編集長が語る!講義の見どころ
コロナ危機と経済を考えるときに大切なこと/伊藤元重先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/12/18
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
Go Toキャンペーンが全国で一時停止されることになり、メディアなどでも経済の先行きについての不安が取り沙汰されています。少し前までは「Go Toは即時中止すべき」という論調も目立っておりましたので、メディアの報道姿勢には驚きを隠せませんが、しかし、「コロナ感染対策」と「経済のバランス」が本当に難しい問題であることは、いうまでもありません。
本日は、伊藤元重先生(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)に、コロナ禍における経済をどのように考えたら良いかをわかりやすく整理いただいた講義を紹介します。
◆伊藤元重:コロナ禍の世界経済とその行方(全2話)
(1)コロナ危機と二つのニュース
コロナ発生から半年以上、良いニュースと悪いニュースとは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3781&referer=push_mm_rcm1
伊藤先生はまず、今年の3月から4月にかけて、元FRB議長のバーナンキが発言していた「今の危機は吹雪みたいなものだ」という表現に言及されます。外に出たら命が危険になるから、ロックダウンするしかない。しかし、特に貧困層を中心に命の危機にさらされるから、政府はそこを支援しなければならない、ということです。
しかし、伊藤先生はこの比喩は大きな誤解を招くところがある、とおっしゃいます。吹雪は1週間か10日もすれば収まるが、コロナが非常に長い闘いになっていることです。
伊藤先生は、このバーナンキ発言のポイントは「コロナがきっかけになって金融危機を起こしてはいけないということだっただろう」と喝破されます。深刻な金融危機が起きれば、そこから回復するのは6年から8年の期間がかかるであろうからです。
幸い、現時点では金融危機は起きていません。一時的にはもちろん株価は暴落したものの、これは中央銀行の政策でなんとか留まって、この先どうなるかはわかりませんが、現時点ではむしろ株価は非常に高い水準を維持している。株価だけではなく、債券市場や資金市場も非常にうまく回っている。
そのことはグッドニュースと評価しつつ、伊藤先生が懸念されるのは、「日本型現象」が欧米を中心として世界に広がっていることです。「金利が非常に低く、経済成長率も低く、そしてインフレ率も非常に低いという、いわばデフレ的な状況」を指します。
それでも経済をなんとか支えるために、政府は財政赤字を抱えながらも財政刺激を続け、中央銀行は金融緩和を続けました。その結果、「実体経済に比べて株価が高すぎる状態になっているのではないか」という声が上がっていることを、「バフェット指数」なども取り上げながら紹介されます。しかもこの現象は、コロナ以前からのものでした。
「このようなあり方が、今後どのように調整されていくのかという意味で、金融は非常に気になる」という伊藤先生のご発言は、とても重要でしょう。
伊藤先生は、これからのマクロ経済を見るときの大きなポイントとして、「金融危機が起きず、このまま安定的に行けるかどうか」と「コロナの感染をなかなか十分に抑えることができないなかで、経済がどこまで戻っていくか」という2点を挙げられます。
そして何より重要なことは、伊藤先生が「Go Toキャンペーンのような形で、人々の消費行動を変えるのは非常に有効だし、これはこれでいいけれども、企業が積極的に投資をしたり、あるいは需要が本格的に戻ったりするような政策がまだ見えていない」ことを懸念されている点です。
たしかにコロナを克服する過程で、日本を、より強く新しい段階に進めるための取り組みをしていくことが必要不可欠であるはずです。デジタル化の推進、規制改革、新しい産業の興隆、医療制度改革、幸福な高齢化社会の建設など、日本の課題は山積です。
松下幸之助は「好況よし、不況さらによし」といいました。不況の折に、自らの体質を見直して力強く改善できれば、より強い企業になれるという発想です。もちろんコロナ禍は生命にかかわる危機であり、「さらによし」などといえるものではありません。しかし精神としては、危機に打ち克つためにも、この機に強い体質をつくりあげることを志向すべきでしょう。
現在、いうまでもなく政府が支えていかねばならない局面です。現実に、巨額の予算が組まれています。しかし、それが雲散霧消する予算になるのか、日本を強くするための予算になるのか。まさに1つの正念場ではないでしょうか。問題を見抜く眼と、問題を解決する構想力が問われるところでしょう。そのことを深く教えてくれる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆伊藤元重:コロナ禍の世界経済とその行方(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3781&referer=push_mm_rcm2
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.16
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今回の○○は、江戸幕府を開いた「徳川家康」です。
家康は江戸に移ってから1世紀もたたないうちに、江戸を世界屈指の行政中心地、大きな都市として育て、さらに偉大なる消費都市へと成長させたという功績があります。清潔な上水道、そして清潔な下水道、こうした上下水道の完備。あるいは魚市場、青果市場等を中心とするような各種の市場の整備、日常の庶民生活の基盤の確立。
朝、目が覚めたらそこにしじみ売りが来たり、豆腐売りが来たり、油揚げ売りが来る。そして、庶民たちはそこで非常に新鮮な惣菜を、朝食のおかずとして食べることができた。こういう幸せな国民というのは、世界史を見てもなかったといってよいかと思います。つまり日常の庶民生活のめりはりの利いた基盤を確立したのは、家康の江戸入府以来のことです。
危機の時代に見習うべきリーダーは徳川家康である
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3553&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「医療・健康」ジャンルのクイズです。
昔、学校でプールの授業があったとき、「水道の水で〇を洗いなさい」と言われなかったでしょうか。最近では、それが〇に良くないということが分かったそうです。
さて〇には何が入るでしょうか?
答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1634&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、先月からシリーズ講義「キャリア転換で人生を成功させる方法」が始まりましたが、こちらは男子400メートルハードルの日本記録保持者でもある元陸上選手の為末大先生(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事)が新講師として登場されています。
すでに多くの方がご覧になっていると思いますが、これからという方のために、私が特に印象に残った5話目の以下のお話をご紹介したいと思います。
"スポーツの世界のセカンドキャリアにおいて特徴的なのが、選手が相談に来て、「今すぐ連絡して話ができる友だちを20人挙げてみて」と言って挙がった20人のうち、半分以上というか、7割くらいがアスリートや自分と同じ競技の人だったりすると、これは赤信号なのです"
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3762&referer=push_mm_edt
実はこの話を聴いて思い出したのが、前野隆司先生(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)の講義のなかに出てくる以下の話でした。
"友達の数は少ないより多いほうがいいのですが、それよりも友だちの多様性のほうが幸せに寄与するのです。したがって、やたらと友だちが多いよりも、多少少なくてもさまざまな種類の人と付き合っているほうが幸せになるのです"
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3530&referer=push_mm_edt
友人の多様性については、折れそうになったときに立ち直る力を指す「レジリエンス(resilience)」に関係するという話ですが、幸せという点だけでなくセカンドキャリアにおいても大事なポイントだということですね。
なお、シリーズ講義「キャリア転換で人生を成功させる方法」(全7話)はあと2話残っていますが、22日(火)と29日(火)に配信予定となっております。ぜひご視聴ください。
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