編集長が語る!講義の見どころ
哲学的に考えてみる~「世界哲学」とは?/特集&納富信留先生【テンミニッツTV】

2025/02/25

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

自分の頭で「哲学的」に考えてみる。そんなことができたら、どんなに素晴らしいだろうと思ったことはありませんか。しかし、そもそも「哲学的に考える」とはいかなることなのでしょうか。

この特集では、哲学史的な講義ではなく、実際に「哲学で考えていく」講義を厳選しました。先生方が実際に「哲学的に考える」プロセスやあり方を、とてもわかりやすくお話しくださっている講義群です。自分自身の頭で、深く考えていくためのヒントや方法論が満載です。


■特集:哲学的に考えてみる

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=128&referer=push_mm_feat

納富信留:日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義

中島隆博:人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

中島隆博×納富信留:「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ

一ノ瀬正樹:原因と結果の迷宮―因果関係と哲学

津崎良典×五十嵐沙千子:「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現


■講座のみどころ:世界哲学のすすめ(納富信留先生)

本日紹介するのは、納富信留先生(東京大学大学院人文社会系研究科研究科長・文学部部長・教授)が、現在取り組まれている「世界哲学」というプロジェクトについて熱くお話しくださった講義です。

これは、多くの哲学者が参加して進んでいる、まったく現在進行形の「新しい動き」です。そして、現代の人類が直面する数多くの問題に、哲学の立場からどのように真正面から向きあおうとする場合の1つの形がよくわかるという部分でも、大きな刺激をいただけます。

◆納富信留:世界哲学のすすめ(全9話)
(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5638&referer=push_mm_rcm1

では、「世界哲学」とはどのようなものなのでしょうか。納富先生はこうおっしゃいます。

《「これが世界哲学です。どうぞこれを見てください」というのでなく、むしろ「『世界哲学』という名前でみんな一緒にやっていきましょう」、あるいは「今まで行ってきた哲学や文化の研究を『世界哲学』という名前でもう一度再編しましょう」というプロジェクトです》

どういうことなのでしょうか。

納富先生は、今までの哲学は世界規模になっていないのではないかという問題意識を提起されます。たしかに、これまでは「哲学」といえば、圧倒的に「西洋哲学」のイメージが強くありました。

納富先生は第3話で、書店や図書館などで「哲学書」コーナーへ行くと、ほぼほぼ西洋哲学の本が並び、東洋哲学や日本哲学は「宗教コーナー」に仏教書などとして置いてあることが多いことを指摘されます。たしかに、そのような場合が多いことに、すぐ思い当たります。

さらにいえば、今まで無視されてきた哲学の中には日本も入るという点が重要だと、納富先生は強調されます。これまで日本のなかでは「日本には哲学はなかった」とさえいわれることさえありました。これは困ったジレンマではないかというのです(第3話)。

納富先生は、そのような西洋哲学中心主義的な考え方から、哲学をさらに世界に広げることで、新しい哲学のあり方を提示することが、今回、「世界哲学」をする目的なのだとおっしゃいます。西洋哲学の流れに入ってこない、さまざまな哲学の考えや伝統をすべて加えた形で、「もう一度みんなで哲学をしましょう」と訴えるのだと。

なぜ、それが必要か。それは、今までの哲学だけでは、現代の人類が直面する多くの深刻な問題の解決を考えていくにあたって、やはり不十分ではないかと思われるからです。

そのような問題意識から構想された「世界哲学」。では、納富先生はこれをどのように構想されているのでしょうか。

たとえば、「世界哲学」の「世界」とは、どのような意味の広がりがある言葉なのか。このあたりのお話しも、「哲学的に考える」という意味では、とても興味深いところです。

また納富先生は、アフリカや中南米の非常に豊穣な哲学の可能性、西洋でも感化されがちな正教会(ギリシア正教会やロシア正教会)、そして東アジアの儒教、仏教、道教、神道の可能性などを、「一つひとつ、小さな伝統や大きな伝統を掘り起こしながら一緒に共有していく」ことが世界哲学の具体的な遂行形態だと指摘されたうえで、次のようにおっしゃいます。

《つまり哲学というのは固定的なものではなく、時代や考え方や人によって、行ったり来たり混じったり、さまざまな影響があるわけです。そのときには「比較哲学」のような手法も改めて導入する必要があると考えます。そういう中で、現在21世紀の私たちが哲学をしていくのです》

そして講義は、納富先生のご専門であるギリシア哲学の特性の話へと進んでいきます。古代ギリシアで何が起こり、なぜ哲学の祖といわれるようになったのか。古代ギリシアの「観想(テオリア)」「アゴーン(競争)」「ロゴス(言論)」の文化は、いかに生まれたのか。

さらに納富先生は、言語の違いの問題をどう乗り越えるのか、哲学という共同作業が行われる場とはいかなるものか、世界哲学マップをどう描くか、などといった問題も提起されます。

まさに現在進行形の哲学を学ぶ愉しさに満ちた講義です。ぜひ、ご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:哲学的に考えてみる
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=128&referer=push_mm_feat

◆納富信留:世界哲学のすすめ(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5638&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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急坂をジェットコースターが下るごと人口は減るつるべ落としに

日本の人口がこれからジェットコースターのように落ちていきます。しかし高福祉国家の北欧でも少子化が進み…。本当に大切なことは何か、ぜひ森田先生の講義で。(達)

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5549&referer=push_mm_tanka