2023/12/26

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

いよいよクリスマスも過ぎて、正月に向けてのカウントダウンの時期となりました。

「どうぞ、良いお年を」という挨拶をしているうちに、えもいわれぬ高揚感・期待感と、一抹の惜別感・無常感がないまぜになったような、不思議な感覚にもなります。

今回のメルマガでは、この2023年をしみじみと振り返ってみたいと思います。題材は「編集部短歌」。今年の6月から毎回、メルマガの下部のほうで、ひそやかに展開している「和歌でテンミニッツTV講義を紹介する」コーナーの抜粋・総集編です。

さて、この1年、どんなことがあったでしょうか。

▼まずは、今年大いに話題になったChatGPTについて。テンミニッツTVでは、AIの本質に、哲学的な背景も解き明かしつつ鋭く迫る、西垣通先生の講義を配信しました。

◆AIが世に満つるとき宣長の「もののあはれ」が人を救えり

西垣通先生のChatGPTとAI講義。シンギュラリティ時代には、むしろ生命的な情報が重要になります。となるとそれは本居宣長の「もののあはれ」では？イメージがどこまでも深く広がります。（7月7日発信）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4928&referer=push_mm_tanka1

さらに、来年以降、AIの社会実装がぐんぐん加速して進んでいきそうです。そうなると、人間の仕事や暮らしはどうなるのか？　マイクロソフト執行役員の渡辺宣彦氏に、現在のAIの姿を具体的に教えていただきました。

◆AIを使役する世に棲む吾は古代ギリシャの市民か奴隷か

そもそもAIが社会に実装される世に、我々はどう生きるのか。奴隷の存在が前提になっていた古代ギリシャが想起されますが、さて、我々の立場は…。（11月28日発信）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5091&referer=push_mm_tanka2


▼2022年2月のロシアによる本格的な軍事侵攻から激化したロシアとウクライナの戦争はなお終わる気配なく、今年も痛ましい戦闘が続いています。

今年8月には、プリゴジン氏が搭乗したジェット機の墜落事故によって死亡しています。プリゴジン氏は軍事組織ワグネルを率いてウクライナの前線で激しい戦いを担っていましたが、軍隊をモスクワに向けて進める「プリゴジンの乱」といわれる叛乱まがいの出来事を起こしてもいました。最近、「翼の下に爆弾がしかけられた」という報道がなされたのも記憶に新しいところ。

◆もし吾がプリゴジンならどうしたろうメフィストフェレスの刃の上で

◆幾人も殺す僭主の傍らでメフィストフェレスがほくそえむ夜

プリゴジン氏の墜落死。その報を聞いて脳裏に浮かんだのは、やはり納富信留先生が語る僭主の地獄図でした。(8月25日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4714&referer=push_mm_tanka3

一方、中西輝政先生は、プーチンを増長させた責任は日本にもあるとおっしゃいます。

◆かの悲劇はひとごとならず蝶々の羽ばたきさえも世を変える世に

関係性の網の目のなかで、どのような行為が重大事の引き金の1つになるかわからぬもの。無責任に傍観するだけでなく、自分の行動も検証したいものです。(12月1日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4969&referer=push_mm_tanka4


▼10月に行なわれたハマスによるイスラエルへの凄惨なテロ事件、そしてそれに対するガザ地区へのイスラエルの攻撃も、本当に痛ましいものでした。長く悲惨な歴史を背景としたものだけに、われわれは言葉を失わざるをえません。

◆遠因は三枚舌と迫害とその悲しみにただ天仰ぐ

島田晴雄先生は、悲劇の遠因は第一次世界大戦時の英国の三枚舌と欧州古来のユダヤ人迫害だと……。祖国を失うとはいかなることか。これは決して他人事ではありません。(10月20日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=274&referer=push_mm_tanka5


▼「ジャニーズ問題」も大きな話題となりました。大晦日の風物詩である「紅白歌合戦」にも大きな影響を与えました。テンミニッツTVの「編集部ラジオ」では、ナチスのユダヤ人虐殺に加担したアイヒマン問題に絡めて考察しました。

◆修羅の道その名を変えてチャラなのかどこかに潜む陳腐なる悪

この問題の本質はどこにあるのか、本当の悪はどこに潜むのか。そのことを、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。(10月3日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5081&referer=push_mm_tanka6


▼円安が大きく進み、「安すぎる日本」というイメージも大きく広がりました。1990年代以降、デフレを続けてきてしまったツケが、いよいよ一気に目に見えるかたちになったようにも思われます。はたして、現状の日本はいかなる姿なのか。テンミニッツTVでも、宮本弘曉先生の講義が大いに注目されました。

◆タイよりも給与の低き日の本の三十日月夜の暗闇を歩く

宮本弘曉先生は、いまや課長クラスで日本の給与はタイより低く、部長クラスでさらに突き放されると教えて下さいます。この共同貧困、やはり何かが変です。(11月14日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5120&referer=push_mm_tanka7


▼5月に行なわれた「広島サミット」では、各国首脳が広島の平和記念資料館を訪れ、慰霊碑に献花しました。これは歴史的に非常に意味のあることであったと、中西輝政先生がご指摘くださいました。

◆核兵器を握りて花をいしぶみに　首脳ら捧ぐ美しき花を

この「献花」の意義を、どのように持続させることができるか。来年以降、それも問われるはずですが、いまや日本の政治は大混迷の渦中です。（6月20日発信）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4955&referer=push_mm_tanka8


▼2023年は司馬遼太郎さん、遠藤周作さん、池波正太郎さんの生誕100年。そして小津安二郎さんの生誕120年でした。名作の数々を、あらためていま見返してみることで、思わぬ気づきも得られます。

◆坂の上の雲かがやける夏空に遼かなる雲の行方を追って

司馬遼太郎さんの誕生日は8月7日。司馬さんが遺したものとは？　片山杜秀先生が同じく生誕100年の遠藤周作さん、池波正太郎さんとの比較で語ってくださいました。(8月4日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4929&referer=push_mm_tanka9

◆「甘えには節度が大事」その機微を小津安二郎で味わうこの夜

小津安二郎さんの誕生日は12月12日。與那覇潤先生が土居健郎著『「甘え」の構造』を論じる講義の最終話で、「節度ある甘え」の大切さを語りつつ、それは小津安二郎の映画にも表われると指摘されています。(12月12日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4988&referer=push_mm_tanka10


▼明るい話題で、まず思い浮かぶのは大谷翔平選手の飛躍でしょうか。来年はドジャースでの大活躍をぜひとも応援したいものです。

◆どうせなら粋に生きたし突き抜ける遊び心のSHO-TIMEかな

本村凌二先生は大谷翔平さんの生き方に真の遊び心があるとおっしゃいます。粋に生きるのは難しいもの。やはりモデルが必要です。心が豊かになる講義で人生の真髄にふれましょう。(10月16日発信)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5085&referer=push_mm_tanka11


……なにぶん、駄歌の数々ではありますが、「継続は力なり」でもありますので、遊び心も大切にしつつ、ささやかにこの「編集部短歌」コーナーも続けて行ければと思っております。引き続きましてご愛顧のほど、よろしくお願い申しあげます。


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編集部#tanka
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楽聖の夢は今年も鳴り響くすべての人よ同胞（はらから）となれ

今年もベートーヴェンの「第九」が各地で演奏されています。「すべての人は同胞となる」という理想を歌った名曲。野本由紀夫先生がピアノ演奏で解説くださる講義で、その真髄をぜひ。（達）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3082&referer=push_mm_tanka12


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今週の人気講義
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賃金上昇の格差が経済を活性化!?最適なインフレ論の真相
伊藤元重（東京大学名誉教授）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5186&referer=push_mm_rank

ケア、エコロジー、ガバナンス、アート…現代へのヒント
鎌田東二（京都大学名誉教授）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5171&referer=push_mm_rank

聖徳太子虚構説こそ間違い…その存在の世界史的意義とは？
頼住光子（東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5181&referer=push_mm_rank

Z世代は傷つきやすい!?…昔の世代との相違点、共通点とは
山浦一保（立命館大学スポーツ健康科学部・研究科 教授）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5156&referer=push_mm_rank

おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵（成蹊大学文学部日本文学科教授）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5196&referer=push_mm_rank

※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体です


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて今年も残すところあと1週間足らずになりました。今年もたくさんのご視聴、まことにありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。
当メルマガは今週金曜日（28日）が今年最後になりまして、来年は1月2日（火）から配信開始となります。どうぞよろしくお願いいたします。