評価をめぐる三つの問題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「着順」は分かりやすいが「判定」や「審査」は難しい
評価をめぐる三つの問題
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
陸上競技や水泳のように「着順」を競う競技の勝敗は分かりやすいが、体操や柔道などの判定は難しい。「評価」の中に「判定」や「審査」が入ってくるからだ。それらの関係は一体どうなっているのか。また、一点刻みで入試の合否を決めることは間違っているのか。さらに「ベストセラー」と「ベスト」は必ずしも一致しない。これら三つの「評価」をめぐる問題について、政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏のお話を伺った。
時間:10分55秒
収録日:2016年8月29日
追加日:2016年9月16日
≪全文≫

●分かりやすい着順と分かりにくい判定


 それでは、「評価」という話をいたします。日常的に接している「評価」にはいくつかの事例があるので、まず具体的な話から始めたいと思います。

 例えば、オリンピックを見ていると、陸上競技や水泳の場合は非常に分かりやすい。時間でも見ることができるし、タッチやゴールを越えた瞬間を見てもいいので、1着は誰が見ても1着です。一方、体操やフィギュアスケートでは、審査が加わってきます。柔道やレスリングも「一本勝ち」だと簡単ですが、「判定」的なことが入ると、「なんでこれは?」と首をひねるように、体操などの判定にも分かりにくいところがたくさん出てくるわけです。

 では「評価」と「着順」を決めることの関係はどうなっているのか、その疑問が一つ目です。

 二つ目は、よく大学の入試で「一点刻みの点数で合否を決めるのは良くない。もっと幅を持たせろ」と言う人がいます。特に政治家に多いのですが、「尺度」というものがまったく分かっていません。なぜ分かっていないのかということを、後ほど申し上げます。

 それから選挙の場、あるいはマーケットでは、「売れたか」「ベストセラーはどれか」という話があります。しかし、ベストセラーの車とベストの車は、実は一緒ではありません。ベストセラーからノーベル賞まで、「審査」と「売れる」、つまり数が多いことは、実は同じではないということです。

 これら三つのことをお話ししますが、実はこれらは関連しているわけです。


●審査は多次元尺度、勝敗は1点刻み


 100メートル走で誰が1位かの着順を決めるのは、尺度を一次元的にしているから決めやすいわけです。(一次元的な尺度とは)「速さ」や「高さ」や「重さ」などです。重量挙げでたくさん重いものを上げたら、それは勝つ。さらに誰が勝者かは、バスケットボールであろうとサッカーであろうと、1点差で決まる(碁の場合は「半目勝ち」がありますが)わけです。

 ところが、「審査」では通常、多次元尺度か合成尺度が用いられます。「技術点」や「芸術点」があって、それらを足し合わせます。さらに、チェックする項目は何項目にもわたります。こういうことが、体操などでも出てくるわけです。

 そうなると、入試のときの1点刻みは当然出てくる話です。百点満点にしても千点満点にしても、合否の境目は「1点」です。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(1)精神分析の概念とその起源
なぜ心の病にかかるのか?ラカンの精神分析とその起源
斎藤環
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明

人気の講義ランキングTOP10
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
中国春秋戦国時代と始皇帝(4)秦と周辺国の激烈な戦い
秦と周辺国の激戦の真実に迫る…各国の兵力と秦の戦略とは?
鶴間和幸
編集部ラジオ2026(23)上半期人気ランキングBest30
【編集部ラジオ】令和8年上半期人気ランキングBest30
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
日本の財政の真実を検証する(4)日本の台所事情と財政の本義
「1秒間に41万円?」…この数字はいったい何を意味するか?
宮本弘曉
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(4)福田恆存とは誰か?
「一匹と九十九匹と」…政治と文学の関係を問うた福田恆存
浜崎洋介