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地殻変動的なドル高円安と今なお強いアメリカの影響

2017総選挙と円相場とアベノミクス(2)地殻変動的円安

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
ロナルド・レーガン(第40代アメリカ合衆国大統領)
シティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏が、2017年10月の総選挙を終えた現在、これまでのアベノミクスの総括と日銀の金融緩和の影響について、円相場との関係を軸に解説する。現在のドル高円安の進行は、高島氏が「地殻変動的」と表現するほど例外的パターンといっていいものだ。しかしその経緯には、歴史的な日米の力関係を抜きにしては語れない、黒田日銀の采配があるのだ。(全3話中第2話)
時間:10:41
収録日:2017/10/25
追加日:2017/11/19
ジャンル:
≪全文≫

●日本の輸出競争力の強さを示す購買力平価


 今日の2点目のポイントは、アベノミクスを総括することです。基本的にはアベノミクスの下で、急激な円安が進行して株価も上昇ということが起こっています。そのあたりのメカニズムについて考えてみたいと思います。

 今、見ていただいているグラフは、ドル円の購買力平価の動きを示しています。購買力平価は、日本と、このケースでいえばアメリカの物価格差を考慮した上でのドル円相場の適正水準になってきます。これは1973年4月を基準月にしています。1973年は、為替相場が変動相場制に移行した時期に当たります。

 一方で物価統計は、スーパーマーケットで売っているりんごのような消費者物価もあれば、企業間で売り買いしている生産者物価、あるいは企業物価もあります。後は自動車のように日本の輸出産業の値段を象徴する輸出物価もあります。今現在、消費者物価で見た購買力平価が大体125円ほど、生産者物価が100円ほど、輸出物価が50円ほどとなっています。これは日本の相対的な輸出競争力の強さを示しているわけなのですが、以上のような水準にあることが示されています。

 

●生産者物価による上限を抜けるほどの地殻変動的ドル高円安


 このグラフの上から3番目の緑の線は何かというと、生産者物価と輸出物価を足して2で割ったものです。生産者物価と輸出物価はそれぞれ100円と50円という水準にありますから、その真ん中の75円ほどのところに位置しています。過去20年ほどを振り返ってみると、基本的にはこの上から3番目の緑の線にあるように、生産者物価と輸出物価の購買力平価が、ドル円の下限になってきたことが分かるかと思います。現に2011~2012年の時もドル円はこの線の上で底入れに転じた格好になったわけです。一方でドル円の上限となってきたのは、上から2番目の生産者物価による購買力平価です。例えば、1998年には147円、2001年には135円、2007年には124円というドル高円安をつけたのですが、その時もことごとくこの生産者物価の購買力平価に行く手を阻まれていた格好になっています。

 しかも、こういった生産者物価に過去、届いてきたというのは、アメリカのFRB(連邦準備制度)の政策金利が基本的に日銀の金利よりも4パーセント以上高い時だったのです。そういった状況になって初めて、生産者物価までドル高円安が進行するけれども抜けきれないというのが、過去のパターンであったのですが、今回、この水準を2014年~2015年くらいにかけて抜けてきているのです。この間、アメリカと日本の政策金利は基本的に0パーセントであったわけですから、これは過去では考えられない「地殻変動的」なドル高円安が、今回進行してきたということがお分かりいただけると思います。


●ゼロ金利政策の下、レーガノミクスと同様の円安状態に到達


 こういった地殻変動的な円安が進行している背景は、おそらく日本の高齢化とかアジア諸国をはじめとしたライバル諸国に対する生産性や輸出競争力の低下、あとはコモディティーマーケットの動向などが影響していると思われます。いずれにせよ、かなり強い地殻変動的なドル高円安が過去5年間で発生してきたわけで、今回消費者物価で見た購買力平価にアメリカの金利がほぼ0(ゼロ)のまま到達することになったということです。

 過去を振り返ってみると、こうした消費者物価に届くようなドル高円安は、1980年代前半レーガノミクスの下でロナルド・レーガン大統領が「強いアメリカ、強いドル」を標榜していた時にもありました。この時はポール・ボルカー議長率いるFRB(連邦準備制度理事会)が超高金利政策を行っていたのですが、そうした例外的な時のみに起こっていたような消費者物価に到達するドル高円安が今回発生していることがお分かりいただけると思います。


●レーガノミクスとアベノミクスの共通点


 次に見ていただいている表は、レーガノミクスとアベノミクスを対比させたものです。重要なポイントは、最終目標が景気の回復ではなく安全保障という類似点があり、経済の回復は中間目標として置かれているということです。

 こういった中で、アメリカは当時インフレ(物価の上昇)を克服しなければいけなかった一方、日本はデフレ(物価の下落)を克服するという方向性は逆ですが、物価の問題を両政権とも抱えていたのです。この物価の問題を解決するに当たって、通貨政策が事実上発動されているというポイントが共通点として挙げられます。

 というのは、80年代のレーガノミクスの時のFRBの議長は今もお話しした通りポール・ボルカー氏だったのですが、この人はもともとアメリカ財務省の財務次官で通貨政策のトップでした。奇しくも今回、アベノミクスで日銀総裁に指名された黒田東彦氏は、もともと日本の財務省で財務官、つまり通貨...
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