編集長が語る!講義の見どころ
歴史に学ぶ日本の危機突破戦略/特集&山内昌之先生【テンミニッツTV】
2023/03/03
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
「教養としての歴史」を学ぶ意味は、どこにあるでしょうか。大切なのは、歴史には「教訓が満ちあふれている」ことでしょう。
とりわけ、大きな危機に直面して、先人たちがいかに悩み、いかに熟慮し、いかに乗り越えていったかは、現代を生きるわれわれにとっても、かけがえのないモデルケースとなります。
もちろん、危機に臨んで、大失敗してしまう歴史も山ほどあります。しかし、それらの事例をひもときつつ、「自分だったらどうしただろうか」と考えていくなかで、無限の学びを得ることができます。
日本もこれまで、幾度もの大きな危機に直面してきました。多くの場合、果断に自己改革を行なって乗り切ってきましたが、失敗含みだったことも……。しかし、いずれも「貴重なヒント」です。
世界の、そして東アジアの安全保障の危機が叫ばれるいまこそ、歴史をひもときましょう。
■本日の特集:歴史に学ぶ日本の危機突破戦略
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=194&referer=push_mm_feat
・山内昌之:異国が乱れるときは…徳川家康に学ぶ「国家安全保障戦略」
・中西輝政:日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
・渋沢雅英:アメリカの排日運動に「国民外交」で挑んだ渋沢栄一の努力
・中西輝政:日本は近代化の過程で情報分野だけ学べなかった
・片山杜秀:10分でわかる「大日本帝国憲法の真実」…シラスの論理
・島田晴雄:明治維新を成し遂げた日本が当時直面していた困難とは何か
・関幸彦:「王朝国家」と「武士」誕生のきっかけは大唐帝国の解体
・田口佳史:『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
■講座のみどころ:徳川家康が考えた「日本の安全保障」(山内昌之先生)
本日は、山内昌之先生(東京大学名誉教授)の講座を紹介いたします。これまでも山内先生はテンミニッツTVで、歴史をひもときながら、現下の国際問題に鋭く切り込んでくださっています。
今回の講義では、日本の「防衛三文書」の発表、そしてウクライナ侵略、台湾危機という現況を、徳川家康の外交論を紹介しつつ、論じてくださいます。
「徳川家康は、そのようなことまで考えていたのか」。そう驚かされるとともに、現代との共通性から深い教訓を学びとることができる講座です。
◆山内昌之:日本の外交防衛政策…家康の教訓(全4話)
(1)徳川家康が考えた「日本の安全保障」
異国が乱れるときは…徳川家康に学ぶ「国家安全保障戦略」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4810&referer=push_mm_rcm1
本講座の第1話で山内先生がご紹介くださるのは、寛政の改革を推し進めたことで知られる松平定信(1759年~1829年)が記した『閑なるあまり』という随筆に描かれた徳川家康の外交論です。
松平定信の生きていた時代には、ロシアやイギリス、アメリカなどの「異国船」が日本近海に出没するようになっていました。そのようなことを背景に、家康公の故事にあたったのでしょう。
ここで松平定信が紹介する徳川家康の議論は、まことに興味深いものです。徳川家康は、鷹狩りを例として、唐船(中国の船)と戦う心がけを次のように説いたといいます。
《非常に広い田んぼにいる、たくさんの鶴を多く捕るために、逸物の鷹(大変優れた鷹)を仮に1000居求めても、それを指揮する鷹匠が下手ならば、鶴を捕ることはできない》
前進拠点をうまくつくり、適切な場所を定め、天気や風のタイミングのような気候条件もきちっと考えて、「見合い調子」を合せなければ、大変優れた鷹を持っていても、1羽の鶴さえ捕ることができないというのです。
普段からきちっとした覚悟、気構え、用意をしておかなければ、戦っても勝つことができない。鷹狩りを好み、また戦国の世を生き抜いてきた家康の言葉だけに、大いに考えさせられます。翻って考えれば、防衛費の増額は必須のことではありますが、それだけではどうしようもないということでしょう。
また家康は、外国が乱れているときこそ、国内の安全保障に注意を向けるべきだと語ったといいます。ひと言でいえば、《「外国は乱れているけれど、日本は平和でいいね。治まっているね」と言って油断するのは、大変禁物だ》ということです。
この言葉を引きながら、山内先生は次のようにおっしゃいます。
《例えばさまざまな予算が組まれます。「GoToトラベル」、あるいは子どもに関わる予算など、さまざまなものが組まれますが、実際はそれがあまり有効に使用されません。ところが、防衛費などに関しては、一般予算からの支出は難しいから増税する、といったような形での議論が先行していくのは、果たしていいのかどうか》
考えさせられるご指摘です。
第二話では、徳川家光の時代の言葉が紹介されます。江戸幕府は、諸藩の外国貿易を禁止し、外国との貿易を独占しました。しかし、長崎湾にいる唐船(中国船)を「懐の中の毒蛇ぞ」と認識していたといいます。つまり、《「和」のために来ているような船であるかのように見えて、実はそれは安全保障という観点から見れば、われわれが自分たちの懐の中に入れている毒蛇に他ならない》と考え、油断をしなかったというのです。
実際に、徳川家光は西洋船よりも中国船を心配し、福岡の黒田藩と佐賀の鍋島藩に長崎の警護を命じます。
また、初期の長崎奉行であった甲斐庄喜右衛門は、「異国に日本の土地を一寸なりとも渡しては、これは日本の恥である」と語ったともいいます。
しかし、そのような徳川幕府の態度と比べて、現在の日本はどうか。そう山内先生は問いかけます。
山内先生は、ウクライナ侵略に踏み込んだプーチン大統領の教訓と、彼の歴史認識を紹介しつつ、そのような「野望」を増長させてしまった欧米諸国の責任を問います。
にもかかわらず、ウクライナが早期に敗北しなかったのは、まずは自分たちの力で断固として抵抗したからでした。
それに対して、プーチンはどうするか。核恫喝はおろか、実際に核兵器を使用するに至るのか。山内先生は端的にこう語ります。
《民主主義国家ではない国は、必要な場合には核を使うということはあり得る。プーチン氏が戦術核を使う危険性や可能性が排除できない》
そして、こういいます。現在のところ、プーチン氏に核の使用を踏みとどまらせている大きな要因はNATO(北大西洋条約機構)の結束力である。またNATOのストルテンベルク事務総長は、「ヨーロッパ大西洋の安全保障とアジア太平洋の安全保障はつながっている」という発言もしている。だが、アジア諸国の結束はどうか……?
そのなかで台湾侵攻があった場合に、どうなるのか。まさに徳川家康、そして徳川幕府の危機意識が再び見直されるべき局面だといえるでしょう。
(※アドレス再掲)
◆特集:歴史に学ぶ日本の危機突破戦略
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=194&referer=push_mm_feat
◆山内昌之:日本の外交防衛政策…家康の教訓(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4810&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「ブルーライトと健康」についての問題です。ではレッツビギン。
十数年前に網膜の新しい細胞が見つかりました。第四の網膜神経節細胞といわれるものです。私たちは、そこでブルーライトを感受しています。この細胞でブルーライトを感受すると、頭にその信号が伝わって、そこで( )という物質が産生されます。この( )が、体内時計をつかさどります。
人間の一日のリズムを、概日リズムといいます。朝起きて光を浴びると、ブルーライトを網膜で感知して、人間は朝になったことを感じます。
( )には同じ言葉が入ります。さて何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1610&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、今月(3月)1日より応募が始まりました3月のプレゼント本についてお伝えいたします。
今月は中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所 教授)の著書(以下)を抽選で10名様にプレゼントいたします。
<今月のプレゼント本>
『荘子の哲学』 (中島隆博著、講談社学術文庫)
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中国、そして世界で『荘子』はいかに読まれてきたのか。
その驚くべき核心と、いま光を当てるべき現代的な意味とは?
中国・日本はもちろん、これまであまり言及されてこなかった欧米圏での研究をも渉猟。「無為自然」や「万物斉同」といった概念に替え、自己および世界の変容を説く「物化」思想をその核心として取り出し、ドゥルーズら現代の西洋哲学と突き合わせることで、言語、道、他者、自由にかかわる荘子の思索を新たな相貌のもとに甦らせる。世界の哲学に通暁する著者がダイナミックに描く、新時代の標準たる驚くべき読解の書!
ご希望の方は以下よりご応募ください(応募締切は3月20日までです)。
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※応募方法は、トップページ内に表示されている「今月のプレゼント」からご確認ください(応募前の方のみ表示されます)。
また、荘子に関しては好評配信中の以下、中島先生の講義もぜひご視聴ください。
◆中島隆博:世界の語り方、日本の語り方(4)〈からだ〉を解き放つ
日本文化には歌や舞いで「からだ」が変容する瞬間がある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2802&referer=push_mm_new_function
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