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セブンカフェ、無印良品…成功事例に学ぶ「デザイン思考」

「発想力」の技法を学ぶ(2)発見と探究(後編)

三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
情報・テキスト
『発想力の全技法 発見する眼、探究する脳のつくり方』(三谷宏治著、PHP文庫)
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問題解決のためのアイデアを生み出すために有効なのが、「デザイン思考」という方法だ。その思考法において発見からの開発へと向かう中、重要となるのは、どれだけ試行錯誤を繰り返すことができるかということである。そして今後、AI時代を突き進む中、これからの未来を生きる力としてまさに「試行錯誤力」をどう高めるのかがポイントだろう。そこで今回は、「無印良品(MUJI)」の良品計画の「長押」、セブンイレブンの「セブンカフェ」における、発見からの開発への成功事例を取り上げながら、スキルとしての発想力の身につけ方を学んでいく。(全2話中第2話)
時間:15:13
収録日:2023/10/06
追加日:2024/02/14
キーワード:
≪全文≫

●「デザイン思考:発見からの開発」例1――無印良品(MUJI)の「長押」


 「無印良品(MUJI)」、会社の名前は良品計画です。あるとき、収納家具プロジェクトが立ち上がりました。ターゲットは若者です。若者の部屋に収納家具を売りつけよう。頭の中ではいろいろ考えていました。若者の部屋は物も多いだろう、でも狭いだろう。だから収納家具というようなものは売れないだろう。だから「収納兼××」、例えば「収納兼座れる」、座れる収納チェストとかはどうだ。そんなことをいろいろ考えていたらしいのです。

 でも、そんなことは、ポテンシャルユーザーである若者たちに聞いたら1発で吹き飛びました。そんなもの、置く場所ももうないのだ。椅子はもうあるのだ。座れる収納チェストといわれても、意味がない、と。

 こういうプロジェクトのときに必ず調査部隊がいて、その人たちが写真を撮ってきてくれるそうです。ターゲットが若者だったら若者の部屋の写真をいっぱい撮ってきてくれます。そして、みんなで一生懸命観察します。収納、収納、収納と思いながら観察するのです。そうしたら、あるとき、こんなものが目に止まりました。

 いわゆる和室、もしくは和室もどきには壁の上のほうに板が張ってありますよね。あれを「長押(なげし)」といいます。構造上は何の意味もありません。ただの装飾です。でも、ちゃんとした長押は少し受けていますよね。なので、典型的にはハンガーが掛かっています。もしくは、家によってはきれいに傘が並んでいることがあったそうです。そこで気がつきました。床はダメだけれど、まだ壁がある。そして長押は収納家具だったのだということに気がつきました。

 作った商品は、「長押」という商品でした。商品名「長押」です。ただの板です。でも少しだけ受けています。工夫もあります。だいたい、壁は今どき石膏ボードです。わが家もそうですけれど、その石膏ボードに釘は立ちません。

 なので、特殊な専用の固定ピンを開発して、専用のフックで留めるだけでいいのです。3本ギュッと伸びていたり、2本であったりするのですけれど、3本の釘でやるものも、皆さん、見たことがあるかもしれません。あのように力を入れることによって抜けにくいですし、1本あたり1キログラムとか、2キログラムに耐えられるようになるそうです。2個で2キロ、3つ付ければ6キロ耐えられます。これなら十分だろうということで、なんと約3500円(※編注:2023年10月時点)でした。88センチで約3500円です。これはさすがにびっくりしました。「原価500円いってないよね」と思いました。

 でも、あっという間に売り切れて、そして販売が停止され、生産体制を何倍にも拡充して、何カ月か後に売り出されました。長押だけではなくて、さまざまな商品が展開されています。壁に付けられる家具シリーズということで、近年では最も売れた商品の1つだったでしょう。

 今だったらニトリでも通販でも、どこでも手に入ります。でも最初は無印良品(MUJI)が1枚の写真の発見からスタートしたものだったということです。発見からの開発です。


●「デザイン思考:発見からの開発」例2――セブンカフェの1勝4敗


 これは、たまたま無印良品(MUJI)が一発で成功したように見えるかもしれませんが、だいたいの成功の裏には何倍もの失敗がありますよね。

 セブンカフェだってそうです。セブンイレブンは、セブンカフェというものを2013年に成功させました。できたてのコーヒーが安く手に入ります。今やあらゆるコンビニエンスストアに同様のものが広がっているでしょう。

 でも、私は覚えていますけれど、1980年代、セブンイレブンはコーヒーをマクドナルドのように売ろうとしました。もう作ってあるのです。お店で店員さんがサイフォンを使って作ります。そして、ガラスの容れ物に入れて、ホットプレートに載せて、お客様が「欲しい」と言ったらすぐそこから注ぎます。マクドナルドがそれで成功していました。

 でも、マクドナルドは30分もたったら全部捨て、作り直していました。セブンイレブンでも、「1時間置きには作り直しなさい」と。そんなことができるわけはありません。忙しいコンビニエンスストアの店員さんがそんなことをやっていられるわけがありません。見事に失敗しました。

 だったらマシンだということで、淹れたてドリップマシンを作り、1988年からこれを頑張りました。でも、やはりダメでした。匂いがダメだったのでしょうか。焦げた香りが店内に漂います。日本人はけっこう香りに敏感です。そして冬になったら、焦げたコーヒーの香りと、そしておでんの香りが混在するような、すごい場所になってし...
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