編集長が語る!講義の見どころ
戦争と平和の国際政治…危機にいかに対処するか/小原雅博先生【テンミニッツTV】

2023/01/17

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

先週、「学びの機能」の新設に向けて《サービス向上のためのご意見アンケート》を開始しましたが、投票締切りが「本日(1月17日・火曜)」までです。最短1~3分でお答えいただけますので、ご投票がまだの方は、ぜひよろしくお願いいたします。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf23GY-gw4AH9tymEIJvPyQZD1pNZV8btLPH2I1xKn7D_kv8w/viewform?referer=push_mm_new_function

(※テンミニッツTVのトップページにも投票ページへのリンクを置いています)。

さて、1月13日にワシントンで行なわれた日米首脳会談では、日本とアメリカ相互の国家安全保障戦略への全面的な支持と、日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが表明されました。また、中国をめぐる諸課題に、引き続き日米で緊密に連携することで一致。日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく決意が示されました。

東アジアの国際環境が、ますます厳しさを増していることが如実に伝わってきます。果たして、これからどうなってしまうか。日本はどうすべきなのか。

本日は、そのことを考えるうえで大いに参考になる小原雅博先生(東京大学名誉教授)の講座を紹介いたします。

この講座は、2022年12月1日に紀伊國屋書店新宿本店「アカデミック・ラウンジ」で行なわれた講演を講義化したものです。まさに直近の情勢分析をベースにしつつ、国際政治学に基づいてそれをどのように理解すべきか、さらに日本として取るべき方策とは何かを率直にお話しいただきました。

◆小原雅博:戦争と平和の国際政治(全4話)
(1)「合理性の罠」とインテリジェンス
国際政治の要諦は戦略とインテリジェンス
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4784&referer=push_mm_rcm1

この講座は、小原先生のご著書『戦争と平和の国際政治』(ちくま新書)の内容をもとにしたものです。この本は、「国際情勢分析」と「国政政治学の知見」ががっぷり四つになっていて、それらの両面を理解することのできる一冊です。

まず第1話で小原先生は、「ロシアによるウクライナ侵略において、なぜ『専門家』の多くが読み誤ったのか」についてお話しくださいます。

実際に、2022年2月24日のロシア侵攻の直前、「プーチンは戦争をしないはずだ」と考えた専門家が多くいました。なぜ、そのように判断してしまったのでしょうか。

小原先生がここで指摘するのは「合理性の罠」。すなわち、「合理的に判断すれば」と考えて読み誤ってしまうことです。

これに対処するためには、「相手の合理性と、自分の合理性は異なるのではないか」ということを、よくよく考えなければならないと、小原先生は強調します。では、どうすれば「相手の合理性」を理解できるのか。

その答えとして小原先生が挙げるのが、国際政治の2つの要諦、すなわち「戦略」と「インテリジェンス」です。インテリジェンスについて、小原先生はつぎのように指摘します。

《情報をたくさん持っていても、それがある行動に移るような、行動を決定するような情報でない限りはあまり意味がないのです。つまり、インテリジェンスはある種の政策に直結するような情報、生の情報にそれなりの評価・分析を加えることによって、それに基づいて政策を決めていくという意味で非常に重要なのです》

今般のロシアの例でいえば、プーチン大統領がどのような人間であるかを知り、その心の中にどれだけ迫れるか。プーチン大統領を取り巻く環境がどうなっているかを、どれだけ把握できるか。さらに地政学的要因、地理的要因を歴史などもひもときながら、いかに読み切れるか。そのようなことが重要になるのです。

それぞれの詳細は、ぜひ講座本編(第1話)をご覧ください。

第2話では、台湾危機について分析がなされます。ロシアによるウクライナ侵略と、台湾をめぐる情勢での相違点はどこか。ウクライナ情勢は、習近平主席にどのような影響を与えているのか。中国共産党は台湾の政治や経済に手を突っ込むことで「平和統一」することも含めて手を打っているが、どのような場合に軍事侵攻に踏み切ることになるのか。

この点についての小原先生の指摘で注目されるのは、「中国の内政問題」です。さまざまな矛盾が露呈して、「国家の危機」(中国共産党の危機)につながる問題が噴出したらどうなるのか。

習近平主席にとっての「合理性」がどこにあるのかを読み切る場合に、このことは死活的に重要な課題となるはずです。

ここで小原先生が問題提起されるのが「国家と社会の関係」です。

いまの中国は「国家」としては非常に強い。だが「社会」はどうか。一人ひとりの人権や自由が抑圧されるかたちでは「社会」は非常に息苦しくなり、活力も失われる。そのようなところで、本当に「国家」が持続性のある発展を続けられるのか。現在の中国で散見される「不満の噴出」は、「国家と社会のバランス」が崩れていることの表れではないか。

国際政治は「パワー」と「利益」と「価値(正義)」の3つの要素で動いていきます。通常、えてして「パワー」と「利益」だけで見てしまいがちでもありますが、「国家と社会の関係」を考えると「価値(正義)」もとても重要なファクターになってくる……。この観点も、まことに重要でしょう。

さらに小原先生は第4話で、「物理学などでは素人談義はできないが、国際政治の場合は床屋政談ができてしまう」ことを指摘されます。それゆえ、ときには「陰謀論」のような議論を信じてしまうことも起きてしまいます。

では、どうすれば良いのか?

その答えについては、ぜひ講座本編(第4話)をご参照ください。きわめて真っ正面からの答えですが、しかし、いまこそとても大切なことだと、しみじみ実感できます。

危機に直面しつつあるときにこそ、本当に大切なことをしっかり学び、考えたいものです。ぜひ本講座をご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆小原雅博:戦争と平和の国際政治(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4784&referer=push_mm_rcm2

◆サービス向上のためのご意見アンケート(2023年1月)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf23GY-gw4AH9tymEIJvPyQZD1pNZV8btLPH2I1xKn7D_kv8w/viewform?referer=push_mm_new_function


----------------------------------------
☆今週のひと言メッセージ
----------------------------------------

《創造やイノベーションというのはサーフィンのようなもの》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4666&referer=push_mm_hitokoto

鍵は“失敗”にあり。ひらめく人とひらめかない人の違い
鈴木宏昭(青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授/博士(教育学))

創造やイノベーションというのはサーフィンのようなものだということです。つまり、どんなに運動能力、サーフィンの能力が高い人でも、その人が(仮に)琵琶湖にしか行かなかったら、琵琶湖にはほとんど波が来ませんから、その能力は発揮できません。なので、ビッグウェーブが来るハワイやポルトガルの先などに行かなければ、その能力は生かせないわけです。
一方で、全然何もたいした能力のない人がそういうところに行ってサーフィンをやれば、単にケガをするだけです。なので、(重要なのは)その才能と環境との出会いです。


----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎(社会学者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4762&referer=push_mm_rank

太原雪斎とはどんな人物で、竹千代に何を教えたのか
小和田哲男(静岡大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4757&referer=push_mm_rank

多民族の「モンゴル帝国」を築いたチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子(公益財団法人東洋文庫研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4750&referer=push_mm_rank

寅さんも水戸黄門も…「ほかひびと」が伝承した貴種流離譚
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4773&referer=push_mm_rank

食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4779&referer=push_mm_rank


----------------------------------------
編集後記
----------------------------------------

皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、本日は来月(2月)のおすすめプログラムについて、プログラムガイドよりも先に紹介いたします。
2月に配信を予定している特集と講義は以下になります。

■常識を劇的に変える「科学技術」

竹内昌治:食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
廣瀬通孝:10分でわかる「メタバースとVRの関係」
武田俊太郎:10分でわかる「量子コンピュータ」

■世界経済は本当はどう動くのか?

田中琢二:世界経済はどう動くのか…コロナ禍とIMF
伊藤元重:「グリーンディール」にみる気候変動対策の経済的価値
小原雅博:世界が抱える「3つの危機」と気候変動の深刻な関係

<2月の配信講義ピックアップ>

2月1日(水)配信予定:
柿埜真吾:大恐慌とケインズ…様々な恐慌克服の「真実」を探る

2月3日(金)配信予定:
橋爪大三郎:法の支配があるから自由がある…信仰の自由と政治の基本

このほかにも気になる特集、講義が盛りだくさんです。ご期待ください。

なお、今月(1月)の配信予定は以下から確認できます。

<今後の配信予定>
https://10mtv.jp/pc/content/release_schedule.php?referer=push_mm_new_function


最後に。
毎月発行している「プログラムガイド」の無料郵送についてお伝えいたします。

毎月20日までにお申し込みいただければ、翌月より「プログラムガイド」を毎月郵送いたします。
ご希望の方でお申し込みがまだという会員の方は、いますぐ以下をチェックください。

<プログラムガイド無料郵送のご案内>
https://10mtv.jp/program_guide.php?referer=push_mm_new_function