもそのジャンルの講義を多数お願いしておりますが、一方で、若いころからクラシック音楽評論家としてもご活躍です。

ご著書の『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテスパブリッシング)でサントリー学芸賞と吉田秀和賞をダブル受賞されていますし、長年、NHKのFM番組「クラシックの迷宮」(土曜日夜9時)でパーソナリティーも務められ、とても意欲的な番組を毎週放送しておられます。

本講座は、クラシック音楽を詳しくご存じない方でも、世界史の知識から、イメージを膨らませていただける名講義です。

昨今では、YouTubeなどの動画を検索すると、クラシックの名曲は「よりどりみどり」です。クラシック好きも、そうでない方も、本講座で気になった作曲家に出会ったら、調べて聴いてみつつ、世界の歴史に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか? 今年の秋の、思い出深い時間になるかもしれません。

◆片山杜秀:クラシックで学ぶ世界史(全13話)
(1)時代を映す音楽とキリスト教
なぜ音楽は時代を色濃く反映するものなのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3007&referer=push_mm_rcm1

片山先生の講義はどれも、非常に幅広い「知」をどんどんと教えてくださる圧倒的なものです。しかも、このクラシックと世界史の講義内容は、音楽が教会の中にあった時代から、ルネサンス、バロック、そしてクラシックの有名作曲家の時代を経て、20世紀、さらに現代の考察まで流れ込みます。

そもそも、どうして「音楽にこそ、時代が色濃く反映する」のか。

片山先生は、「多くの人によって演奏され、聴く人から支持されないと、音楽はなかなか歴史に残りにくいものだから」とおっしゃいます。

無名の人が、どんなに素晴らしい曲を作曲して楽譜に書いていたとしても、それだけでは後世から再評価されるのは稀なことです(文学や絵画などでは、死後に評価されることは、ままありますが)。

つまり、同時代の精神を掴みとり、当時の人々の共感を得た音楽が、歴史にも残りやすいということになるのです。

では、なぜ大作曲家たちは、その時代に人気を博したのでしょうか。彼らが描き出した時代精神とは、いかなるものだったのでしょうか。

たとえば、モーツァルトが生きた時代は、「不安の時代」であり、「就職氷河期」だったといいます。それまでの作曲家は、だいたい教会や封建領主によって雇われていました。しかし、大きな時代の流れのなかで、その構図が大きく変わっていくのです。

モーツァルトの没年が1791年と知ると、なるほどと膝を打つ方も多いのではないでしょうか。フランス革命が始まる年の2年後です。

一方、モーツァルトの後に一世を風靡するベートーヴェンは、やはりフランス革命からナポレオン戦争の時代のど真ん中で活躍した作曲家です。しかも、その時代精神をみごとに体現していました。

交響曲第3番「英雄」はまさにナポレオンの皇帝就任と同時期。「第九」交響曲も、ナポレオン戦争の終結から10年後の曲です。

片山先生は、「バスティーユ監獄襲撃やナポレオンの国民軍のような『殺到』。とにかく何か秩序からはみ出すような余剰というか、騒音的・雑音的なものを含めたものが殺到してくるテンション」をベートーヴェンの曲は内包しているとおっしゃいます。

それが、どのようなものかは、ぜひ講義をご覧ください。

どの作曲家が、どのような時代精神を反映しているのかについて、片山先生は縦横無尽にわかりやすく解説くださいます。各話のタイトルを一部ご紹介するだけでも、講義の雰囲気がお伝えできるのではないでしょうか。

●ルネサンスからバロックへ―教養としての「音楽」へと変化

●ヘンデルがロンドンで成功を収めた要因とは?

●モーツァルトの生きた時代は「就職氷河期」

●ベートーヴェンが市民革命という動乱期に探求した音楽とは

●ヨーロッパ中が感染したワーグナーの凄さ

●マーラーの交響曲はなぜそれほどまでに愛されているのか

●ドビュッシーやチャイコフスキーがつくった「国のイメージ」

●20世紀のクラシック音楽が向かった2つの方向とは

●多様化の時代とクラシック…YOSHIKIのピアノ協奏曲

やはり、物事についての知を深めていくためには、大きな流れや、さまざまな事象との連関から理解していくのが一番ではないでしょうか。その意味でも、この片山先生の講義は、まさに絶品です。

音楽好きの方にも、歴史好きの方にも、そして両方の教養を身につけたい方にも、お勧めできる講義です。ぜひ、ご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆片山杜秀:クラシックで学ぶ世界史(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3007&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《多様性の創出こそが大事》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_hitokoto

なぜ雄と雌はいるのか、LGBTについて進化生物学から考える
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)

性が始まったのは増えることとは関係なく、自分の遺伝子の組成を変えるために、よその個体と混ぜ返しをするというのが今の定説です。
つまり、多様性の創出こそが大事だったのです。自分の遺伝子をそのまま複製して、次々増えていくのは良いですが、遺伝子の状態が全く同じものがずっといるだけでは、いろいろなことに対応できません。


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今週の人気講義
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東大生に伝えた、教養にとって大事な「3つのキーワード」
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長)
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4649&referer=push_mm_rank

「VUCAの時代」の鍵はマルチステージへのライフシフト
徳岡晃一郎(株式会社ライフシフト 代表取締役会長CEO/多摩大学大学院教授・学長特別補佐)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4602&referer=push_mm_rank

経済論理を無視…岸田内閣の分配政策を検証する
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4626&referer=push_mm_rank

政所とは?侍所とは?…鎌倉幕府の組織と北条義時の執権就任
坂井孝一(創価大学文学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4632&referer=push_mm_rank

スペースXを見ればわかる、ものづくりのすごい特徴
桑原晃弥(経済・経営ジャーナリスト)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4598&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、昨日(10月10日)より新講師である夫馬賢治先生(株式会社ニューラルCEO/経営・金融コンサルタント/信州大学特任教授)のシリーズ講義が始まりました。

◆夫馬賢治:武器としての「カーボンニュートラル経営」 (全4話)
(1)カーボンニュートラルと日本の実状
10分でわかる「カーボンニュートラル経営」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4658&referer=push_mm_edt

こちらは、近年注目を集めている「カーボンニュートラル」経営について、日本と海外の状況を紹介しながら、その本質に迫る貴重な講義です。
カーボンニュートラルは今、まさに世界的な取り組みとなっており、規模の大小を問わずどの企業にも関係する重要なテーマです。
毎週月曜日配信で全4話の予定で、2話目からは具体的に興味深い取り組みをしている企業の事例を紹介していきます。ぜひ続けてご視聴ください。