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GPIFのポートフォリオの見直しのポイント

公的年金運用の基本姿勢を考える~GPIFの基本ポートフォリオの見直し~

植田和男
共立女子大学国際学部教授/東京大学金融教育研究センター センター長
情報・テキスト
巨額資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ見直し作業に注目が集まっている。より高い運用成績を求める声もある中、そのあるべき姿と現状について解説する。「植田和男の金融経済シリーズ」第2回。
時間:13:03
収録日:2014/05/01
追加日:2014/05/08
タグ:
≪全文≫

●GPIFの運用姿勢に注目が集まっている理由


 今日は、最近非常に話題になっているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による公的年金積立金運用について、いくつか基本的なポイントをお話ししたいと思います。
 
この積立金は非常に大きな額にのぼり、百数十兆円の残高があります。現在はおおまかに4種類の資産に分けて運用していて、日本の国債や国債に近いものが約60パーセント、国内株式12パーセント、外国債券11パーセント、外国株式12パーセント、キャッシュ5パーセントという基本線で運用を行うことになっています。これを「基本ポートフォリオ」と呼び、5年に1回見直すルールがあります。2015年の3~4月がその5年目にあたるため、現在は新しいポートフォリオ決定に向けた作業が進行中で、非常に話題を呼んでいます。
 
さらに、より足元の状況を申し上げれば、昨年5月以降、国内株式のパフォーマンスはあまりよくありません。その中で、GPIFが株式への運用割合をもう少し高めれば、国内株式全体が好調になり、日本経済のパフォーマンスを向上させるのではないか。アベノミクス全体の成功にもつながり、年金運用のパフォーマンスもより上がるのではないかという思惑が、政府を中心に出ております。そのようなこともあり、運用姿勢への注目が集まっているのだと思います。


●国債中心と株式中心のリターン・リスクを比べてみる


 繰り返しになりますが、現状は日本の債券(国債)を中心とした運用となっています。これを、もう少しリスクを高める方向に動かせばどうかというのが大きな論点ですので、リスクを高めることがよいことなのかどうかから考えてみたいと思います。

 国債と株のリターン・リスクを比べるために、日本を含む先進国の過去データを参照してみると、平均的には、株のほうがリターン・リスクともに高いことがわかります。つまり、大きなリターンが得られる可能性はあるものの、場合によっては、何パーセントかの確率で運用に失敗し、積立金がゼロになる可能性もあります。そうなると、将来の年金受給者への年金支払いが強制的にカットされるという事態も念頭に置いておかなければなりません。

 また、一つ注意していただきたいのは、株のリターンのほうが高いのはあくまで世界平均であり、日本の過去20年は例外に当たっていたという点です。この期間はご案内のとおり、株を持っているより債券を持っているほうがよかった時代でした。そのぐらい、どちらで運用するかは難しいということであります。


●将来の公的年金の受給者のための運用を目指して


 それでは、国債で運用するか、株で運用するか。要するにどれくらいのリスクを取るかという決断は、どのように決めたらいいのでしょうか。この場合、お金持ちが自分の資産を勝手に運用しているわけではないので、積立金運用が何のためか、つまり目的を考えなければなりません。これは明らかに、将来の公的年金の受給者のための運用なのです。

 ちなみに、日本の公的年金制度は「修正積立方式」と呼ばれています。将来年金を受け取る人のお金は、その時の現役世代が払う保険料で賄うシステムになっていますが、人口の高齢化が進行する中で将来の保険料だけでは足りないため、今ある積立金の運用収益を充てて、補填する仕組みになっています。

 将来どれくらいの年金が支払われるかは、ルールによってある程度約束されています。その約束を守るためには、ある程度以上の運用収益を上げていかないと、年金システムが回らないことになります。このために必要な運用収益、あるいは百数十兆円を年率何パーセントの利回りで回せばいいのかの水準を「要求利回り」と呼びます。

 結論としては、この要求利回りが非常に高いときは、債券による運用では年金制度の安定は覚束ないわけです。この場合はリスクを取ってでも、株等のリスク性の資産運用率を高めざるを得ません。逆に要求利回りが低い場合は、無理にリスクを取る必要はなく、国債中心の運用で十分であるという決断になるかと思います。


●過去5年間の評価から、今後5年間の見通しを考える


 では、要求利回りはどのように決まるのでしょうか。これは5年に1回、厚生労働省が計算する仕組みになっています。このとき同時に債券運用と株式運用の場合の利回り計算についても、厚生労働省による見通しが発表されます。現在はちょうど計算中で結論は出ておらず、1、2カ月中に判明する予定となっています。

 5年前に行った計算では、要求利回りは4パーセント強、見通しは債券中心の運用で4パーセント強の利回りが確保できるという見通しでした。したがって、これに基づいた債券中心の資産運用が組まれたわけです。

 実際にどうだったかを振り返ると、債券中心で...
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