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エリートたちは権力保持のため敵とも組む

狡猾国家イエメンの現状(2)サウジとイランの代理戦争

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー
第2代イエメン大統領
今日のイエメン危機をつくっている政治パターンには、二つの面が機能していると歴史学者・山内昌之氏は言う。そこには、複雑に絡み合うサウジアラビアとイランの対立構造がある。両国との関係を中心に、狡猾国家イエメンが置かれた現状について山内氏が語る。(後編)
時間:13:10
収録日:2015/06/09
追加日:2015/07/06
アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー
第2代イエメン大統領
今日のイエメン危機をつくっている政治パターンには、二つの面が機能していると歴史学者・山内昌之氏は言う。そこには、複雑に絡み合うサウジアラビアとイランの対立構造がある。両国との関係を中心に、狡猾国家イエメンが置かれた現状について山内氏が語る。(後編)
時間:13:10
収録日:2015/06/09
追加日:2015/07/06
≪全文≫

●エリートたちは権力保持のため敵とも組む


 皆さん、こんにちは。

 現在のイエメンが置かれた環境につきまして、これは、前回に紹介しました狡猾国家(Cunning State)ともいうべき非常に特異な破綻国家のダイナミズムの所産であるということを、今日は少し触れてみたいと思います。

 イエメンは石油もそれなりに持っていますが、その資源を枯渇させ、そして、社会を分裂させて、国を崩壊の淵に追いやった、その政治パターンは、もつれた蜘蛛の巣のように、まさに今日のイエメン危機をつくっている、込み入った関係と複雑に結び付いています。この蜘蛛の巣状のもつれた関係は、二つの面において機能しています。

 第一には、国民国家というレベルでの問題です。すなわち、国民国家イエメンという限られた部分におきまして、エリートたちは、競争し合いながら、自分たちの狭い利益を追求する分派の間での内戦に明け暮れているわけです。いずれの勢力も、本来であれば競合、あるいは対立し合う地域や宗派、イスラム主義者と同盟することを厭いません。なぜでしょうか。

 それは、目的がひたすら自分たちの権力保持にあるわけですから、そのときに最適合な相手と組むのです。それが昨日までの敵であったとしても、今日、あるいは明日味方になる。つまり、自分たちの権力の維持に都合が良ければ組むということなのです。


●サウジアラビアとイランの対立が内戦と関係


 第二には、より大きな地域というレベルでの問題です。イエメンの内戦は、サウジアラビアというスンナ派の大国と、シーア派の大国であるイランとの地域的な競合や対立が深まることと関係しています。すなわち、スンナ派対シーア派という宗派的な対立、あるいはアラブ対ペルシャという民族的なライバルといった関係性のあやによって助けられている反面、本来サウジアラビアとイランとの対立は、地政学的な要素を持っていたのです。

 この問題でどの参加者もまた、宗派や民族間の紛争のどちらか一方を支持することによって、地域において代理戦争が生じたわけです。そして、この代理戦争の中で、いま一番活発でありながら日本の視野からはずれている地域がイエメンなのです。


●狡猾国家イエメンを育てたサウジアラビア


 サウジアラビアは、歴史の上で伝統的にイエメンの“Cunning State”(狡猾国家)としての政治、ブラックメール、恐喝などによる政治や、Cunningな国家のあり方を育むことへの責任が多少なりともあった国なのです。なぜなら、パトロンとしてイエメンに対して常に資金を提供し、自らのワッハーブ派の拡大、あるいは浸透のために、当時のアリ・アブドッラー・サーレハ大統領とその体制を支持してきたからです。

 当初、南北イエメンが統一する前、南イエメンを根拠地にしていた社会主義者たちのイデオロギーに対抗するために、サウジアラビアは、イエメンの北を中心に王政派、王党派、後には軍人上がりのサーレハ前大統領を支持したわけです。いずれにしましても、イエメンの宗派構造を変えようとしたのはサウジアラビアであり、そこにイランからの影響力を排除しようとしたのです。

 2011年には、イエメンでユース(若者)たちがアラブの春などと結び付くような蜂起を起こしましたが、それを封じ込めたのもサウジアラビアでありました。これは、GCC(湾岸協力理事会)イニシアチブにつながっています。GCCイニシアチブは、国民対話への着手を呼び掛け、...
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