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カテゴリーキラーを殺すAmazonの流通革命

Amazonが促す流通革命

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
夜ネットで注文した本が、翌朝には自宅に届く時代。現在のこの「流通革命」を先導するのがAmazon(アマゾン)である。インターネットと物流の激変、それらを支える情報化の急進とは? 流通業の「今」を伊藤元重氏が解き明かす。
時間:10:32
収録日:2014/06/16
追加日:2014/08/01
≪全文≫

●情報革命が流通業に大きな変化をもたらした


 流通や小売の世界で今起きている変化について、特に私が今、気になっている現象についてコメントしたいと思います。

 キーワードはAmazon(アマゾン)です。ご案内のように、Amazonが今やっていることは、流通業を大きく変える力になってきています。
 
 これはAmazonだけでなく、日本で言えば楽天をはじめさまざまなインターネットを活用した小売業に関わる話だろうと思います。

 流通業というものは、いつの時代も、技術の変化や社会の変化に非常に敏感に反応、あるいは対応するタイプの産業です。したがって、経済や社会の中身が変化してくると、それに伴って急速なシフトが起こってきているわけです。

 Amazonに象徴される現在のこの大きな変化を引き起こしているのは、間違いなく情報革命、あるいはICTの革命だろうと思います。

●カテゴリーキラーが流通業変革の原動力だった頃


 さて、Amazonの話をする前に、カテゴリーキラーのことから話したいと思います。

 約20年前には、特にアメリカを中心にカテゴリーキラーという存在が、流通業の変化の原動力でした。カテゴリーキラーの代表選手は、例えばおもちゃのトイザらスです。トイザらスのような業態がなぜカテゴリーキラーと呼ばれていたかというと、例えば「トイザらスが1店舗店を出すと、周辺の10店舗程度のおもちゃ屋がつぶれてしまう」と。それくらい強力な品ぞろえと価格設定で、地域の同じカテゴリーの小売店を席巻しながら成長してきたことから、カテゴリーキラーと言われてきたわけです。

 このカテゴリーキラーはさまざまな分野で出現しています。例えば日本の家電業界ではヤマダ電機などがカテゴリーキラーと言えるでしょうし、SPORTS AUTHORITY(スポーツオーソリティ、米国最大級のスポーツ用品店)というスポーツ用品のカテゴリーキラーもあります。書籍分野でも、大型の郊外型の書店チェーン大手、例えばアメリカのBarnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)やBORDERS(ボーダーズ、2011年に経営破綻)などがあり、さまざまな分野においてカテゴリーキラーがあるのです。

●どんな大型店も品ぞろえでネットに勝てない


 Amazonの革命の面白いところは、このカテゴリーキラーを殺す、つまりカテゴリーキラーのキラーになるのがAmazonのような業態ではないかと言われる点です。

 Amazonの場合、少し考えていただければ分かるように、どんなに大きな書店を作っても、その店に置ける本よりもはるかに多くの書籍がAmazonのネットの上に載っているわけです。またどんなに安価に商品を展開しようと思っても、実店舗で売るより、インターネット上で売ったほうが安くできます。それは書籍に限らず、例えばトイザらスの扱うおもちゃなどでも同様です。

 また楽天も同じで、どんなに巨大で多彩な商品を販売するショッピングモールの品ぞろえよりも、楽天市場のモールの中の品ぞろえのほうが豊富でしょう。

 つまり、カテゴリーキラーが持っている強みのようなものが今、ネットの世界によって置き換えられつつあるのだろうと思うのです。

 それでもそのネットでものを売り買いする上で大きなネックになるものが一つあるとすれば、それはデリバリーの問題だろうと思います。

 本屋やおもちゃ屋や家電販売店に行けば、その場で商品を買って持ち帰ることができますが、もしAmazonのウェブサイトで購入した場合に注文から実際の商品到着まで3日や1週間もかかるのであれば、それはもう勝負にならない面があります。しかし、これもご存知のように、急速な物流の地殻変動が起こっているわけです。

●夜ネットで注文した本が翌朝には届く時代


 個人的な話で恐縮ですが、先日ある興味深い経験をしました。

 その日、私は夕方6時頃から、近いうちにノーベル賞をとるかもしれないと言われるある物理学者のセミナーを聞いていました。そのセミナー自体はちんぷんかんぷんだったのですが、セミナー終了後、質疑応答が始まりました。8時頃でした。会場には私のような素人の聴衆がたくさんいまして、質疑の何かがきっかけで、その物理学者の先生が、シュレディンガーという有名な物理学者が書いた生命についての本を非常にほめました。しかも、素人にも読みやすい、岩波文庫か何かで手に入ると発言しているわけです。夜8時頃でしたが、私は手元にあったiPadで、今話題になったシュレディンガーの本を検索しました。文庫本なので安い本です。私はその場でその本を注文しました。

 セミナーが終わって帰宅し、そのまま本のことは忘れていたのですが、翌日は少し朝がゆっくりでした。すると朝...
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