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物事の本質と価値のその先に何があるのか考える

LINE流イノベーティブ思考術(3)価値の「先」をデザインする力

森川亮
C Channel株式会社 代表取締役(元LINE株式会社代表取締役社長)
情報・テキスト
3年足らずで4億ユーザーを突破したLINE。ネット史に残る成長を可能にした、シンプルな発想とは。LINE株式会社代表取締役社長CEO森川亮氏の成功のカギに迫る。(全5話中第3話目)
時間:13:20
収録日:2014/05/14
追加日:2014/06/26
≪全文≫

●ユーザーファーストで求められる価値を最大化


── 森川さんのところは、最初からWEBを捨ててネイティブからいくと決断された、あれはすごい決断ですよね。両方を追わなくて済むという。そして震災後にサービスを開始し、あっという間にユーザー1億人を突破されました。普通だと、あれもこれもと手を広げて、つまらないものができてしまうのですよね。

森川 よく聞かれることなのですが、やはり過去、ガラケーのときに思い切ってそこにいけなかったという反省点が大きいです。

── オンラインゲームからガラケーの時代があって、結果としてガラケーにはいかず、そこを飛ばしてネイティブにいくというのはすごい教訓ですよね。しかもこのサイクルが早かったですね。

森川 ITの場合はそれがいいところですよね。一度失敗しても、生きているうちにまた次の波がくるので、それを待っていたほうが、その前の波に頑張って乗るよりよかったというようなところがあります。

── その「成功者を模倣する」ということを市場に参入する条件とおっしゃっていますが、それはやはりとても大事な能力ですよね。

森川 それも別に真似が重要というよりは、結局「ユーザーの人が認めているものを否定してはいけない」ということだと思うのです。よく何か新興で出てきた会社があっても、「あいつら単にたまたまうまくいっただけだ」とか「今はいいけどいずれきっと駄目になる」というようなことを言う人が結構多いではないですか。いろいろと競合分析をすると、「いや、あれはたまたまですから、本命はうちですよ」というようなことを説明する社長などがきっといると思うのですが、でも、やはり世の中が認めたという事実を認めなくてはいけない。ただ、それを単に模倣するだけではなくて、その本質が何で、その価値のさらに進んだ先に何があるのかを考えて、それに集中することが非常に重要かなと思います。

── 本質は何かというところですね。

森川 真似をしているだけだと、そこの会社は絶対に超えられません。ですので、いかにそこのいい要素だけをピックアップして、研ぎ澄まして、さらに伸ばしてくかが重要なのかなと思います。

── なるほど。先ほど言われた、普通の人がすぐに使うのが難しいSkypeとLINEの違いがわかりやすいです。やはり手間が違いますよね。自分で入力するのか、電話番号、アドレス帳を自動的に読んでくれるのか。あれは画期的でした。

森川 タイミングがよかったということもありますが。出るのが後になればなるほど、どうしても今までの価値に何か加えようとするものです。でもそれが機能や余計なサービスがついてしまうと、かえって分かりにくいという欠点になる場合があります。ですので、いかにそこをデザインするのかが感性の領域であり、難しいところではあります。

── まさに感性ですね。

森川 例えばラーメン店でも、とんこつラーメンが流行ったときに、もともとしょうゆラーメンをやっているラーメン店が、「しょうゆもとんこつもあります」という感じで追従して出したところが結構ありました。もちろんその瞬間はいいと思うのですが、お客さんもだんだん「この店は専門性がないな」と思って離れてしまうというようなところが多々あると思います。どれだけ深く掘り下げるか。逆にとんこつでもメニューが1種類しかないぐらいのほうが、実はよかったりするかもしれません。

●人を喜ばせて、会社が成長する「商売」の仕組み


── 澤田秀雄さん(エイチ・アイ・エス会長、ハウステンボス社長)と一緒にインドネシアのジャカルタに行ってアジア経営者連合会で支局長を見つけていた時に、日本で教育を受けた韓国人が、イスラム教の国で、横浜からシェフを連れてきてとんこつラーメンを売っていたのです。華僑専門のラーメン店です。こんな店が当たるのだろうかと思いましたが、1日1000杯も出ているのです。儲かっている華僑だけが相手ですから、単価は日本より高いと思います。それで、1日1000杯売って、投資金額を1カ月で回収しました。インドネシアは人口2億数千万人と言われていますが、そこにいる華僑だけを対象にして多店舗展開しているのです。エイチ・アイ・エスでも、ジャカルタから日本へ旅行者を連れてくるインバウンド(訪日旅行)をしているわけではなく、豊かになってきたインドネシアの人を、近隣のシンガポールやバンコクに送るという事業が入れ食い状態で、前年対比300パーセント、400パーセントで右肩上がりなのです。国内の支店とは違うのですね。バンコクに一緒に行ったときは、社員が500人いるのですが、翌年採用する新卒社員がさらに500人で、倍々です。それでも追い付かないほどの勢いだと。「場所を変えるとやり方もみんな違う」という話を一緒に見せていただ...
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