編集長が語る!講義の見どころ
生きる糧としての哲学…哲学の役割と近代日本の挑戦/納富信留先生【テンミニッツTV】

2023/10/10

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

さて、哲学を学ぶと、人生の見方がどのように変わるのか。さらに、明治維新後の日本において、哲学がどのような役割を果たしたのか……。

本日は、納富信留先生(東京大学大学院人文社会系研究科教授)が、とてもわかりやすくお話しくださった講義を紹介いたします。

……と、その前に。

先週から募集を開始しました会員の皆さまのアンケート企画「どのメディアが問題か?」が、本日(10月10日)締切となります。

この企画は、「テンミニッツTVの会員の皆さまのお声を集めて集計し、その結果を会員の皆さまに共有したら、おもしろい気づきが得られるのではないか?」という趣旨で開催しておりますものです。無記名でのご投稿でもあります。

今回のテーマは、もちろん今般のジャニーズ問題で浮き彫りになったメディアの姿などもふまえてのもの。ぜひお気軽に、率直なご意見をお寄せください。

https://pr.imgs.jp/r.php?TaICrpMpdt

結果は、10月19日(木)の編集部ラジオで発表いたします。お書きいただいたコメント(自由記述)もピックアップして紹介させていただきます。ぜひお楽しみに。

さて、納富先生の今回の講義紹介に戻りましょう。

今回の講義は、哲学こそ「学問のための学問」ではなく、「生きていくための糧となる学問」であり「社会の基盤となる学問」であることが痛感される講義です。また、講義中には納富先生がケンブリッジ大学に留学された折のお話などにも言及いただいて……。

様々な角度から考えを深めることができる、とても興味深い講義です。

◆納富信留:哲学の役割と近代日本の挑戦(全6話)
(1)欲望暴走のメカニズム
二千年前プラトンが警告!人間にとって怖い「欲望」の暴走
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5093&referer=push_mm_rcm1

この講義は、各話ごとにテーマががらりと変わるエッセイ的な講義ですので、各話ごとにあらましを紹介しましょう

第1話では、人間の欲望についてお話しいただいております。「欲望」にもいろいろな種類があり、とりわけ「理念的な欲望」が危険だというのです。

冒頭から、まことに興味深い内容です。

「理念的な欲望」とは何か。より具象的にいえば「膨らんでいく」欲望を指します。「お腹がすいた」などの欲望であれば、食事をすれば満たされます。しかし、「名誉が欲しい」とか「お金が欲しい」という欲望はどうでしょうか。

これは限度がありません。納富先生はこうおっしゃいます。

《お金も、実際にポケットの中に入れて、何か買うという行為に進んでいる場合は、先ほどの欲求と同じパターンで済む。しかし、数字が観念になってしまい、つまり1000万円だろうが、1億円だろうが、10億円だろうが、しかも数は大きい(ほうがよい)ということが理念的にあるので、そこが膨らむ。ですから、「足りない」という気持ちが満たされることはなく、むしろ「足りない」というところがどんどん膨らんでいく構造があります》

では、どうするか。そこについてプラトンが言及しているというのですが、そのあたりはぜひ、講義第1話をご覧ください。

第2話は、ギリシアのポリスと現代社会の比較です。都市国家であるポリスには、いわゆる市民階級のほかに奴隷も多数いました。女性の権利も現在のようなものではありません。にもかかわらず、ギリシアの哲学はなぜ「普遍性」を獲得しているのか。

ここで納富先生が指摘されるのが、「哲学という学問がパターンと論理に強い」ことです。その心は……ぜひ第2話で。

第3話は、明治期における「哲学」の話と、その担い手たちの話です。明治維新の直後から、日本人は西洋に留学して「哲学」を学びました。これは慧眼(けいがん)だったと納富先生はおっしゃいます。そして西洋の哲学用語をどんどん「日本語」にしていったのです。

しかし、そのような明治日本の哲学の担い手たちも第1世代、第2世代、第3世代と世代を経るごとに少しずつ変わっていったというのですが……。このあたりも、興味深いところです。

第4話は、1990年代のはじめに、納富信留先生がイギリスのケンブリッジ大学に留学に行ったときのエピソードです。当時の学生生活が生き生きと語られます。またイギリスの大学ならではの気風なども伝わってきて、興味深いエピソード満載です。

第5話はさらに一転して「近代の超克」の話です。「近代の超克」といえば、ご存じの方も多いと思いますが、第二次世界大戦中の日本で行なわれたシンポジウムです。戦時中のことなので、危険な軍国思想とも考えられがちです。しかし納富先生は、その限界もご指摘になりつつ、一方で「近代の超克、すなわちポストモダンは、当時、世界中の哲学者がチャレンジしてた課題だった」と指摘されます。

あの時代状況のなかで、日本人も懸命にその課題に挑んだのであり、当時の日本は失敗したかもしれないけれども、失敗も含めて彼らがどういう水準でどこまで頑張ったかを見直すのは日本人にとって大事なことだというのです。

たしかに、ポストモダンに突入している現代から振り返って、その課題を解き明かすことは、とても重要なことといえましょう。

第6話は、時代を動かす「哲学」の意味です。納富先生はこのようにおっしゃいます。

《一番いけないのは、大ざっぱに「いい」「悪い」と決めたり、黒白をつけて(笑)敵・味方を分けたりすることです。これは思考停止に近いので、やはり側面をきちんと分ける必要もあるし、観点によっても当然見え方が違います》

そのような視点を磨けることが、哲学の大きな意義なのです。さらに納富先生は「人間の大きさ」の重要性も指摘されますが、そこはぜひ講義第6話をご参照ください。

話題は多岐にわたり、様々な気づきを得られる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆納富信留:哲学の役割と近代日本の挑戦(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5093&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5041&referer=push_mm_tanka


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、冒頭、編集長からの案内にもありましたが、会員アンケートの締切が本日(10月10日)中です。
ご回答前という方、よろしければ、ご意見をお聞きできれば幸いです。

https://pr.imgs.jp/r.php?TaICrpMpdt

なお、今回のような会員アンケートは今後も随時、進めていきたいと考えております。皆さまのご意見を、皆さまで共有すること、それも貴重な学びの一助となると思います。
どうぞよろしくお願いいたします。