10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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莫大な給付金の半分弱を税と国債に依存することが問題

「税と社会保障と保険料の一体改革」の必要性

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
社会保障給付費の推移
出典:厚生労働省ホームページ
(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/H27kyuuhuhi2.pdf)より
日本の社会保障制度はもうとうに破綻している。消費増税による補填は焼け石に水で、根本的な問題は何ら解決も改善もしていない。日本の財政が社会保障負担によってどれほど深刻な危機に陥っているか、何割の国民が直視しているだろう。維持可能な国家と社会システムに立て直すための秘策とは。
時間:09:03
収録日:2014/05/28
追加日:2014/07/24
≪全文≫

●増加の一途をたどる社会保障費が国費を圧迫している


 さっそく話を始めたいと思います。

 「税と社会保障の一体改革」というのが、いったい何だったのかということをお話しします。「税と社会保障の一体改革」という言葉は、途中から言われるようになった言葉で、最初は「歳出・歳入の一体改革」だったわけです。これを税と社会保障の一体改革と言い換えたことには、よかったこと、悪かったことが両方ありました。
 
一つは、誤解を与えてしまったことです。日本の社会保障費はあたかも税金でまかなっているかのような誤った認識、錯覚を、メッセージとして伝えてしまった可能性があります。日本の社会保障の原理は、基本的には保険であり、社会保険制度で成り立たせているのです。ところが、社会保障費を保険料でまかないきれていないところに現在の日本の社会保障制度の問題があるわけです。

 さらに言えば、社会保障費、社会保障の給付は、増加の一途をたどっています。よく「1兆円ずつ増加している」と言われますが、この「1兆円ずつ」というのは財務省の一般会計上の増加額にすぎず、社会保障の給付額そのものは、毎年2兆から3兆円弱ずつのペースで増えています。

 その2兆から3兆円弱ずつ増えている社会保障の給付を保険料でどのくらいカバーしているかというと、約半分強にすぎません。総給付額は約110兆円ですから、その約半分、60兆円分ほどを保険料でまかなっています。

 では、足りない分はどうしているのかというと、国と地方の税で埋めています。しかしそれでも足りないところがある。年金積立金の運用益もありますが、これにも問題があるわけです。

すなわち、日本の歳出において国債を発行しなければならないかなり大きな原因は、この社会保障費の増加にあります。


●「消費増税で問題解決」は大きな誤解


 社会保障費の増加については、一般会計に占める社会保障費の増加だけでなく、給付額そのものが大きいということに着目する必要があります。

 年によりけりですが、近年の一般会計は年間およそ90兆から95兆円程度です。それに比べて、社会保障給付額は年間約110兆円です。それが次第に増えているわけです。ですから、実は一般会計の総額よりも社会保障給付費のほうが大きいわけです。この実態を、まず頭に入れて考えなければいけません。さらに言えば、その費用は税金でまかなわれているわけではないということです。税金でまかなわれているのはごく一部にすぎません。そのごく一部の中のさらに一部に基礎年金の国庫負担があり、これが2004年の改正でそれまでの3分の1から2分の1に引き上げられながら、財源の手当てがされないままにやり過ごされていました。今回の消費税増税による補填で、その分の手当がようやくついたということです。

 ですから、誤解の多いところですが、「消費税が増税されれば、当然ながら社会保障の給付や政策は充実するだろう」という認識を持つ人がいるとすれば、それは大きな誤りです。もうすでに、今の給付水準を維持するのは、かなり不可能に近い状況になっているのです。とすると、いったいどうしたらよいのかというのが問題です。

 国の歳出から地方交付税と国債費(国債の利払い償還)を除くと、残りの大部分にあたる約30兆円強が社会保障関係費です。ということは、日本の国の財政は、厚生労働省予算、つまり社会保障費が半分、残りがそれ以外の各省という構図になっているのです。そう考えると...
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