編集長が語る!講義の見どころ
空海の真髄…「仏教」で心を高める/特集&鎌田東二先生【テンミニッツTV】
2025/01/24
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
あらためていうまでもなく、仏教の智慧はわれわれに大きなヒントを与えてくれます。
仏教が日本に伝えられた(公伝)のは6世紀のことですが、以来、大陸で興る新しい教えに刺激を受けながら、日本でも日本独特の宗教観が根づき、発展し、深められていきました。
ご近所にお寺があるのが当たり前の日本では、もちろん仏教は身近ではありますが、案外、その教えについては知らないことも多いもの。しかし、日本人が長い時間をかけて探究し、培ってきたものだからこそ、そこには「自分の心」に響くメッセージがふんだんに込められています。
本特集で、ぜひ私たちの心を高めてくれる日本仏教についての理解を深めましょう。
■特集:「仏教」で心を高める
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=158&referer=push_mm_feat
鎌田東二:アウトサイダーな乞食僧だった空海、なぜ密教の頂点へ?
藤田一照:自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
橋爪大三郎:世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
頼住光子:「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
大野玄妙:仏国土は水平的世界だが「浄土に登る」―日本的仏教観
北河原公敬:東大寺には大仏開眼以来1200年以上続く修二会の行法がある
■講座のみどころ:空海の真髄~日本文化の基盤となった教えとは?(鎌田東二先生)
日本でも数多くの名僧が生まれましたが、そのなかでもいちばん捉えどころが難しいのが「空海」かもしれません。
空海といえば真言宗の宗祖であり、空海が開いた高野山金剛峯寺や東寺をはじめ、真言宗のお寺も数多くあります。また、日本の各地に「弘法大師(空海)が杖をついて池になった」などの伝説も数多くありますし、空海が書の達人であったこともよく知られます。
ところが、「空海といえば密教」というところまでは教科書的に理解していても、その教えは……というと、なかなかパッとイメージが像を結びにくいという方も多いのではないでしょうか。
今回、鎌田東二先生(京都大学名誉教授)が、驚くほどにわかりやすい「空海の真髄」解説をしてくださいました。とりわけ、空海の「詩」を通じて見ていくと、空海の思想も非常によく伝わってくるというのです。
◆鎌田東二:空海の真髄(全7話)
(1)空海の半生と詩的感性で開く密教世界
アウトサイダーな乞食僧だった空海、なぜ密教の頂点へ?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5557&referer=push_mm_rcm1
鎌田先生は、まず講義の第1話で「詩が分からなかったら密教は分からない」と強調されます。そして、次のようにおっしゃいます。
《密教的感性というのは、秘密の世界や神秘の世界に入っていくもので、そういう感覚や感性は非常に芸術家的な感性です。では、真言宗の「真言」の感覚や世界は何によって研ぎ澄まされるのかというと、その一番核心のところに、いわゆる詩作、詩というものの感受があると思います》
そう指摘したうえで、空海のまことに波乱万丈の興味深い人生をご解説くださいます。
アウトサイダーでヒッピーのような乞食僧だった空海が、遣唐使船で中国にわたり(そこにも大きなドラマがあるのですが)、わずか1年半か2年くらいで中国の密教のトップになって帰ってきた。
現代でいえば、日本からの私費留学生が、オックスフォード大学やハーバード大学に留学して、1年半から2年後に「総長」になって帰ってきたようなものだと。
その奇跡的な歩みの詳細については、ぜひ講義第1話をご覧ください。
第2話以降で取りあげられるのは空海が書いた『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』です。
空海は、淳和天皇から「密教の世界観を、分かるように説いたものを献上せよ」と命じられ、力を込めて『秘密曼荼羅十住心論(十住心論)』を書きます。ところが、あまりにも高度な哲学書・宗教書だったので、献上された天皇も、よくわからなかった。
そこで天皇は「もう少し分かりやすく、コンパクトにまとめてくれ」と空海に再度命じた。それに応えて書いたのが『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』なのです。
『十住心論』で空海は、人間には、最初の低い段階から、大日如来という宇宙の中心神(仏神)である法身としての心まで、十住心すなわち「十の心・意識の段階」があると説きました。『秘蔵宝鑰』でもそのことについて説くわけですが、それぞれの段階の核心部分を「詩」にして、それをクライマックスとして載せたのです。
『秘蔵宝鑰』の冒頭にも詩が掲げられています。その書き出しは以下です。
《悠々たり悠々たり太(はなは)だ悠々たり 内外(ないげ)のケンショウ千万の軸あり
杳々(ようよう)たり杳々たり甚だ杳々たり 道をいい道をいうに百種の道あり……》
言葉のリズムを畳みかけながら、非常に壮大な世界観が描かれていきます。このドラマチックさは、あたかもインド映画で、あるシーンで急に歌が流れ、ワーッと群衆が躍り出すのに似てさえいると鎌田先生はおっしゃいます。
さらに心の十の段階のそれぞれに置かれた詩についても、そのいくつかをご紹介くださいます。
やはり詩は言葉のリズムや響きのなかで、感覚的・感性的に受け止めていくべきもの。その意味では、この講義で鎌田先生による詩の朗読が聴けるのも、まことに得難いことといえるでしょう。ぜひ講義第4話、第5話でご体感ください。
さらに第6話では、空海が書いた『三教指帰』についてご解説いただきます。
『三教指帰』は、ある不良少年が、儒教、道教、仏教の先生に出会って、それぞれの教えの根幹を学びつつ、最後に仏教の重要性に目覚めるという、ある種の戯曲形式の書です。そしてこの本にも、重要部分に「詩」が置かれているのです。
この講義では、その『三教指帰』のラストを飾る「十韻の詩」について朗読と解説をいただいていますので、ぜひこれもじっくり味わいたいところです。
最後の第7話で、鎌田先生は次のようにおっしゃいます。
《人(=一人ひとりの衆生)が苦行の道から涅槃寂静に至ればいいのである。その道を説き続けるのが、空海の生涯でした。そんな空海の生涯には、常に詩が鳴り響いていた。空海は、一人で宇宙オペラ、宇宙ミュージカル、空海ミュージカルを演じてくれていた》
《その空海ミュージカルは、『三教指帰』から『秘蔵宝鑰』まで、全てを貫いているというのが、私が漢詩から読み解く、空海の思想の核心にあるものです。それが日本の文化にとって、どれほどの重要な意味を持っているかは、計り知れないほどです》
今回の鎌田先生の講義は、その「空海の宇宙ミュージカル」を見事に現出していただいたものといえます。はたして、いかなる世界が広がるのか。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:「仏教」で心を高める
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=158&referer=push_mm_feat
◆鎌田東二:空海の真髄(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5557&referer=push_mm_rcm2
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=761&referer=push_mm_tanka
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