編集長が語る!講義の見どころ
勝てるリーダーとは?自民党総裁選を『孫子(虚実編)』から考える/田口佳史先生【テンミニッツ・アカデミー】

2025/10/03

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

明日、10月4日(土)は自民党総裁選の投開票が行なわれます。いうまでもなく、実質的に次の総理が決まる局面でもあります。石破政権の下、自民党にとって難局が続きましたが、その間、日本を取り巻く状況も内外ともに厳しさを増しています。誰がリーダーに選ばれるか次第で、日本の命運も大きく変わるといえるかもしれません。

はたして、リーダーにとってどのような心構えが大切なのか。本日はそのことを深く考えることができる『孫子』の智恵をご紹介いたします。

テンミニッツ・アカデミーでは、田口佳史先生に『孫子』を読み解いていただくロングランシリーズを展開しております。本日はそのなかから『孫子』の6編目にあたる「虚実編」の講義を紹介します。

田口先生は『孫子』から現代的なメッセージを次々と汲み出してくださいます。教えの数々が、胸に響きわたります。

◆田口佳史:『孫子』を読む:虚実篇(全6話)
(1)いかに主導権を握るか
「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4326&referer=push_mm_rcm1

まず、「虚実編」の「虚実」とはいかなることなのでしょうか。

田口先生は、「虚実というものは空虚と充実であり、空虚というのは手薄ということで、充実というのは手厚いということ」と述べたうえで、次のようにご解説くださいます。

《人間の組織について、軍隊ばかりではなく、企業なども全て充実させることはできません。そこで、ここはいい、ここは駄目だ、というそういう空と虚、まさに虚実をしっかりとしつらえることがまず大切なのです。その意味で、どのようなものが薄手で良くて、どのようなところが手薄では駄目なのかということを、今回は読んでいきます》

《もう1つは、虚偽と真実という虚実があります。常に充実した状態を維持するということはなかなか難しく、時と場合によっては、こちらのほうが本当は充実しなければいけないところが手薄になってしまうこともあります。そういうときに、どのようにそれをカバーしていくかということもしっかり考えていかなければいけないことを言っています》

たしかに、常に万全の体制をつくっていくことが理想とはいえ、そうもいかぬことが多いもの。戦争はもちろん、スポーツであれ、企業経営であれ、常に「万全の状況で戦える」ことばかりでないことは、あらためていうまでもありません。

現在の日本も、まさにそのような状況といえるでしょう。『孫子(虚実編)』の教えを、よくよく噛みしめるべきゆえんです。

田口先生の『孫子』講義は、『孫子』の原文を逐語で読解していきますので、小難しく見えてしまうかもしれません。しかし、田口先生は現代的な事例をふんだんに取り入れながら、まことにわかりやすく「その心」をお話しくださいますので、味わえば味わうほど多くのヒントを得ることができます。

たとえば田口先生は、こうおっしゃいます。

戦うときのセオリーは、相手より遅れてあたふたと戦いの場に駆けつけるのではなく、余裕を持って待ち構えること。しかし、たとえ、あたふたと戦いの場に駆け込まなければいかないときであっても、余裕綽々(しゃくしゃく)な心持を全員が一瞬にして持てるようにしていくのが優秀なリーダーの役割だ。

まことに考えさせられるご指摘です。スポーツでも、強いチームはたとえ不覚の先取点を取られても、いつ逆転されるかわからないという畏怖を感じさせるものです。

さらに田口先生は『孫子(虚実編)』の「故に善く戦ふものは、人を致して人に致されず」という名言を紹介くださいます。簡単にいえば、「主導権を取られてはいけない」ということです。

そのためにどうするか。

「能く敵人をして至るを得ざらしむるは、之を害すればなり」。敵に主導権を取られぬためには、うまく妨害しなければいけない。スポーツにおけるファインプレーなど、敵の流れを断ち切ることは、その一つでしょう。相手を余裕綽々(しゃくしゃく)にさせないことです。

一方で、自分たちはその戦いの場に「土地勘」がある人をきちんと用意しておくことも大切だといいます。「千里を行きて労せざるは、無人の地を行けばなり」。障害が多かったり、敵が待ち伏せしていそうな道を採るのではなく、準備をしながら楽に勝てる手を積み重ねていくということでしょう。

田口先生は、さらに興味深い指摘をされます。『孫子』は「無」を非常に重視しているというのです。

「微なるかな、微なるかな、無形に至る」「神なるかな、神なるかな、無声に至る」……相手に形を見せず、音も立てない。そうすれば、相手はどこから攻めてくるのかわからなくなるし、どうやって攻めればいいかもわからなくなる。反対に、こちらは相手をよく知って、相手が攻められたら嫌な貧弱なところを的確に攻めていく。

選挙などの折でも、自陣営からポロポロと不祥事を出すようなケースは最悪ということでしょう。

さらに田口先生は「悲観的に準備して、楽観的に行動する」ことの凄さを強調します。たとえ敵の兵数が多くても、戦略で相手をバラバラにしてしまえばいい。

「故に曰く、勝は為すべきなり」。勝ちを得るには、積極的にこちらが何としても勝とうとして、そうすべく戦略を組み立てることが大切なのです。

『孫子(虚実編)』には、さらに「無形」の大切さを語る言葉があります。

「故に兵を形するの極は、無形に至る。無形なれば、則ち深間も窺ふ能はず、智者も謀る能はず」

この言葉をもって田口先生は、「老子と孫子はものすごく身近な存在だ」と指摘します。老子は「しなやかさ」を説いているが、しなやかさをもう少し深めると、「しなやか」が「したたか」になるのだと。

ここも味わい深い言葉です。

このように教えていただくと、『孫子(虚実編)』の最後に置かれた言葉が、まっすぐに心に入ってきます。

「夫(そ)れ兵の形は水に象(かたど)る。水の形は高きを避けて下きに趨(おもむ)き、兵の形は実を避けて虚を撃つ」

「故に五行に常勝無く、四時(しいじ)に常位無く、日に短長有り、月に死生有り」

まことに印象深い言葉ですが、その解釈はぜひ講義の最終話をご参照ください。

置かれた状況や立場によって、田口先生の講義は多面的な気づきを与えてくれます。ぜひ「虚実編」以外の編も含め、田口先生の『孫子』講義シリーズをご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆田口佳史:『孫子』を読む:虚実篇(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4326&referer=push_mm_rcm2