●発想において最も大切なこと「座って悩むな、動いて考えよ!」
改めまして、三谷宏治です。今回は「発想力」についてお話をしたいと思います。『発想力の全技法 発見する眼、探究する脳のつくり方』(PHP文庫)という本も書いています。キーワードは「発見と探究」です。
まず、こんな問題からいきましょう。横棒の部分があります。Aの横棒が長いか、Bの横棒が長いか、それとも同じか、必ずどれかに手を挙げていただきたいと思います。
Aの横棒が長いと思う人、手を挙げてください。Bの横棒が長いと思う人、手を挙げてください。A、B同じだと思う人、手を挙げてください。
さあ、そのまま、同じだと思う人、手を挙げておいてください。(実は)そう、Bのほうが長いのです。
この問題をやると、99パーセントの人たちは間違えます。知っているからです。これはミュラー・リヤーという人が昔作った錯視図です。目の錯覚だから錯視です。外側に開いていると長く見えます。内側に閉じていると短く見えます。Aのほうが長く見えて当然です。それが人間の脳の自動的な作用です。でも、実は同じだというのが、ミュラー・リヤー錯視図です。それに、私が少し意地悪をしています。
この問題も、社長さんたちから小学1年生まで、いろいろな人たちにやっています。小学3年生以上はみんな間違えます。「知っている」からです。知っているということは大事なことです。知っていれば悩まなくていい。そして、すぐ答えにたどり着ける。でも、代わりに捨てるものがあります。それは「考える」ということです。
人は、知っていると思った瞬間に考えることをやめてしまいます。みんなが持っている同じ知識のことを「常識」というようにもいうのでしょう。それがいつか身を滅ぼすということでもあります。なぜなら、どんどん考えなくなるからです。
少なくとも私が受けてきた教育は知識です。せいぜい、パターン認識です。見た瞬間、このパターンだ、だからこの解法で解く、といって手を動かさないと、絶対間に合わないようにできています。考える暇なんてありません。考えたら終わりです。そんな訓練を受けてきています。
ちなみに、この間、新聞を読んでいたら、ある中学受験の予備校のトップの方がインタビューに答えて...