編集長が語る!講義の見どころ
日本人のルーツ~弥生時代の真実に迫る/特集&藤尾慎一郎先生【テンミニッツTV】
2025/05/06
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
考古学や歴史研究の進化によって、いま、弥生時代や縄文時代の「実像」がどんどん変わってきています。それらの時代に人々がいかに生きていたのかを知れば、「日本人とは何か?」の原点も見えてきます。さらに、ホモサピエンスはどうやって海を越え、日本に渡ってきたのか。遺伝子研究などから、日本人のルーツも明らかになりつつあります。
ぜひ、テンミニッツTVのそれぞれの講義で学び、太古のロマンに想いを馳せ、日本人のあり方について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
と、それらの講義を集めた特集をご紹介する前に……。
■【本日締切!】アンケート企画:トランプ関税をどう考える?
第2次トランプ政権が進めている関税政策などについての「会員アンケート企画」が、いよいよ本日(5月6日・火曜)締切です。今回も選択式ですぐにお答えいただける設問ですので、ぜひお気軽にご参加いただければ幸いです。
https://pr.imgs.jp/r.php?F4VUa3ckrc
■特集:日本人のルーツと3万年の歴史
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=90&referer=push_mm_feat
藤尾慎一郎:なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
山田康弘:高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
藤尾慎一郎:弥生時代の開始時期を発見した「炭素14年代測定法」とは
海部陽介:最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
斎藤成也:人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
■講義のみどころ:弥生人の実態~最新の研究結果が明かす生活と文化(藤尾慎一郎先生)
日本人のルーツを探るとき、もちろんその根幹たる「縄文時代」は重要ですが、それに続く「弥生時代」も極めて重要です。なにしろ稲作文化によって、それまでの文化が大きく変貌していく時代です。そればかりではなく、日本人の遺伝子的にも大きな転換を迎える時期でもあります。
「あなたは縄文系? 弥生系?」などという問いがなされることもありますが、最新研究で縄文系、弥生系の遺伝子が、現代の日本人にどれほど受け継がれているかもわかってきました。そこから見えるものとは?
探れば探るほど、興味深い弥生時代の実態を、藤尾慎一郎先生(国立歴史民俗博物館名誉教授/総合研究大学院大学日本歴史研究専攻 名誉教授)に教えていただきました。
◆藤尾慎一郎:弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化 (全11話)
(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5728&referer=push_mm_rcm1
まず第1話では、「なぜ弥生時代の開始時期が、紀元前10世紀頃までさかのぼったのか」を教えていただきます。おそらく、学校で「弥生時代は紀元前3世紀頃から」と学んだ方も多いはず。それがなぜ変わったのか。
そのことについては、藤尾先生の以前の講義《弥生時代の歴史~研究最前線 》でも教えていただきましたが、おさらいの意味も含めあらためて学ぶことで、考古学の進歩のあり方を知ることができます。
興味深いのは、「稲作の伝来は寒い時期とは限らない」ということ。朝鮮半島では、稲作が日本よりも100年くらい古く始まっていたといいますが、稲作が九州に渡来した時期は、過去3000年間でもっとも寒かった時期だったそうです。少しでも南で稲作をしたいと渡来してくるのもわかります。
しかし一度、日本に渡来すると、そこから東へ広がっていくのは、暖かい時期もあれば寒いときもあるのこと。このあたりの気候変動との関連も、とても興味深いところです。
さらに、弥生時代の日本の文化も、けっして「一色」ではなかったようです。加えていえば、朝鮮半島でももちろん水田稲作は行なわれていましたが、「弥生文化」はありませんでした。はたして、当時の日本の文化はいかに形成されたのでしょうか。
藤尾先生は、紀元前4世紀から紀元前1世紀には、日本に「4つの文化」が併存していたとおっしゃいます。「西の水田稲作文化」「北の水田稲作文化(青銅器文化。環濠集落が見つからない)」「続縄文文化(北海道。熊祭り的文化)」「貝塚後期文化(沖縄)」です。
それぞれが、どのような文化だったかは、ぜひ講義第2話をご覧ください。
また、とてもおもしろいのは、それぞれの文化が交流していたこと。当時、沖縄の海でしか取れない貝の腕輪が、なんと北海道の「続縄文文化」の地でも見つかるのだといいます。
第4話では、日本にあった穀物の野生種はヒエだけだったことが明かされます。アワやキビも、栽培種が外から来ないかぎり日本列島では出てこないはずなのです。一方、大豆やアズキは日本に野生種があったとのこと。豆は早くから栽培化に成功しているそうです。そのようなことも、縄文土器の分析からわかるのだというのですが……。
そして第5話から、いよいよ「弥生人と縄文人のDNA分析」です。
ところで、「DNAと遺伝子とゲノム」の違いがどのようなことか、おわかりになるでしょうか?ここも、藤尾先生がわかりやすくご解説くださるので、まことにためになります。
32億あるゲノムの中の99.9パーセントは、現在80億人ほどの人類ですべて一緒らしいとのこと。つまり、0.1パーセントだけが違うわけですが、なにしろ「32億の0.1パーセント」ですから、大きな違いともいえるかもしれません。
母系がわかるのは、ミトコンドリアDNAによる分析です。一方、父系がわかるのは、核ゲノム(Y遺伝子)による分析です。このような分析からわかることは、現代日本人の3割に縄文系の「Y遺伝子」があるということです。また、基本的に現代日本人は、だいたい12パーセントぐらいは縄文のDNAを持っているそう。もちろん、それも地域差があります。
さらに、弥生時代が始まってから1000年経っても、「100パーセント縄文人の遺伝子を持った人」が存在していたといいます。弥生人が縄文人を征服して皆殺しにしていったのではないということが如実に見えてきます。
ちなみに、縄文人の遺伝子はほとんど日本の外には見られないそう。とはいえ、朝鮮半島南部の遺跡から発掘された人骨のDNA分析では、そこで混血している形跡もあるといいます。それがなぜかも、ぜひ講義でご覧ください。
DNA分析と、埋葬文化などを比較しつつ見ていくと、日本の多層的な成り立ちが、とてもよくわかります。各地の遺跡の状況なども詳しくお話しいただいていますので、まさに必見です。
第9話からは、「弥生人の生活」に迫ります。衣服、食生活など、具体的に解き明かしていきます。
ちなみに、稲作がいちばん遅いのが関東南部(紀元前3世紀)。また、縄文と弥生では犬も違っているそう。加えて、弥生のブタも、日本在来の猪を飼いならしたのではなく、DNAは外からきているらしいとのこと。さらに、大坂ではタコ壺が多数出土するともいいます。
このあたりのことを聞いていくうちに、日本文化の土地ごとの違いに、ついつい思いを馳せてしまいます。
第11話では、「弥生人の死後の世界」そして「信仰の世界」に迫ります。そもそも縄文と弥生とでは、埋葬文化も大きく違いますが、それぞれが地域ごとに併存していました。たとえば縄文では「真ん中」に死の世界があったそうですが、それが弥生になると、格差ができて、人によって墓のあり方や距離が異なっていきます。しかしそれにも、もちろん地域差があって……。
知れば知るほど、もっともっと知りたくなってくる弥生時代の真実。ぜひじっくりとご視聴ください。
(※アドレス再掲)
■特集:日本人のルーツと3万年の歴史
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=90&referer=push_mm_feat
◆藤尾慎一郎:弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化 (1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5728&referer=push_mm_rcm2
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