編集長が語る!講義の見どころ
トランプ大統領の支持層は何を支持しているのか?(テンミニッツTVメルマガ)
2020/10/23
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
いよいよ、アメリカ大統領選挙が間近に迫ってきました。メディアでは、民主党のバイデン候補が支持率で上回っていると報じられますが、アメリカ政治の事情通のなかには「トランプが勝利する」という意見も根強くあります。
なぜ、トランプ大統領は、その支持層から熱烈な支持を集めているのでしょうか。その核心について、トランプ大統領の「独立記念日演説」をもとに、東秀敏先生(米国安全保障企画研究員)にわかりやすく解説いただいた講義を、本日は紹介いたします。
東秀敏:2020年度独立記念日演説と第2次米国革命(全7話)
(1)ラシュモア山を選んだ意義
再選を狙うトランプ大統領がラシュモア山を演説の場に選んだ背景
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3649&referer=push_mm_rcm1
2020年7月4日の「独立記念日演説」を、トランプ大統領はラシュモア山で行いました。なぜ、トランプ大統領はこの地を選んだのでしょうか。ラシュモア山は、4人の大統領(ワシントン、ジェファソン、リンカーン、セオドア・ルーズベルト)の巨大な顔が彫られていることで有名な岩山ですが、実はこの彫像の作者であるボーグラムは、白人至上主義KKK(クー・クラックス・クラン)とつながりのある人物だったといいます。しかもラシュモア山は、西へ西へと開発を進めていった「西漸運動」のなかで、インディアン(ネイティブ・アメリカン)に対する裏切りと虐殺が行われた悲劇の地でもありました。
そのため、白人至上主義とも関連づけられて考えられることの多い地でもあるのですが、その地を、あえてトランプ大統領は選んだのだというのです。
トランプ大統領はこの演説のなかで、「左翼文化革命」を手厳しく批判しました。その一例として、「キャンセル文化(Cancel Culture)」についてのトランプ大統領の演説内容を、東先生の訳で紹介しましょう。
「彼らの政治上の武器として『キャンセル文化』があります。それは失業をあおり、反対者を恥さらしにし、反対意見を持つ者に完全な服従を求めます。これは正に全体主義の定義そのものであり、我々の文化や価値観とは全く異なるものであります。それはアメリカ合衆国において一切受け入れられるものではありません」
「我々の学校、報道室、まして企業取締役室にまで、完全なる服従を強要する新たな極左ファシズムが存在します。極左ファシズムの言語を話さない、その儀式を行わない、その戒律に従わないならば、検閲を受け、左遷され、危険人物登録され、迫害され、罰せられるのであります。そのようなことは絶対に起こらないようにします」
実際に現下のアメリカ社会では、たとえばツイッター上でトランプを支持するような発言をすると、一気に袋だたきにあって、会社をクビになったり、もはや社会的に復帰できない状態まで追い込まれたりすることがあると、東先生はおっしゃいます。さらに、建国の父たちの銅像を取り壊したり、記念碑を冒涜(ぼうとく)したりする運動も起きている。このような動きに対して、トランプは徹底抗戦を訴えたというのです。
東先生がこの演説から読み取るトランプ大統領側の論理は次のようなものです。
人種差別を「アメリカの原罪」として強調し猛省を求める歴史観や、LGBTをはじめとする価値観の多様化など、アメリカの民主党がこれまで強力に主張してきた「左翼文化革命」の理論や運動を「全体主義的」と規定し、それに対して、「アメリカこそが偉大で特別な国」というアメリカ例外主義の選民思想的な主張を強く打ち出す。そして、独立以来の「米国革命」の理念を正当に継承しているトランプ大統領こそが、全体主義を打ち破って、再びアメリカを偉大な国にするのだと訴える。そして、このトランプ大統領の闘争によって生み出されるのが「第2次米国革命」なのだと主張する……。
このような論理構成を、東先生は、実際のトランプ大統領の演説英文を読み解きながら示してくださいます。トランプ大統領がどのような言葉を用いているのか学ぶことができ、現在のアメリカの動きの底流がよく理解できるようになる講義です。
また、東先生は最近話題の「Qアノン」についての講義もしてくださっています。ぜひ併せてご覧ください。
◆東秀敏:Qanonとは何か?(全3話)
(1)大統領選にも影響を及ぼす草の根運動の正体
トランプ支持者の一部が「フェイク陰謀論」に熱狂する理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3698&referer=push_mm_rcm3
(※アドレス再掲)
◆東秀敏:2020年度独立記念日演説と第2次米国革命(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3649&referer=push_mm_rcm2
◆東秀敏:Qanonとは何か?(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3698&referer=push_mm_rcm4
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.8
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今回の○○はイギリスの生物学者「チャールズ・ダーウィン」です。
これは有名な話なのですが、ダーウィンの家の庭には「ミミズ石」というものがあり、それが毎年どれぐらい埋まっていくかということを計量していたのです。すると、35年間で3.8センチ沈んだから、この石が完全に埋まってしまうには、後何十年かかるかというようなことを書いてあります。そのような本です(注:『ミミズと土』)。
ダーウィン亡き後、20世紀に入ってアメリカ農務省が、「ミミズは1エーカー当たり約50トンのフンをする。ミミズがかきまぜる土の量は1エーカー当たり1000トンだ」という報告をしています。この辺りから有機農法の話がはやり始めます。
ダーウィンが発見した「穴ふさぎのアフォーダンス」とは
佐々木正人(多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科教授/東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2880&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「哲学・思想(西洋哲学)」ジャンルのクイズです。
中学校や高校の授業などで習った、X軸とY軸といった座標軸は誰が考案したものでしょうか?
答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2555&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
皆さんはこれまでの読んだ本のなかで、特に人に薦めたいという本はどれくらいあるでしょうか。
1年と半年ほど前、「大人の教養読書~講師が語る『私のおすすめ本』~」という特集で講師の先生方が影響を受けた書籍や学ぶためにヒントとなる本などを紹介されていますが、この特集以外で本村凌二先生(東京大学名誉教授/文学博士)がおススメしているのは島崎藤村の『夜明け前』です。本村先生はこう話しています。
「日本で明治以降の古典として大事だと思うのは、島崎藤村の『夜明け前』です。これは、本当に素晴らしい作品です。戦争を描いた小説にはトルストイの『戦争と平和』がありますが、それに匹敵するほどの、世界文学に伍す作品です。藤村の父に当たる人をモデルにしていますが、時代背景としては明治維新前後で、実に内容が素晴らしい」
『夜明け前』は大変有名な本なので、読まれた方も少なくないと思いますが、なぜ素晴らしいのか。どこが評価されているのか。教養として深める意味でも、いずれ収録をして講義として取り上げたい作品だと感じました。
このように、講師の先生がおススメする本、影響を受けた書籍などを今後も取り上げていきたいと思いますので、お楽しみに。
<今回ご紹介した講義はこちら>
学びとは何か、教養とは何か
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2126&referer=push_mm_edt
<今回ご紹介した特集はこちら>
大人の教養読書~講師が語る「私のおすすめ本」~
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=84&referer=push_mm_edt
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