10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

次期アメリカ大統領はブッシュとオバマの中間線が望ましい

次期アメリカ大統領に望む中東政策「5つの提言」

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
ホワイトハウス
アメリカ大統領選挙の行方は「神のみぞ知る」不可知領域に入っている。今回は、ヒラリー氏、トランプ氏の二人の候補者のどちらが大統領になった場合にも共通の最優先課題である「中東政策」について、歴史学者・山内昌之氏がシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」からの助言を紹介しながら解説する。
時間:10:41
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/06
ジャンル:
≪全文≫

●不可知領域に入ったアメリカ大統領選挙の行方


 アメリカ大統領選挙が近づいてきました。最近ではヒラリー・クリントン民主党大統領候補者が病気(肺炎)で倒れるという報も伝わってきています。また、ドナルド・トランプ氏とクリントン氏の間には、最近のシリア問題やイラン問題をめぐって「実は中東こそ外交の最大の焦点である」という話も伝わってきています。

 どちらが大統領になるかについては、基本的にはトルコ語に「アッラーフビル(アッラーが知り給う)」という言葉や、また「インシャーアッラー(アッラーの思し召しのままに)」という言葉がありますように、いずれにしても不可知の領域に入ることですが、さまざまな調査によってクリントン氏優位に推移してきた差をトランプ氏が狭めてきたという説が伝わってくれば、CNNの最新の調査ではトランプ氏の支持率が2ポイントほどクリントン氏を上回ったという説も聞こえてきます。


●どちらが大統領になっても共通して残る「中東政策」問題


 しかし、この二人のいずれが大統領になったとしても、中東政策をどうすればいいのか、という問題は残ります。常識的なことは、ただちに分かります。おそらく彼らはバラク・オバマ大統領以上には、イランに対して宥和的な政策は取らないであろうという線、そしてシリア問題に関しての画期的な手を打つことは難しいだろうという点など、いくつかのことが考えられますが、彼らが何をすべきかについても、どちらが大統領になろうと共通する点があります。

 そうしたシナリオについては、アメリカのシンクタンクや専門家もいくつか考えています。今日、私が注目しておきたいのは、アメリカにある「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」というシンクタンクの中東安全保障プログラムの部長であるイラン・ゴールデンバーグ氏がまとめた「次期大統領になるべき彼もしくは彼女に対する助言」というべきレポートです。

 これはなかなかよくまとまっています。私の理解したところで皆様にご紹介すると、次のようなものになります。


●就任100日以内に中東歴訪宣言を明示する


 まず、「就任100日以内にメッセージを発しなければならない」ということです。これはオバマ大統領のプラハ演説やカイロ大学演説と比べても、誠に積極的な提言だと思います。

 第一段階はまず、誰が大統領になっても、アメリカとの緊密な同盟圏や中東地域のパートナーに対して、中東を大統領が歴訪することをはっきり公言することが大事だと言っています。そうした国々として挙げられているのは、最大の同盟国であるイスラエル、王政国家であるヨルダン、サウジアラビア、UAE、ついで最近関係がギクシャクしているトルコ、エジプト、さらにイラクなどが考えられています。

 もちろんこうした訪問は、究極的にはシンボリックなものであり、実質的な効果や成果が必ずしも出るものではありません。それでも、こうして早期に中東を歴訪するということは、昨年のウィーン最終合意(JCPOA)によるイランとの核合意でしばしば言われる「アメリカが中東を出ることになった」「イランに対して宥和的・妥協的な態度をとった」などのアラブの国々やイスラエルからの批判をかわし、「アメリカは中東にとどまる。イランを基軸とするような戦略は考えていない」という内容をメッセージとして発するという意味で大事だと思うのです。


●ハイレベルな省庁間連絡委員会で安全保障を再検討


 アメリカの中東政策は各部局省庁間で、かなり割れています。そこで、第二段階は「inter-department」として、ハイレベルな省庁間の委員会をつくる。ペンタゴン、CIAその他の情報機関、国務省、国家安全保障会議、ホワイトハウスなどの間に連絡委員会をつくって、アメリカの中東におけるパートナー国家にも大きな責任を持たせるような視点をつくりだしていく。そして、そうした視点を持ちながら、中東における安全保障上の「真空」を埋めるべく、戦略的なレビュー(再検討)をしなければならないことを提言しています。

 この最初の対象がいうまでもなくイラクとシリアに置かれるべきであるのは、当然のことでしょう。そこで行われる検討結果や目標については、リビアやイエメンにも適応できるような「モデル」にすべきであるとも、提言しています。


●イランとの妥協ない対決姿勢は大きなメッセージ


 第三段階としてゴールデンバーグ氏がまとめた提案は、「100日以内に大統領は、中東の不安定化(instability)を起こしているイランの振る舞いを厳しくたしなめ、それを押し返すような一連の新しいオプション(施策)を軍や諜報機関に問い掛けて考えさせ、発展させるべきだ」というものです。つまり、イスラエルや湾岸諸国(GCC)といったイランの脅威を受けている国々の関係者との仕事を...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。