編集長が語る!講義の見どころ
「学びの投稿」締切り目前!&東京大学の未来図とは?/藤井輝夫先生【テンミニッツTV】

2023/03/28

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

いよいよ新年度、入学式の季節です。ところで、日本の大学がめざすものも、かつてとは、ずいぶん変わってきています。はたして、どのような未来図が描かれようとしているのか。

本日は、そのことについて東京大学第31代総長の藤井輝夫先生がお話しくださった講座を紹介します。

その前に……、第2回「学びの投稿」もいよいよ締切り目前です。

■学びの投稿アカデミア、第2回テーマは「テンミニッツTVのおすすめ講義とその理由」

https://10mtv.jp/review/?review_id=2&referer=push_mm_new_function

第2回の募集締切りが今週の金曜日(3月31日)となっております。今回のテーマは「おすすめ講義とその理由」です。

皆さまのご投稿が、多くの方々のヒントや気づきになります。入選賞もあります。ぜひ、お気軽な気持ちでご投稿いただければ幸いです。


■藤井輝夫総長:東大を人と人をつなぐ学びの場に

テンミニッツTVでは、藤井輝夫先生が令和3年4月1日に東京大学総長に就任される直前の同年3月17日にインタビューをいたしました。現在の課題と今後の展望が明確に描き出されていく講座です。

折しも、入学式の時期。あらためてその内容をご紹介したいと思います。

◆藤井輝夫:東大を人と人をつなぐ学びの場に(全4話)
(1)対話と共感
「知を活用する」ためには人間のネットワークが必要だ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3962&referer=push_mm_rcm1

講座の最初で、藤井先生はまず、現在の世界の状況を概観くださいます。

《今、世界の状況を見ても、非常に変化が大きくなっていると感じています。とくに感じているのは、世界のなかのものの考え方の変化です。いろいろな価値観や境遇を持つ人々がいるし、地球の環境もそうですけれども、今までのようなリニアなものではありません。

いわゆる経済的な発展の延長線だけでものを考えればいいということではなく、全体としてのいろいろなことに気を配らねばならない。経済や物質的なことだけではなく、文化的・社会的な全体の発展を考えなければいけない時期に差し掛かってきていると思います。

それを考えると、大学というのはいろいろなものをつないでいくような役割を果たせる存在だと感じます。ですから、ぜひそういうかたちで東京大学が人類や世界の発展に貢献できるようなことをやっていきたいと思っています》

では、「つないでいく」とは、いかなることなのでしょうか。藤井先生は「社会実装」と「ネットワーキング」が重要だと指摘されます。

《特に私が今、考えているのは、学生が普段の講義で勉強して身につけるものは、ある意味で机の上のことなので、それを生かす場をしっかり設けたいということです。プロジェクトの一環として学生たちを駆り出して、しっかり手伝ってもらって、アウトプットまでつなげるようなことができるといいですね》

たとえば、数年前から「指定国立大学法人制度」構想の一部として、「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」が始まっているといいます。夏休み期間に学生たちが自治体に出向いて、いろいろな課題を見つけて持ち帰り、それに対して、先生方にも指導を仰ぎながらどうすればいいのか課題解決の方向を検討する。さらにそれを現地へ持ち帰り、できることなら実装まで行なう……。

コロナで活動が停滞してしまった部分もありますが、このような具体的な社会実装によって、学生の力を高めるとともに、社会に貢献していくのです。

さらに、「ネットワーキング」の問題は、実は、よく取り沙汰される「世界大学ランキング」にも影響するものだといいます。

《私も相対的に、そう特別大きく劣後しているというイメージはないのです。にもかかわらず、実際の(大学)ランキングスコアとしては下がってきているということです。

大事なことは、やはり世界のなかのリサーチやアカデミックのネットワークにしっかり入り込んでいるかどうかということです。とくにヨーロッパなどは積極的に努力して、それをやっているところがあります。

ヨーロッパのなかのネットワーキングをいかにつくるかということで、EUの研究予算には"Framework Programme 7"というものがありました。予算を申請するときには必ずネットワークで、しかもスタートアップを何社か入れないと申請できないような仕組みをずっと続けていたのです。それで自然にネットワーキングができてきた。あえて、それをやってネットワーキングしてきたところがあります。

われわれはそういうことを必ずしもやっておらず、自然体でやっているところがあります。そのため、お互いの対話や情報共有のチャネルがそこまで充実しているかというと、そうでもないところがある。これはやはりなんとかしなくてはいけないと思っています》

もちろん各教授は個々人でネットワークを持っている。それを目に見えるかたちにして、大学が背中を押してあげて、よりしっかりした結びつきにする。

さらに、先生だけでなく、学生も行き来できるようにしたり、お互いに学生を受け入れたりする。さらに「グローバルフェロー」という仕組みで、海外の先生に講義や研究指導をやってもらったり、学生が海外の先生の講義に参加できるようにする……。

オンラインでのミーティングが当たり前になったいま、そのようなことがやりやすくなったこともあるでしょう。さらに、コロナ後の世界において、そのような取り組みが急速に前に進む可能性もあるはずです。

そのようなあり方が実現すれば、日本の人材育成の可能性は大きく飛躍することでしょう。

さらに、昨今では「起業(アントレプレナーシップ)」をめざす学生も多くなっています。その点について、藤井総長はどのように見ておられるのでしょうか。

《いわゆる起業(アントレプレナーシップ)の分野だと、たとえばバブソンカレッジが有名です。バブソンの話を聞いていると、確か学生全員が入学して半年以内に起業するのです。そういうことになっているというのを聞いていると、東京大学のなかでも、在学中に何らかの起業ができるような機会をつくってしまうようなことはあり得るのかと思いました。

学生というのはやはり自分たちが興味のあることをやるからものすごく努力できるわけです。それで、非常にクオリティの高いことができる。やはりこれがポイントです。それがビジネスにつながるということはあるのですが、最初から「ビジネスをやろう」と思ってやってはいないですね。

最終的にはそれが世の中をよくすることにつながる。そういうストーリーがいいのではないかと思うのです》

社会が大きく動いていくときに、いかなる人材を、いかに輩出していくのか。それを考えるとき、藤井先生がおっしゃるように「自分たちが興味のあることをやるから、ものすごく努力できる」というのは、とても重要なことでしょう。

藤井総長は「対話と共感」をテーマに掲げていらっしゃいます。「もろもろの間をつないでいくために、やはり対話、そしてやろうとしていることへの共感を広げていくことが大事」だとおっしゃるのですが、たしかに、「ネットワークを築いていく」にあたっても、また、「自分たちの興味があることを押し広げていく」にあたっても、「対話と共感」は欠かせません。

これからめざすべき社会の姿、さらにそこに向けての人の育て方も見えてくる講座です。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)
◆学びの投稿アカデミア(第2回)「テンミニッツTVのおすすめ講義とその理由」
https://10mtv.jp/review/?review_id=2&referer=push_mm_new_function

◆藤井輝夫:東大を人と人をつなぐ学びの場に(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3962&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《人を追いかける経営》

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2395&referer=push_mm_hitokoto

人間大事の考え方が松下幸之助の経営の根底にある
江口克彦(株式会社江口オフィス代表取締役社長)

松下幸之助という人の経営は、お金を追いかけた経営ではなかったということです。それが、いいとか悪いとかいろいろなご意見があるとは思いますが、お金を追いかけずに人を追いかける経営をしたということです。
(中略)
人を追いかける経営は、これからますます重要になってくるだろうと思います。2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)を迎え、技術が人間を逆転する現象が起きると言われています。そのような2045年を越えた時に私たちが強く意識すべきなのは、人間観、あるいは人間から出発する経営という発想だと思います。


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今週の人気講義
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ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子(洗足学園音楽大学・大学院教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4860&referer=push_mm_rank

自由党への葛藤と決断――政治家・岸にとって最大の転換点
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4818&referer=push_mm_rank

結局、主流派と異端派の何が違うか…経済学史の大きな示唆
柿埜真吾(経済学者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4708&referer=push_mm_rank

日本的+中国的…両面あわせ持つ歌集が『万葉集』
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4856&referer=push_mm_rank

みんながカムパネルラだ…謎の人物ブルカニロ博士との対話
鎌田東二(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4826&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、今回はテンミニッツTVの「使い方ガイド」を以下、お伝えいたします。

■テンミニッツTVの「使い方ガイド」~基本操作や便利な機能などを紹介

(スマホ版)
https://imagineer.edmode.com/sugotoku/new_page.php?hash=2fsYBb4et7&referer=push_mm_new_function

(PC版)
https://imagineer.edmode.com/sugotoku/new_page.php?hash=P88hFuUd7U&referer=push_mm_new_function

上記よりそれぞれアクセスいただければ、基本操作や便利な機能などが確認できます。

ちなみに、サイトップ画面からですと、スマホの場合は、いちばん上方の「講師、ジャンル、新着、特集、…」と白地に黒字で書いてある部分を左にスワイプ(指で触れたまま左右に動かす)すると、最後から2番目に「使い方ガイド」というメニューが出てきますので、そこをクリック。パソコンやタブレットの場合は、右上(最上部)の「使い方」という文字をクリックすれば、確認できます。

ということで、特に最近テンミニッツTVに登録された方はご参考になさっていただければ幸いです。