編集長が語る!講義の見どころ
半導体戦争とデジタル覇権/特集&島田晴雄先生【テンミニッツTV】

2023/09/15

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

半導体を制する者が、世界を制する。この言葉が、まさに切実なものになっています。台湾有事の大きな要因の一つは、いまや世界一の半導体メーカーともいえるTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)を米中のどちらが手に入れるかだ……という指摘も散見されます。

たしかに1980年代、日本では石原慎太郎さんが「日本の半導体がなければ、アメリカのミサイルの精度も落ちる。安全保障の鍵を日本が握っている」と盛んに主張していましたが、そのような言説によって必要以上に刺激したからかどうか、日本の半導体産業は猛烈な圧力を受けて、腰骨を砕かれてしまいました。

しかし、半導体のことは様々な個々別々の報道や論調はあるものの、どのような歴史を経て、いまどういう状況になっていて、どのような論点があって、そのなかで日本の立ち位置はどうなのかなど、「全体観」がまったく見えづらいのも確かです。

今回、島田晴雄先生が、いつもの「鳥瞰(ちょうかん)講義」で、全体像をご提示くださいました。この講義を見るだけで「すべてがわかる」といっても過言ではない、島田先生ならではの素晴らしい講義です。

今回は、その島田先生の新作講義を軸に、この問題を深く知ることのできる講義を集めて特集といたしました。まさに、いま必見の講義群です。

■特集:半導体戦争とデジタル覇権

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=210&referer=push_mm_feat

・島田晴雄:なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵

・島田晴雄:世界を制覇したIT巨人「GAFAMNT」の実像に迫る

・島田晴雄:ファーウェイをめぐる米中対立によって揺れ動く国際秩序

・佐々木健一:フラッシュメモリの開発者は「評価されない英雄」

・西山圭太:日本企業が一番変えるべきは「縦に深く掘る」発想

・中島隆博:20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」


■講座のみどころ:飽食時代の「選食」のススメ(堀江重郎先生)

本日は、特集から島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長)の新着講義を紹介いたします。

◆島田晴雄:半導体から見る明日の世界(全12話)
(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5044&referer=push_mm_rcm1

島田晴雄先生の講義は、まずコロナ禍のなかで現実のものとなった「半導体不足」から始まります。「半導体不足」とはどのようなものだったのか。何が不足していたのかについては、ぜひ講義の第1話をご覧ください。

島田先生は、メモリ半導体、ロジック半導体、パワー半導体など、半導体の種類からわかりやすくご解説くださいます。

さらに島田先生は、ファブレス(工場のない半導体メーカー)とファウンドリー(委託生産業者)に分かれていることを指摘されます。TSMCはファウンドリーの代表的メーカーですが、いかなる歩みを辿ったかが第2話で詳述されます。

アメリカの半導体産業は、工場を持たずに頭脳だけで作って、生産は下請けにやらせる仕組みになっていきました。しかし中国が台頭してきて、最先端の半導体も自分でつくるようになってきたのを見て、重大な問題に直面します。

さらに、たった2つの欧州企業が半導体の命運を握っています。オランダのASML社と、イギリスのArm社です。この2社が、どのような技術を握っているかも、ぜひ講義の第2話、第3話をご覧ください。

第4話で解説されるのは、バイデン政権が成立させた「チップス法(半導体製造促進法)」です。アメリカ国内に半導体の生産拠点を持つことと、中国を締め上げることを目的とした法律です。さらにアメリカはそれを世界各国に要求していきます。

その背景には、「中国の脅威は貿易ではなく、情報だ」というアメリカの気づきがありました。ファーウェイが通信規格5Gの主導権を握ったことで「中国共産党に情報を全部抜かれる可能性がある」と危機感を募らせたのです。

さらに、バイデン大統領が半導体における対中制裁を一気に強めたのは、アメリカ国内の政治情勢もあると島田先生は指摘されます。バイデン政権はグリーンニューディルをやるのだと力説し、さらにアメリカの設備をリニューアルするべく雇用法案などを打ち出していきます。しかし富裕層への課税や企業課税によってそれを行なおうとしたために、共和党の猛反発をくらいます。

かくしてバイデン政権は、それらを通すために、共和党がなりそうな「半導体の競争力強化」を推進しだした。かくして莫大な補助金で、世界の主要な補助金をアメリカに持ってくる動きがはじまり、TSMCも台湾有事を念頭に置いて進出していく……。このあたりの分析も、ぜひ押さえておくべきでしょう(第5話、第6話)。

第6話の後半からは、半導体の基本構造と工程についての話となります。このあたりをきちんとご解説いただけるので、半導体の問題の大枠をしっかり理解できるようになります。そしてその工程の各所、各所で日本企業も大きな位置を占めていることを知ることができます。

第8話は、日本の半導体史です。1980年代に日本は世界を席捲するわけですが、そこからいかにして凋落していったのかです。あらためて日米半導体戦争の凄まじさと、日本企業の自壊の過程を、大きな流れのなかで理解することができます。

第9話は、再び日本が半導体立国になるのか否か。日米半導体戦争の時代とは打って変わって、日米で半導体を強化するという合意がなされ、日本政府もTSMCをはじめ世界の半導体メーカーの誘致にやっきとなっていますが、はたしてそのポイントはどこにあって、今後どうなっていくのか。さらにラピダスという会社が、政府の支援を得て最先端の半導体づくりに挑むことになっていますが、その成功の芽はいかほどなのか。

まさに島田先生の分析がさえわたります(第9話、第10話)。

第10話の後半からは、半導体の各工程における、強力な日本企業に光を当てていきます。いわゆる半導体の大企業ばかりでなく、半導体の製造工程の全体像を見なければ、日本の本当の強さも、またどこを守らなければいけないかも見えてきません。

さらに第11話と第12話では「3次元」半導体と、それに欠かせない日本の技術、そして技術を世界化していくうえでの連携戦略の勘所、さらに大量製品の汎用品ではなく、ユーザー企業が自ら設計開発していく半導体の新しいあり方について言及されます。

島田先生は、日本は「課題先進国」として、その課題を解決する半導体をつくり、そのライセンスを惜しげもなく公開し、世界を救ってはどうかと問題提起されます。

この「大河講義」全体を通じて、半導体をめぐる流れが手に取るようにわかり、日本政府のピントがどの点で外れているかも見えてきて、あるべき未来像も構想できます。ぜひ、ご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:半導体戦争とデジタル覇権
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=210&referer=push_mm_feat

◆島田晴雄:半導体から見る明日の世界(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5044&referer=push_mm_rcm2


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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3676&referer=push_mm_tanka