編集長が語る!講義の見どころ
トランプ大統領を知るためのヒントは100年前にあり!?(テンミニッツTVメルマガ)
2020/09/25
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
いよいよアメリカ大統領選挙があと1カ月あまりに迫ってきました。はたして勝つのは、共和党のトランプ大統領か、民主党のバイデン候補か?
日本人が目にすることの多いアメリカのメディアでは、トランプ大統領はとても「不人気」ですが、しかし、アメリカ国民には根強い人気を誇っています。いったい、なぜでしょうか。
実は、トランプ大統領について理解を深めるためには、アメリカの「歴史」をひもとく必要があります。日本人は案外、過去のアメリカ大統領の事例(特に第2次世界大戦前)を知りません。しかし、そこにも目を配ってこそ、アメリカの本質や傾向も見えてくるのです。
本日ご紹介するのは、そのことを痛感させてくれる講義です。東秀敏先生(米国安全保障企画研究員)は、現在のアメリカの政治状況が、ちょうど100年前、1920年の大統領選挙前後に似ていると指摘します。その折に当選したハーディング大統領は、多くの日本人に知られていませんが、しかし実は、トランプ大統領と多くの共通点があるというのです。
◆東秀敏:ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む
(1)米国第一主義の台頭
無名候補ハーディングが大統領選に勝利した100年前との共通点
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3546&referer=push_mm_rcm1
ハーディング大統領(在任:1921年~1923年 ※任期中に病死しますが暗殺説もあります)は、第1次世界大戦期にアメリカを率いたウィルソン大統領(在任:1913年~1921年)の次に就任した大統領であり、日本に関連する有名な歴史的事件でいえばワシントン会議(海軍の主力艦削減や、日英同盟破棄などが決まった軍縮会議)を仕掛けた人物です。そのハーディング大統領とトランプ大統領に、いかなる共通点があるのでしょうか。
東先生が最初に指摘するのは、ハーディング大統領こそ、米国第一主義(アメリカファースト)を掲げて当選した大統領であることです。
前任のウィルソン大統領が第1次世界大戦にアメリカを参戦させ、民族自決を明記した「14カ条平和原則」を提唱し、大戦後のパリ講和会議も主導し、また、国際連盟を実現すべく動いたことは、日本の教科書にも書かれていることです。ある意味でウィルソン大統領は、第2次世界大戦後の「世界の警察官」としてのアメリカ像に通底する、強烈なグローバリズムを志向したといってもいいでしょう。
しかし、アメリカは第1次世界大戦に参戦したことで、12万人の戦死者を出しました。また、第1次世界大戦後には戦後不況も起こります。さらに、1918年から1920年にかけてスペイン風邪が大流行しました。このスペイン風邪で、アメリカだけでも50万人が亡くなったといわれます。このような被害が出てしまったことに加えて、ウィルソン大統領が強引に推し進めたグローバリズムは、アメリカのDNAからすればアレルギー反応を起こすようなものでもあり、アメリカ国内からは非難が集中します。かくして、「アメリカファースト」「Return to normalcy(正常に戻ろう)」というスローガンを掲げたハーディングが大統領選挙を制することになるのです。
いうまでもなく「アメリカファースト」は、トランプ大統領が掲げたスローガンでもあります。グローバリズムへの反感という背景も、どことなく共通しています。
しかもハーディングは、次のような点でもトランプ大統領と似ていると、東先生はおっしゃいます。
●まったく無名の地方大学を卒業したのち、300ドルでオンボロ新聞社を買収して、それをオハイオで一番の新聞社に育て上げて政界に進出した「成り上がり」の人物であること。
●「オハイオギャング」と呼ばれる地元人脈を重用する「縁故主義」で政治を動かしたこと。
●ラジオやニュースリール(ニュース映画)など、当時の「新メディア活用」で人気を博したこと。
●極端な減税と自由放任主義経済を導入して、富裕層を徹底的に優遇しつつ、失業率を半分に削減したこと。
●移民排斥の動きを進めたこと。
いずれも、なるほどトランプ大統領と通じるものを感じます。そのハーディング大統領が、前述のようにワシントン会議を仕掛けて、日本とイギリスに徹底的に圧力をかけ、日英同盟を破棄させたわけです。このことと移民排斥の動き(日系移民も排斥されました)が、日本にとっての「運命の岐路」となり、やがて第2次世界大戦の遠因となったことは、日本人としては忘れてはいけないことでしょう。
はたして、ハーディング大統領とはどのような大統領だったのか。そして、そのことが教える「もう一つのアメリカ」の実像と、日本にとっての教訓とは……。これからの時代の流れを見通すために、多くの示唆が得られる講義です。
(※アドレス再掲)
◆東秀敏:ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3546&referer=push_mm_rcm2
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.4
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今回の○○は古代ローマ・五賢帝の一人「アントニヌス・ピウス」です。
アントニヌス・ピウスは、ハドリアヌスほど派手な建築事業を行いませんでした。
また、ハドリアヌスは属州を渡り歩き、それが財政的に相当ローマ帝国を圧迫しているところもあったのではないかと思うのですが、彼はハドリアヌスとは違って、ほとんど属州に出かけて行くことがなく、ローマあるいはイタリアにいて、そこで平穏に暮らしました。つまり、派手なことはせず、財政的に節約していったということです。
(中略)
だから「歴史が無い」と言われるのですが、こうしたことを一つのリーダーの在り方として考えたとき、アントニヌス・ピウスという人物は、もう少し見直されていいと私は思います。
五賢帝の中で最も優れたアントニヌス
本村凌二(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2188&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「科学技術(AI)」ジャンルのクイズです。
5億4200万年前から5億3000万年前に現存するほぼ全ての生物種が出そろった現状を「〇〇〇〇〇爆発」と呼んでいる。その理由として唱えられているのは、生物の「眼の誕生」。同じような現象が、機械・ロボットの分野でディープラーニング技術によって起こっているという。
さて〇〇〇〇〇に入る言葉は何?
答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1716&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。
今回はちょっと趣向を変えて、テンミニッツTVのなかに出てくる“気になる”言葉を紹介いたします。
取り上げるのは「レジリエンス」です。
ご存じの方も少なくないと思いますが、この言葉、月間ランキングの上位にも入っている前野隆司先生の『「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ』シリーズの第4話(つながりと感謝の「ありがとう因子」)のなかで出てきます。
この言葉について、前野先生は「折れそうになったときに立ち直る力」と表現し、「レジリエンスの強さと幸福度は比例しています」と話しています。
前野先生の講義を収録した時、この「レジリエンス」という言葉を聞いて思い出したのが、田口佳史先生の老荘思想の話でした。
田口先生は「レジリエンス」について、こんな話をしています。
“このレジリエンスとは一体何なのかというと、あえて言えば、老荘思想の考え方では「復元力」に当たるものです。
(中略)「鉄板と柳とどちらが強いのか」というときに、老荘思想では「断然、それは柳の方が強い」ということを言っており、その復元力に当たります。”
ということで、「レジリエンス」は幸福に関係があり、老荘思想とも関連がある、なんだかとっても“気になる”言葉ではないでしょうか。
ぜひそれぞれの講義をご視聴いただき、「レジリエンス」について考える“機になれば”幸いです。
<今回ご紹介した2つの講義はこちら>
多様な友人を持っていると「レジリエンス」は強くなる
前野隆司(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3530&referer=push_mm_edt
現代人が学ぶべき老荘思想の基本「水の精神」
田口佳史(東洋思想研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1733&referer=push_mm_edt
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