編集長が語る!講義の見どころ
快適な暮らしへの「科学」~断熱を考える/前真之先生&特集【テンミニッツTV】

2025/06/13

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

「科学」は暮らしをどんどん便利に、快適にしてきました。案外そのことを、科学文明にどっぷり漬かったわれわれは忘れがちなのかもしれません。

では、これから「科学」はどのように私たちの暮らしを変えてくれるのでしょうか。

「断熱」のように直接的な「暮らしの改善」につながる科学もあれば、お肉の明るい未来への新技術もあります。熱を電気に変える新素材もあれば、進化人類学から考える「真の意味で人間らしい暮らし」への探究もあります。そして社会全体のリデザインも……。

私たちの「よりよき暮らし」とは何かを、科学から考えてみましょう。


■特集:快適な暮らしへの「科学」

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=263&referer=push_mm_feat

前真之:なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題

竹内昌治:食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る

山本貴博:熱を電気に変える新素材「カーボンナノチューブ」とは何か

長谷川眞理子:人はなぜ病気になるのか――進化医学で考える4つの原因

小宮山宏:木造ビルで20階…新しい暮らしを支える森林産業の確立を


■講義のみどころ:断熱から考える快適で健康な住環境(前真之先生)

本日は特集のなかから、「断熱」研究の第一人者でいらっしゃる前真之先生(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授)の講義を紹介します。

近年の夏の、連日35度越えの猛暑は、本当に身体に応えます。さらに、電気代など高騰もバカになりません。快適に過ごすためには、どうすればいいのか。

その1つの選択肢が、「住まいの断熱」であることは間違いないことでしょう……などと書くと、どこかの宣伝じみてしまいますが、いえいえ、テンミニッツTVでは、前真之先生に最新の研究をふまえた「断熱の効果」について教えていただきました。

もちろん、断熱が有効なのは「夏」ばかりではありません。「冬の寒さ」にも、断熱をしてある家は暖房をそれほどしなくても……などといわれます。断熱について考えるのに、遅すぎることはありません。

◆前真之:断熱から考える一年中快適で健康な住環境(全6話)
(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5439&reerer=push_mm_rcm1

前先生は、直截にこうおっしゃいます。

《「断熱」という言葉は、最近少し耳にするなと思われた方もいらっしゃるかもしれませんけれど、まだまだ日本では理解されていません》

《断熱が足りないので日本の家は冬寒く、夏暑いのです。だから断熱すると冬は暖かくなる、夏は涼しくなるのですけれど、そのメカニズムを始めにしっかり見ていきましょう》

この講義でまことに楽しいのは、温度を視覚的に見ることができる遠赤外線カメラの画像を、前先生が次々にご紹介くださることです。

前先生は、夏の気温がどれだけ上がっているかのデータも図示くださいます。たとえば東京で、1920年と2023年を比べると、年の最高気温が34.8度から37.7度へ3度上がっています。また、真夏日(最高気温が30度以上)が年間40日ほどから90日へ、猛暑日(35度以上)は0日から22日へと増えているのです。

実感はしていても、最高気温が3度も上がり、真夏日がこんなに増えていると聞くと、あらためて呆然としてきます。

では、建物のなかはどうなっているのか。これも、講義第2話で示される遠赤外線カメラの画像で、ぜひご覧ください。冷房や断熱が弱い家の画像を見ると、これはもう、熱中症になってしまうのも、むべなるかなです。

もちろん冬もそうです。たとえば、昔ながらの家の囲炉裏端(いろりばた)の場合はどうか。当然、断熱はまったくなされていないので、あったまっているのは、囲炉裏に向かっている身体の表面だけで、背中はまことに寒そうな画像です。それは断熱が弱い家でストーブを焚いても同じです。

さらに怖ろしいのが、耳にすることも多いヒートショック。暖かい部屋から寒い部屋に入ったりすると、命を落とすような健康被害が起きかねないことです。頭でわかってはいても、どのくらい気温が違うかを視覚的に見ると、大いに考えさせられます。

前先生は、日本の建物の4つの弱点を次のように挙げます。

(1)窓が弱い
(2)床が弱い
(3)屋根・天井が弱い
(4)壁が弱い

……全部ではないか、ということになりますが、現実にそうだといいます。

では、断熱をどう進めるか。その具体的な方法とその効果については、第3話以降で詳細にご解説いただいています。百聞は一見に如かず。まさに動画講義の美点で、ぜひ提示される図や画像とともに、前先生のお話をご視聴いただければ幸いです。

たとえば、断熱はどこまでやればいいのか。国土交通省が定める「断熱等級」の違いで、実際にどのくらいの差が出るのかなども、遠赤外線カメラの画像で見ると、一目瞭然です(第5話)。

前先生はこうおっしゃいます。

《断熱等級6以上になりますと、家中がくまなく暖かいという状況ができます。最上位の断熱等級7になってきますと、もうほとんど暖房がいらないのです。窓から入ってくる太陽の熱だけで十分暖かいという家を造ることができます》

その効果はもちろん、夏も然りです。

新築ばかりではなく、リフォームでも効果はあがります。前先生は「弱点の順番に行う。何よりまず、いちばん弱い窓をちゃんと直す。次に、床を直す。そして屋根・天井を直すという、この3つはしっかり行っていただきたいと思います」とおっしゃいます。

その具体的方法も、第6話でお示しくださいます。

断熱リフォームについて様々な行政からの補助金もあるなか、「なるほど、これは一考すべきかも」と痛感される講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
■特集:快適な暮らしへの「科学」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=263&referer=push_mm_feat

◆前真之:断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5439&referer=push_mm_rcm2