編集長が語る!講義の見どころ
「海の哺乳類」の生き残り作戦/田島木綿子先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/08/05
皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
いよいよ8月になりました。今年の夏はコロナ禍もあって、さかんに「自粛」が要請されるなど、難儀な状況になっています。しかし、このようななかでも、「夏らしいこと」に思いを馳せることは大切なことではないでしょうか。
たとえ、ご家族で海や水族館に行けなくても、ふとした折にお子さんやお孫さんと一緒にテンミニッツTVをご覧になりながら、海の動物の話をするだけでも、きっとかけがえのない夏の思い出の1コマになるはずです。もし、海や水族館に行けた場合には、その場で少しうんちくを傾けたら、必ずやもっと楽しく印象深い機会になることでしょう。
本日は、田島木綿子先生(国立科学博物館・動物研究部・脊椎動物研究グループ研究主幹)に「海の哺乳類」についてご解説いただいた講義を紹介します。数多くの図表や骨格標本を示しながら語りかけていただく本講義は、まさに、「うんちく」としてお話しいただける情報満載です。
◆田島木綿子:「海の哺乳類」の生き残り作戦(全5話)
(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3248&referer=push_mm_rcm1
海の哺乳類は大きく3つにわけられるそうです。1つ目はクジラやイルカなどの「鯨目(鯨偶蹄目)」。2つ目は、アザラシやアシカなどの「鰭脚(ひれあし)目」。3つ目は、ジュゴン、マナティという「海牛目」です。皆さまは、これらの「海棲哺乳類」について、どれほどご存じでしょうか。
たとえば、こんな質問に答えられますか?
(Q):首がどこにあるかわからないイルカと、首の長いキリン。首の骨の個数は、どのくらい違うでしょうか。
勘が良い方はお察しかと思いますが、正解は「どちらも7つ」です。哺乳類には、なぜか哺乳類は首の骨(頸椎)の数が7つという法則があるそうですが、海棲哺乳類もそれに従っているのです。一度は陸上で進化した哺乳類が、再び海に戻って進化していったことを示す証拠の1つでしょう。
本講義で「海棲哺乳類」について、どのようなことがわかるのか。それををお示しするべく、さらにいくつかの「質問」を掲げてみましょう。
(Q):
●鰭脚目はアシカ科とアザラシ科とセイウチ科と3つあります。それぞれの見分け方は何でしょうか。
●尾びれを振って水中で推進力を得る場合、サメは横に振りますが、イルカは縦に振ります。なぜでしょうか。
●マッコウクジラやシャチ、イルカなどの「ハクジラ亜目」は、鼻の穴が1つしかありませんが、なぜでしょうか。
●哺乳類は表情を変える筋肉「表情筋」があるものが多いですが、表情筋の本来の機能とは何でしょうか。
本講義をご覧いただくと、上記の疑問がすべて解消されます。
また、この講義では「海の環境問題」についても考えるきっかけを得られます。たとえば、海棲哺乳類の調査では、海岸に打ち上がって死んだクジラなどを調べることが、よくあるそうです。そのようにして死んだクジラを調べると、肺にたまってしまう寄生虫にやられて死んでしまったものも多い。しかし本来、寄生虫からすれば、宿主が死んでしまうほどに寄生するのは、寄生虫たち自身も死んでしまうことになるので「失敗」です。
にもかかわらず、なぜ、そうなってしまうのか。調べたところ、海を汚染する化学物質(環境汚染物質)と関連性があることがわかってきたそうです。それによって、海棲哺乳類の身体の免疫機能が下がってしまい、普通は死ななくていい病気にかかって死んでしまうのです。
また最近、海のプラスチックゴミの問題も注目されていますが、先生によれば、先生の調査現場では、20年~30年前から、この問題に直面していたそうです。
そのほかにも、海で効果的に生殖活動を行うための生殖器の秘密を絵解きいただいたり、骨や臓器の特徴を写真や標本で学べたりするなど、動物の進化や生態系などについて興味が深まる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆田島木綿子:「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3248&referer=push_mm_rcm2
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3340&referer=push_mm_rank
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2764&referer=push_mm_rank
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「環境・資源(地震)」ジャンルのクイズです。
近年、南海トラフ地震の可能性が取り沙汰されている日本ですが、世界の地震の約〇パーセントが日本付近で起きているそうです。日本の領域が占める面積は、地球の表面積の1パーセント程度ですから、単純計算すると、世界平均の約〇倍の地震が日本付近で起こるということです。さて〇に入る数字は?
答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1194&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。
3週連続で8月特集の話となって恐縮ですが、ぜひご視聴いただきたい渾身の特集なので(もちろん毎月全力投球ですが)、今回もわがままをご容赦いただければ幸いでございます。
さて8月特集のタイトルは「これからの『幸福』の話をしよう」ですが、なかでも今回紹介したいのは、今週の人気講義でもリストアップされている、津崎良典先生と五十嵐沙千子先生の対談講義シリーズ「『幸福とは何か』を考えてみよう」。実は、この対談講義、筑波大学の「ソクラテス・サンバ・カフェ」(通称「哲学カフェ」)がベースになっています。
どういうことかというと、筑波大学では、「家族とは何か」「老いについて」「なぜ勉強しなければならないのか」「恋愛と結婚」「スポーツとはなにか」など身近なテーマについて、哲学者を交えて自由に語り合う場として「ソクラテス・サンバ・カフェ」が毎月開かれています。テンミニッツTVでは、そのカフェを主催する先生方の一人でもある津崎先生と五十嵐先生の両先生に、まさにそのカフェの雰囲気そのまま、「幸福とは何か」について語り合っていただいたというわけです。
今回、お二人の話を聴いていて、これはあくまで個人的な意見(感想)ですが、話し方がとても柔らかく聞きやすいうえに、「これが教養というものか」とビンビン感じるものが随所に伝わってきて、続きがもっと聴きたくなりました。この「もっと聴きたくなる」(あるいは「ワクワク」)というこころの揺れも「幸福」なのか、と一人で納得して笑ってしまいました。
ということで、今後も毎週金曜日配信で全9話配信となりますので、ぜひぜひご視聴ください。
<「ソクラテス・サンバ・カフェ」について詳しく知りたい方はこちらから確認できます>
http://tetsugaku-cafe.com/
<「これからの「幸福」の話をしよう」特集はこちらからご視聴いただけます>
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=99&referer=push_mm_edt
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