編集長が語る!講義の見どころ
ぜひとも知っておきたい「和歌」の教養/特集&上野誠先生【テンミニッツTV】
2023/03/17
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平)
いきなり有名な和歌を引用しましたが、まさに、和歌は「日本のこころ」です。この美しき桜の季節を読んだ歌も、それこそ数えきれぬほどに詠まれてきました。
「和歌」の始まりはスサノオだといわれるほど、長い歴史を誇る詩文学。古来、日本人は歌にさまざまな想いを託してきました。このような文化伝統のなかで生れた一人として、ぜひともその教養を知っておきたいものです。
今回の特集では、短い言葉に託した日本人のこころの物語に、『古事記』『万葉集』『百人一首』『金槐和歌集』など、さまざまな側面から迫ります。
■本日の特集:「歌」が物語る日本のこころ
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=195&referer=push_mm_feat
・上野誠:『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
・渡部泰明:新元号「令和」の出典『万葉集』「梅花の歌の序文」とは
・渡部泰明:『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
・鎌田東二:スサノオなしに日本の祭も歌もなかった
・坂井孝一:「源実朝は文弱」は誤解…『金槐和歌集』に込めた想いとは
・頼住光子:無耳法師となった明恵の過激、秘めた切なる想いとは
■講座のみどころ:未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る(鎌田東二先生)
本日は、上野誠先生(國學院大學文学部日本文学科教授/奈良大学名誉教授)の「万葉集」講座をピックアップします。関西にお住まい、あるいは関西ご出身の方であれば、長く放送されている上野先生のラジオ番組「上野誠の万葉歌ごよみ」をご存じの方もいらっしゃることでしょう。
いうまでもなく、4516首、全20巻からなる『万葉集』は、日本最古の歌集として知られています。「『万葉集』こそ日本人のこころだ。『万葉集』こそ日本のルーツだ」とお考えの方も多いことでしょう。
ところが、万葉集にまつわる数多くの書籍も発刊されてきた、万葉集研究の第一人者ともいえる上野先生が、今回のテンミニッツTVでは、「『万葉集』を丁寧に読んでいくと、きわめて中国文学の影響が大きいことに気づく」とおっしゃるのです。
はたして、どのようなことなのでしょうか。
◆上野誠:万葉集の秘密~日本文化と中国文化(全5話)
(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4855&referer=push_mm_rcm1
上野先生は、まず講座の第1話で、『万葉集』の最初に掲載された歌
「籠(こ)もよ み籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよ み掘串(ぶくし)持ち この丘に 菜(な)摘(つ)ます児(こ) 家(いへ)聞かな 名(な)告(の)らさね そらみつ 大和(やまと)の国は おしなべて われこそ居(を)れ しきなべて われこそ座(いま)せ われこそば 告(の)らめ 家をも名をも」(雄略天皇)
2番目に掲載される歌
「大和(やまと)には 郡山(むらやま)あれど とりよろふ 天(あめ)の香具山(かぐやま) 登り立ち 国見(くにみ)をすれば 国原(くにはら)は 煙(けぶり)立ち立つ 海原(うなはら)は 鴎(かまめ)立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島(あきつしま) 大和の国は」(舒明天皇)
そして最後(4516番目)に掲載される歌
「新(あらた)しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)」(大伴家持)
などを紹介しつつ、『万葉集』の歌が、いかに日本人の心や情操を詠んでいるのかをご解説くださいます。
しかし、その直後(第1話の最後)に、上述のように「きわめて中国文学の影響が大きいことに気づく」とおっしゃるのです。
なぜか。
たとえば、『万葉集』の歌は、雑歌・相聞・挽歌に分類されますが、この3つの分類法(=三大部立)は、実は中国の書物『文選(もんぜん)』から学ばれたものだといいます。
また、『万葉集』のなかに出てくる「春が立つ」や「風高し」などの言葉は、漢語の影響のもとに生れたものだと考えられます。さらに、歌のなかには、中国の故事についての知識がないと理解できない歌も含まれていて……。
では、『万葉集』は、中国の『文選』『玉台新詠』『遊仙窟』などの影響下にある、中国文学の焼き直しなのでしょうか。
それも違うと上野先生はおっしゃいます。このあたりの機微を、今回の講座では様々な角度から語っていただいているわけですが、とても興味深い話が次々と展開されます。
まず上野先生は、中華文明の4つの要素として「漢字」「法体系(律令)」「儒教」「仏教」を挙げて、それぞれを概説しつつ、その日本への影響を描いていきます。
日本人は、漢字を取り入れて文字として使いつつ、一方で漢字から「かな」を生み出して、表音文字ともしました。その表音文字である「かな」で書かれた和歌の数々……。その事実からして、日本文化のあり方を示しているともいえましょう。
さらに最終話では、『万葉集』の巻5で描かれる、大伴旅人邸での「梅花宴」をご紹介くださいます。天平2年(730年)の正月に開催された大伴旅人邸宅での梅見の宴会で詠まれた32首が『万葉集』に載っているのです。
少し詳しい方ですと、この箇所の「序文」から「令和」という言葉が採られていることをご存じのことでしょう。
上野先生は、その「序文」の後半が素晴らしいということで、その趣旨をご解説くださいます。そこには、漢詩の伝統を意識しつつ、「われわれは短詠(=和歌)を成す」という言葉が出てくるのです。
中国という巨大な文明のとなりにあった日本。その大きな影響を受け、それをみごとに吸収ながら、しかし一方で、自分たちの伝統を大切にしつづけた日本。
上野先生のお話のなかから、グローバル社会のあり方、さらに真の意味での「日本文化の精華」が立ち現われます。やはり、このような「広がり」と「深さ」こそが日本の美点なのだと、心から納得できます。
とても素晴らしい「和歌論」「日本文化論」です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:「歌」が物語る日本のこころ
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=195&referer=push_mm_feat
◆上野誠:万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4855&referer=push_mm_rcm2
※「頼」は、実際は旧字体
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「ユダヤ神話の物語」についての問題です。ではレッツビギン。
時代を降っていき、モーセの時代になる紀元前12世紀頃にはエジプトの奴隷の境遇になっています。エジプトの奴隷の境遇になっているところから、イスラエルに帰還しようという動きをするわけです。大きな民族移動をして、航海の途中に水(海)が真っ二つに分かれたという有名な奇跡の話がそこで出てくるのですが、そのような中で率いていたイスラエルの部族たちが、バラバラになってしまう。そのバラバラになってしまいそうなところに、神が( )という戒律を与えるわけです。
さて( )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4761&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、今週火曜日(14日)から「学びの投稿アカデミア」第2回が開始となりました。
【学びの投稿アカデミア】
第2回テーマ:「テンミニッツTVのおすすめ講義とその理由」
(応募ページ)
https://10mtv.jp/review/?review_id=2&referer=push_mm_new_function
前回の応募ページをご覧いただいた方はお分かりかと思いますが、今回の応募(投稿)欄はとてもシンプルになっています。文字数制限はなく、ペンネームあるいはお名前を書いて投稿するだけなので、お気軽にご参加いただけます。
ということで、皆さまのおすすめ講義、ぜひお聞かせください。たくさんのご応募、お待ちしております。
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