編集長が語る!講義の見どころ
認知バイアス~罠に陥らないための知恵/特集&鈴木宏昭先生【テンミニッツTV】
2022/10/14
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です
自分は正しく認知しているはず。正しく思考しているはず……。そう思っていたのに、知らず知らずのうちに、何らかの「バイアス(偏り、偏向)」にとらわれてしまっている。
そのようなことは、誰にもあることです。人間である以上、それは不可避のこと。むしろ、どのようなバイアスにとらわれてしまうのかを知っておけば、対処のしようもあるというものです。
■本日開始の特集:認知や思考のバイアス~罠に陥らないために
ひらめける人と、ひらめけない人は何が違うのか。壁にぶつかったときに乗り越えられる人とそうでない人の違いは。1つの考えにとらわれてしまうか、とらわれないか。創造性を発揮できるか、できないか……。認知や思考のバイアスの罠(わな)にどう対応していけばいいのか。そのための方法論、思考の仕組みを知ることで、イメージの翼はじわじわ広がっていきます。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=185&referer=push_mm_feat
・鈴木宏昭:誰もが陥る「認知バイアス」とは何か
・佐宗邦威:妄想から始まる「ビジョンドリブン」で創造的な社会をつくる
・曽根泰教:「先端を伸ばす」と「全体を解決する」ではビジョンが違う
・為末大:「自分らしさ」の発見は、型にはまってみることから始まる
・為末大:限界か、スランプか――伸び悩んだときに見るポイント
・楠木建:『逆・タイムマシン経営論』が訴える「同時代性の罠」とは
■講座のみどころ:誰もが陥る「認知バイアス」とは?(鈴木宏昭先生)
さて、そもそも「認知バイアス」とはいかなるものなのでしょうか。本日は10月11日より配信がスタートした、鈴木宏昭先生(青山学院大学教育人間科学部教育学科教授)の講座を紹介いたします。
鈴木先生は、まず第1話で「認知」と「バイアス」についてご解説くださった後、第2話~4話で認知バイアスのうち「創造」するときのバイアスについて、第5話~7話で、他者との「共同」の折のバイアスについてお話しくださいます。
ひらめいたり、創造したりするときに陥りがちな罠とは? また、他者との交わりのなかでの罠とは? 誰しも興味深いところではないでしょうか。
◆鈴木宏昭:認知バイアス~その仕組みと可能性(全7話)
(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」とは何か
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4663&referer=push_mm_rcm1
まず「認知」について、鈴木先生は「雷」が鳴っているケースを例に挙げて解説くださいます。「認知」とは、知覚、記憶、概念化、思考、言語コミュニケーション、共同など多岐にわたるプロセスの結果ということになりますが、これについては、先生の図でのご解説がわかりやすいので、ぜひ講座本編をご覧ください。
そして「バイアス(歪み、偏り)」は、この認知における「知覚、記憶、概念、思考、創造、言語、共同」などのプロセスすべてにおいて発生するのだといいます。
そのように「認知バイアス」の概観を教えてくださったうえで、いよいよ「創造」「共同」についての具体的な解説となります。
創造について、とても興味深い実験をご紹介くださいます。いくつかの木片を組み合わせて「T字型」をつくるパズル(旅館などでやった経験がある方もいらっしゃるかもしれません)。さらに空欄をうめて二字熟語などをつくる問題です(これはクイズ番組などでもおなじみです)。
これらを解くには、いずれも「ひらめき」が必要ですが、逆に考えると「ひらめかない理由」は何なのでしょうか。
その理由の1つが「制約」だといいます。
つまり、人間は周りのすべてをいちいち検証するわけにはいきません。そこで、特定のものにスポットライトを当てて決め打ちをするところがある。それを「制約」というのですが、逆に、この制約の罠にはまってしまうと、「ひらめけなくなってしまう」のです。
では、どうすればその「制約」を外せるのか。
実はわれわれは「じわじわ」とひらめいているのだといいます。その1つの事例としてご紹介くださるのが俵万智さんの有名な短歌です。
《「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日》
この歌の最初のかたちは、まったく違うものでした。そこから、じわじわと推敲を重ねて完成させたのですが、その思考プロセスはどのようなものだったのか。そこはぜひ第3話をご覧ください。
それらをご紹介くださったうえで、鈴木先生はこうおっしゃいます。
《イノベーションというのは、そんな簡単に起こせない。ひらめくためにはたくさん失敗していかなければいけない。世の天才と呼ばれる人たちでも、生涯に1度程度しかイノベーションは起こしていない》
《創造やイノベーションは、サーフィンのようなものだ。どんなに運動能力が高い人でも、琵琶湖のようにほとんど波が来ないところでは、能力を発揮できない。だが、大した能力もない人がビッグウェーブが来る浜辺に行ったら、ケガをするだけ。つまり、才能と環境の出会いが重要だ》
まことに、うなずかされる話です。ぜひ「じわじわ」ひらめく過程について、学んでおきたいところです。
続く、第5話~第7話では、他者との「共同」の折のバイアスについてご解説いただきます。
鈴木先生は大学から近いこともあって、有名な渋谷のスクランブル交差点をよく使われるそうですが、なぜ大量の人間が多方向に歩き出して、衝突したり混乱したりしないのか……。
意図せずに行なわれているこの事例も、「共同」の持つパワーだといいます。
さらに、「共同」ということを考える場合、実は「ブレーンストーミング(ブレスト)」は、アイデア創出を低下させているという実験結果があるといいます。
ブレーンストーミングは、「全員がお互いに批判することなく、自由奔放にアイデアを出しあっていく」手法です。なぜ、これがうまく行かないのか。
そこに「共同」がうまくいかない理由も潜んでいるというのですが……。これについては、ぜひ講座の第6話~7話をご覧ください。非常に考えさせられる研究結果です。そして、その解決法については、第7話でご解説いただきます。
この「バイアス」についての知恵の数々は、知っているか知らないかで、まさに大違いです。実験結果の分析なども興味深い講座ですので、ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:認知や思考のバイアス~罠に陥らないために
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=185&referer=push_mm_feat
◆鈴木宏昭:認知バイアス~その仕組みと可能性(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4663&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「アンチエイジング」についての問題です。ではレッツビギン。
アンチエイジングを科学的に分析した場合、今のところ、3つのファクターが活性酸素を減らし、長生きになるといわれています。1つはカロリーを少し減らすことです。2つ目は食事をスキップすることで、( )といいます。日本語だと絶食、あるいはプチ絶食ですね。3つ目は、運動、エクササイズです。
さて( )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2531&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、本日編集長が紹介いたしました認知バイアスについての講義ですが、鈴木宏昭先生が講義のなかでお話ししておりますように、テンミニッツTVご出演のきっかけも以下、鈴木先生の著書でした。
『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』 (鈴木宏昭著、ブルーバックス)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065219515/
この本は今回のシリーズ講義のエッセンスが詰まっていますのでおススメですが、実は以下、鈴木先生の近著も見逃せない一冊です。
『私たちはどう学んでいるのか:創発から見る認知の変化』 (鈴木宏昭著、ちくまプリマー新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/448068431X/
紹介文に《本書は誤った学習観をただし、勉強する前に知っておいて損はない、人間のクセについて書かれた一冊です》とあり、《「学び」の実態を科学的に明らかに》ということで、テンミニッツTVにとっては大変気になる、興味深い一冊ではないでしょうか。
機会があれば改めてご紹介したいと思います。
ではまた次号でお会いいたしましょう。
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