編集長が語る!講義の見どころ
ウイルス禍を抑え込んだ「和歌山モデル」の教訓(テンミニッツTVメルマガ)
2020/09/11
皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
今回、新型コロナウイルスの対策は、各都道府県をベースに行われました。感染症法がそのような構えになっているからですが、振り返ってみると、非常にうまく対応できたところ、ややバタバタしてしまったところ、反省点が目立つところなど、都道府県によって大きく差が出たように思います。
これから秋冬に向け、また感染の大きな拡大も起きかねません。今後に備えるためにも、各都道府県が実際にどのような手だてをしたのかを検証し、成功事例は積極的に共有していくことが必要ではないでしょうか。
その問題意識から、今回、テンミニッツTVでは和歌山県の仁坂吉伸知事にご出演いただき、コロナ対策の和歌山モデルについてお話をいただきました。
◆仁坂吉伸:新型コロナウイルス対策~和歌山モデルの教訓(全10話)
(1)院内感染発生当時の状況
新型コロナによる日本初の院内感染にどう対処したのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3579&referer=push_mm_rcm1
和歌山県の新型コロナウイルス対策が、まず注目されたのはウイルス禍の最初期、2月13日のこと。済生会有田病院という地域の中核病院で、医師や入院患者からコロナらしい症例が見られ、院内感染が発覚した折のことです。このとき、和歌山県は徹底したPCR検査を行い、封じ込めに成功します。ちょうどそのころ、メディアでは「PCR検査数を増やせ」という論調が盛り上がっていましたので、和歌山県の対応は大きく取り上げられたのです。
しかし、当の仁坂知事は「PCR検査の数だけがすべてではないと思っている」とおっしゃいます。「PCR検査は第一義的には隔離のための手段だ」というのです。
実は和歌山モデルの最大の特長は、日本のウイルス対策の「肝」である保健所の力を最大限に発揮するための手を、的確に打った点でした。
ウイルス禍の当初、国からは「37.5度の熱が4日以上出た人は、保健所の帰国者・接触者相談センターへ電話してください」「感染を拡大させるおそれがあるので、なるべく病院には通院しないでください」などということがいわれていました。しかし、仁坂知事はこれを否定します。県民に対して、「どんどん病院に行ってください」と訴えたのです。
なぜか。それこそ、保健所の機能を守るためでした。保健所は感染症法に基づいて、検査をし、感染者を隔離し、また濃厚接触者を追跡する業務にあたります。そうやって疫病を抑え込んでいくわけですが、しかし、大変な労力のかかる仕事です。保健所が窓口になってしまったら、とてもではありませんが、処理しきれるものではありません。
そこで和歌山県では、町の病院や診療所を「第一のチェックポイント」にすることを考えたのです。まず病院に行ってもらい、新型コロナウイルス感染が疑われる症例を見極め、そういう患者さんを保健所につなぐという流れをつくったわけです。もちろん、病院の院内感染で感染拡大を引き起こしてはいけませんから、必要な資材などをバックアップする対策もしていきました。
さらに、ウイルス禍によって平素より業務量が減ってしまった観光担当などの県職員を、ウイルス相談窓口対応に一時的に異動させるなど、保健所のバックアップ機能を強化します。問い合わせが殺到して、保健所がその対応に追われ、本来の業務がおろそかになってしまう危険性をつぶしたのです。
仁坂知事は、欧米では感染疑いの人が病院に行くしかなかったので、医療崩壊を招きやすく、悲劇を生んでしまったのではないかと分析されます。たしかに、たとえばアメリカにはジョンズ・ホプキンス大学はじめ優秀な医療機関や、疾病予防管理センター(CDC)がありましたが、結果的に感染拡大を引き起こし、多数の犠牲者を出してしまいました。実は世界では、感染者を検査し、隔離し、濃厚接触者を調べていく保健所ネットワークという「現場」を持ち合わせていない国々がほとんどなのです。
保健所ネットワークは、まさに日本の一大特長ともいうべきものでした。その機能を最大化することに知恵と工夫を動員された仁坂知事の対策は、まさに現場を知り尽くしているからこその慧眼といえましょう。
しかし、もちろん実際には様々な壁もあります。課題をつぶしていくために、和歌山県ではどのように具体的な手を打ったのか。また、和歌山県のような人口規模と感染者数だからできたという評論もなされるかもしれません。それらについて仁坂知事はどう答えているか。ぜひ講義本編をご覧ください。
とにかく、良い事例を早急に横展開すべき局面だと思います。テンミニッツTVの講義が何らかのお役に立てば幸いです。
(※アドレス再掲)
◆仁坂吉伸:新型コロナウイルス対策~和歌山モデルの教訓(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3579&referer=push_mm_rcm2
----------------------------------------
今週の「エピソードで読む○○」Vol.2
----------------------------------------
今回の○○はデンマークの哲学者「キェルケゴール」です。
キェルケゴールをデンマーク中の嫌われ者にしたのは、『瞬間』というビラでした。(中略)
彼は、日曜日の朝になりますと教会の前に立って、この『瞬間』というビラをばらまきます。
このビラで彼は何が言いたかったのか。
それは、「あんたたち、月曜日から土曜日まで、ぼんやり生きてこなかったか」というものでした。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=470&referer=push_mm_episode
----------------------------------------
レッツトライ! 10秒クイズ
----------------------------------------
「環境・資源(レアメタル)」ジャンルのクイズです。
近年、希少金属であるレアメタルへの社会的関心が高まっています。「身近なレアメタル」の例として挙げると、学問の神様を祭った北野天満宮の屋根には「瓦のふりをした」〇〇〇の板が使われているとのこと。さて〇に入るレアメタルは何?
答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=751&referer=push_mm_quiz
----------------------------------------
編集後記
----------------------------------------
編集部の加藤です。
今週のメルマガいかがでしたか。皆さんの教養のために少しでもお役に立てたなら幸いです。
…と書いていて、ふと思い出したのは、『教養とは何か』(阿部謹也著、講談社現代新書)のまえがきの一説でした。
「教養とは単に出し入れが自由にできる知識なのだろうか。それならばコンピューターでもできるだろう。
教養には単に知識だけでなく、人格が含まれていたはずなのである。
人格高潔とまでいかなくても、少なくとも卑しくない人でなければならないのではないだろうか。
そうなると教養があるということは大変珍しいことであって、単に大学を出ただけではどうにもならないし、大学院を出ようと、学位をもっていようと関係がないことになってしまう。
しかし卑しい人でないというだけでは足りないような気がする。」
ということで、教養とは何かというのは難しいお題で、なかなか厄介です。たしかに知識だけでも、あるいは人格だけでもないような気がします。この他にも教養についてはいろいろと議論の余地はあると思いますので、今後も考えていきたいと思います。
最後に興味深い講義をご紹介いたします。ぜひご視聴ください。
リベラルアーツと「教養」の違いはどこにあるのか
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
小原雅博(東京大学大学院 法学政治学研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3283&referer=push_mm_edt
人気の講義ランキングTOP10
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部