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父親の役割は「毒物」かつ「軽蔑できない存在」であること

毒を食らえ(6)親の「本当の愛」とは何か

概要・テキスト
ひと昔前の家庭には、強くて怖い親父と慈愛深い大甘の母親がいた。子供、とくに息子は、父を壁とし、母を盾とすることで自らの自我を確立し、成長の糧としていった。また、両親だけでなく、祖母や祖父にも、善悪のけじめを子供に教えるための覚悟があった。なおかつ親は、「軽蔑できない存在」であることが重要であった。このような親の「厳しさ」や「真の愛情」は子供にとっての「毒物」でもあるのだが、それだからこそ子供は自己成長を果たしていけるのである。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10:29
収録日:2020/10/13
追加日:2021/01/22
カテゴリー:
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≪全文≫

●昔の親にあった愛と叱責、それを支えた覚悟


執行 父親は「愛」などという言葉は使いませんでしたが、やはり昔の親には愛があるのです。

―― そうでしょうね。その形が違うわけですね。

執行 そう、祖母などもそうでした。うちは母親の実家(早野家)が茅ヶ崎にありましたが、私が祖母をダシに嘘をついたことがありました。小学生の頃ですが(笑)、自分が母親に悪く思われたくなくて、祖母のせいにしたことがあったのです。

 「いや、おばあちゃんがこう言ったからさ」みたいな感じで、苦しまぎれの嘘をついたわけです。それを聞いた母親がすぐに「何なの、お母さん?」という調子で電話をしたので、祖母が狂ったように怒り出した。「このクソガキ野郎!」と電話で私に怒鳴りつけたのですが、あの怒鳴り声は今でも(笑)耳に焼き付いています。

 そのときはもちろん大変、嫌な思いをしましたが、それでもやはり昔の家族には愛を感じます。子供は適当に嘘を言ったりしてうまく生き抜こうとするものですが、そういう場合の善悪のけじめについて、昔の家族にはやはり凄いものがありました。

―― やはり、お祖母さまにしても覚悟があったのでしょうね。

執行 そうだと思います。今流の言い方では覚悟を持っていた。そうでなければ、あそこまでは怒れません。今の人はみんな「駄目だったらどうしよう」と考えてしまいます。
 私は多くの人生相談を受けてきましたが、登校拒否をした子供にどう対処したらいいかという相談も多く寄せられます。それに対して私が「ああしたらどうか」「こうしたらいいのでは」と意見を言うのですが、そのときに、よく返されるのが「それで、もし子供が自殺したらどうしてくれるか」ということです。私にすれば「そんなことは知るか」です。そんなことを言っている親だから、子供がそうなったのだと思います。

 先のことが怖くて、善悪のけじめもつけられないでいる。私は自分の考えを伝えるなかで、「結果が悪くても自分には何の責任もない。やるのは本人だから」とみなさんに話しています。ただ、「そういうふざけた子供はこうしてやらないと駄目だ」とは言います。でも、やはり駄目な子を持った家は、全部、親が駄目です。

―― 親が駄目なのですね。

執行 これは割にかわいそうなのですが、駄目な親というのは表面的には「いい人」なのです。

―― だけど、愛がないの...
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