編集長が語る!講義の見どころ
米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序/東秀敏先生【テンミニッツTV】

2025/05/23

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

アメリカのトランプ政権が「めざしているもの」は何なのか。そのことは、日々、目の前を通り過ぎてゆくトランプ関税などの経済ニュースや、ウクライナ和平などの国際ニュースを見ているだけではわかりません。

本日は、そのヒントをつかめる東秀敏先生(米国大統領制兼議会制研究所上級フェロー)の講義を紹介します。以前も書きましたが、東先生は、アメリカのトランプ派にも深い人脈を築いておられます。だからこそ、トランプ派の人々が考えていることが見えてきます。

トランプ大統領は、関税の発動日である2025年4月2日を「アメリカの解放の日」だと高らかに宣言しました。その真意はどこにあるのでしょうか。東先生はこうおっしゃいます。

《彼らトランプ政権の人たちが持っている問題意識として、第2次世界大戦後の米国主導の国際秩序が全ての元凶である》

はたして、どのようなことなのでしょうか。

◆東秀敏:米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(全3話)
(1)米国システム「解放の日」
グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5808&referer=push_mm_rcm1

さて、「第2次世界大戦後の米国主導の国際秩序が全ての元凶」とはどういうことか。

トランプ派は、アメリカが全世界の面倒を見るという構造でアメリカが損をしてきたという被害意識があるのだといいます。では、何をめざすのか。それが「米国システム(ザ・アメリカンシステム)」の復活です。

東先生はこうおっしゃいます。

《簡潔にいいますと、米国システムとは米国第1主義、つまりアメリカファーストの経済学に立脚してアウタルキー、つまり閉鎖経済を目指すというものです。今までこういう発想はアメリカの大学の経済学の授業でも否定されていた思想なのですけれど、これが現政権の公式の経済思想になりつつあるということなのです。(中略)つまり、彼らは世界に向けて関税という形で第1発目を撃ったわけなのです。これは世界に対する一種の経済戦争だということもできます》

これはもう、本質的な「世界観」の問題であることが見えてきます。

この方向性が、日本にどのような影響を及ぼすのか。その点についても、東先生は次のように指摘されます。

《米国第一主義(アメリカンファースト)のワガママに振り回されて国内政治がさらに迷走必至、そして国民の負担が倍増するという流れになっていきます》

日本は、アメリカンファーストを歴史的に見てもちゃんと理解できないので対応が難しい。これは1920年代の日本国内政治にも共通点が見られることであり、日本にとってまさに試練の時代になってきたのだと。

実際に、アメリカの貿易赤字は、2001年の中国のWTO加盟をきっかけに肥大化が止まらない状況になっています。第1次トランプ政権の関税政策で少し是正されましたが、バイデン政権になって再び貿易赤字が増えた。これをトランプ政権は大いに問題視しているといいます。

では、「米国システム」とは何なのか。

東先生は、これがアメリカの建国の父の一人、ハミルトンの思想に立脚しているのだといいます。端的にいえば、関税政策で国内産業を奨励し、大英帝国の自由貿易に対抗していこうとする考えとのこと。

これには4つの柱があるといいます。

●関税を推進し、国内産業を育成及び保護。
●第二合衆国銀行を通じ、財政安定を図る。
●国内インフラ開発の奨励。
●国内エネルギー及び資源の開発を奨励。

なるほど、これを透かして見ると、現在のトランプ政権との共通性も見えてきます。

トランプ2.0での焦点を、東先生は次のように指摘します。

●国内経済の再活性。
●先端技術における世界的リーダーシップ。
●宇宙開発。

そして、東先生は「さらに重要な指摘」をされます。実は喫緊の課題は、「アメリカの財政破綻の回避」なのだと。

2025年に7兆ドル分の米国債の満期が到来する。これは、従来の経済政策では財政破綻不可避のもの。だからこそ、関税の連発という荒業で意図的に市場を暴落させ、米国10年国債の利回りを下げることが真の狙いなのではないか。

このような狙いを、トランプ政権内の誰が抱いているのか。トランプ政権内部でどのような派閥抗争があるのか。その点も東先生はご指摘くださいます。

東先生の講義を見ていると、歴史的底流と現実政治の連関を考えることの重要性が見えてきます。考えてみれば、第2次世界大戦当時の日本についても、明治維新以来の「尊皇攘夷(欧米列強の進出に対する抵抗)」という座標軸を設けると、その当時の日本人の心性がクリアに見えてくる面もあります。

その国における歴史的な思想の流れは、けっして「世迷言」ではなく、当事者たちにとっては「熱いリアル」であることが見えてくる講義です。現在の状況分析の一助として、ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆東秀敏:米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5808&referer=push_mm_rcm2